第四戦 プランB(8)
おい!早く起きろ!おまえ何やってんだよ!」
憤怒の咆哮と耳障りな警報ブザーが眠気を一掃し、ぼんやりしてる視線に誰かの顔があった。
柳下だ、歯をくいしばり睨みつけてきて、その目にまだ強烈な憤りが燃えてる。
「芸音を見てねえか?あいつ何処にいるんだ!」
……芸音?
あっ!彼女に気を失わせられたのを忘れかけてた!
「何か言え!会っただろう」
「か……彼女に薬を飲まされ……」
「なに?」
「睡眠薬をお菓子に混ぜた……」
「じゃあの子は?何処に行くか言ってなかったか?」
「ない……聞いてなかった……」
「使えねえ奴!」
その一言を言い捨てて、軍服を着る柳下が振り返らずオフィスの外へ飛び出した。依然として床に横になる僕をほうりっぱなしで。
激怒っていう言葉より、柳下のさっきの様子は却って失望と絶望、さらに解釈できない違和感をもたらすものだった。
ちくしょう、耳鳴りがまだ頭にキーンキーン響いてる。立ち上がることさえも難しいどころか、まして追い掛けるなんて。
一体どういうことだ。周りにずっと警報のサイレン音が響き渡り、おまけに警告灯の赤い光が室内に回転してる。説明してくれる人がいないが、これは演習ではないに決まってる──直感はこう言ってくれた。
芸音がこんな手を使うなんて思いも寄らなかった。お袋の養子として薬を飲まされるなんて、油断しすぎたんだ。
「もう慎重に気をつけてって言ったのに、結局また油断したわね、君は」
落ち着いた声が頭のてっぺんから聞こえて、すぐにある黒い影はバルコニーの上から面前に舞い降りた。
「み……宮部さん?」
すばやく降りる用の鋼線を巻き取った宮部。力をすべて使い果たしてやっと上半身を伸ばした僕。
「セキュリティカードがないとなかなか面倒ですね。まあ、鋼線はいつもあたしのスタンダード・エキプモン。さすがあたし、真のエージェント」
「それはどんでもいい!一体何があったの」
「ベースの回路が盗まれたの。今部員全員犯人の行方をさがしてる」
「盗まれたって?」
「そう、しかもここで盗まれたの。あたし今君を逮捕するわ、だって君は一番の容疑者だもの」
「僕は盗んでなんかいないよ!盗んでおいて現場に寝込む泥棒がいるか」
「ふーん、じゃダレが盗んだというの」
「もちろん──」
──芸音?
バカな。彼女は本当に……
「どうなの?言えないのかしら」
「いや、ただ……ただ信じられ……」
「事実は目の前よ。ヘプタ・エックスのストーカー、黒羽芸音が、移動式基地の回路を盗んだってことなの。あの人と部長以外回路を取り出すパスワードは誰も知らないわよ。ただ今ベースはもう動くことができないの」
「じゃこの警報は何なんだ?」
「正常的に取り出したかどうかにかかわらず、ベースは回路が操作盤から三十分離れたら警報を発するの。皆警報で目が覚めたのよ」
「三十分?それなら……」
「黒羽さんが逃げたのは少なくとも三十分以上前ってこと。あの人を捕まえるのはかなり難しいわ」
生真面目で、宮部はもう自分の疑いを隠すことをやめたんだ。すでに芸音は宮部が言ってた犯人に当てはまってしまっている。
ありえない。あの柳下にこんなに長い間ついてきた護衛は、スパイだったとは。
芸音、君はマジでヘプタ・エックスのストーカーなのか。




