第四戦 プランB(4)
宮部を後ろに置き去り、
一人で階段を駆け上がる僕。
回路を盗むなんてただの隠れ蓑に過ぎない、ストーカーの真の目標は柳下ってことだ。
今になってこの可能性を思いつくなんて、まったくお袋の面目をすっかり潰してしまった。
階段の最上段を踏み越え、白銀色のメタルドアへまっすぐ向かった僕はポケットからセキュリティカードを取り出しセンサーに振った。
「柳下!」
開けたメタルドアの後ろは、室内の明かりが廊下より強いせいで、瞳孔が縮むまで時間がかかり、やっと目の前がだんだんはっきりしてきた。
柳下の席は空いてる、さらにベースの操縦盤の席に芸音の姿も見えない。
ちくしょう!ちょっと離れただけでこうなってしまうなんて!
「柳下!」
考える余裕もなく、直感は手をオフィスの小部屋のドアノブに導いて回転させた──
「……」
「……」
向こうに目が両双あり、こっちはただ一双の目しかないって劣勢で相手と対峙してる。
狭い部屋にドレッサーが置いてあり、その上にたくさん女性衣類や下着がばらばらに散らばって、そして柳下と芸音は前にあるスツールに座った。この小部屋は更衣室のようだった。
「先、先輩?」
やさしい眼差しに困惑が宿り、髪を解いた芸音はじっとこちらを眺めてる。
依然として軍服のままである柳下は彼女の後ろに、さらにくしを片手にしていた。どうも芸音の髪をとかすのを手伝ってあげてるらしい。
一面の平和で温かい、この光景からはまったく殺伐とした空気が感じられない。本当に幸せそうだ。
確かに、もし芸音がマジでヘプタ・エックスのアサシンならとっくに手を出していただろう。僕を引っ張り込んで柳下の替え玉にさせられるなんて全然必要ない。
気のせいのはずだ。はずだな……
「誰がおまえを入るのを許した!」
相手に詰問された時、その前にいる娘の体にただボタンを外した制服上着を着て、下半身にわずかな逆三角型の布で覆ってるだけなのに気づいた。
「先輩、ちょっとはずしてもらえないでしょうか」
困る眼差しが、今ぼーっと突っ立ってる時じゃないって注意してくれた。
それもそうだなぁ、勝手に人様が更衣室にいる時に飛び込むなんて駄目じゃないか。相手に迷惑をかけるだけだ。
……!
えと、芸音はまだ素っ裸になってないらしい、早く離れれば間に合うはず──
「先輩ひどいですよ!」
「あっ、あの!悪い!」
DVDのワンシーンを巻き戻すより速いスピードで更衣室を抜け出し、バタンとドアを閉めてから、僕が緩々とドアの前にしゃがみこんだ。
恐らく芸音は僕を許してくれないかも。本当に穴があったら入りたいくらい恥ずかしかった。防空壕があったらもっといいんだが!




