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第四戦 プランB(2)

「試運転の手順は?」

「まずは走行システム、そして安定度、最後は武器である。今日は主に走行システムのテストで、明日は武器の部分だ。実は学校からこっちに来た時すでに数値データを記録してたんだ。後で姿勢のテストを行う」

「じゃ、武器のテストは?」

「Rの会社に開発された榴弾砲をテストすることだ。明日は砲弾数発を発射するんだ」

「何処に向いて発射するの」

「おまえの家じゃねえよ、マイスターに迷惑をかけちまうからな」

それはただお袋のことだけじゃなく、東京市民の皆は学校に殺到して抗議するだろうと思うけど。

「ごめんください。スーパーバイザールームー。誰かいらっしゃいませんか」

スピーカーからまた宮部の声(隣人のおばさんみたいな感じだ)が聞こえてきて、再び無線機を手にした柳下。

「どうぞ」

「ここはちょっと人手不足なのよ。二人の部員さんがトイレに行ってから全然戻って来ないから。予備人員を申し込むわ」

評価するような目つきがこちらをちらっと見て、間もなく柳下はまた無線機に向かう。

「その人たちはしばらく戻らないって確認したのか」

「うん、随分時間がかかったし、便器に吸い込まれたとかかもしれないね。可哀想ー」

その声に少しでも同情する気がさっぱりなく、多分宮部自分は無線機の後ろで笑いを押し殺したりしてるだろう。

「わかった。人を送り込むぞ」

「へっ、部長来ないの。あたしは部長がいいの……」

「制御室をコントロールする人がいねえなんて駄目だろ。俺はここにいる」

「でも黒羽さんは部長の代わりにコントロールすることができるじゃない」

「俺は芸音と共に行動するんだ。あの子の面倒をみる責任がある」

「ガ────ン!ううう……本当に羨ましいわ黒羽さんが……いいわ、じゃ人を送り込むのをお願いね、オーバー」

無線機を下に置いて、意味不明の微かなため息を漏らした柳下。宮部と話し合うのは骨が折れると思ったのだろうか、僕ならそう思うけどな。

「監視室は三階。階段で行きな、エレベーターはベース試運転する時は閉鎖だ」

「うん。ほかは何か」

「宮部がおまえを見て失望っぽい様子が出ても気にするな。普通はそうだから」

「そんなのを注意しなくてもいいと思うけど」

相変わらず皮肉る。

今に至るまでこいつは依然として機に乗じて揶揄してきやがって。やっぱり第一印象は大切だ、人と人との関係は初めて会った時すでに決まってるのかもな。交流などで仲良くなるなんて信じないぞ。

「……冗談だ、すまん」

「はぁ?」

振り返ると、もう視線はディスプレイ画面へ戻った柳下。

さっき柳下が何かを言ってたのが聞こえたが、やはりそれは耳の神経が錯乱したんだと信じた。

六階のオフィスを離れ、隣にある階段より下に移動した。建物のデザインによって五階から四階までかなり長い廊下を通らなければならないから、少し時間をかけてから再度下に向かう階段にたどり着いた。

四階の階段に着いたとたん、防火戸の後ろからいきなり一本の手が現れ、僕をはばんだ。

「うわっ!」

「シーッ、静かに」

目の焦點が正常に回復した後、指を唇にそっと置いた宮部に気づいた。彼女は自らなんて──

待ってよ、まさか最初から宮部の狙いは僕だってこと?

「やっと君を引っ張り出したわ。君に用があるから、ついて来て」

指を下げた宮部が僕の袖を引き、別の通り道へ歩いていく。

「ちょっ、何処へ向かうの」

「トイレ」

「何をする気」

「我々人間っていう物種を膨れ上がる神聖な使命を」

「君、本気で言ってるんじゃないだろう」

「正解。がっかりさせてごめんね」

と、窓の近くで歩みを止めた宮部。それは本当にがっかり……いや、困らせた。

「ちょうど監視カメラの死角なので、ここで話そう」

「何だよ。こんなにこそこそして」

「監視カメラに君と話すのを撮らせてはいけないの。危ないから」

「どうして」

「ストーカーはベースにいるから。敵はもう潜り込んでるもん」

一貫した悪戯の微笑みを控えた宮部。とっさにあんな真面目な顔に慣れない僕。

「頼んでたことはまだ覚えてるのね。ここ数日、黒羽さんに何か怪しい行動などがあったかしら」

「えーと、知ってる限りはないけど、けっこう普通だね」

「じゃツインテールを括った時は?」

「ツインテール?いつも髪をそのままおろしてるんじゃないか」

「えっ?見たことないの」

「ううん。で、彼女勝手に髪型を変えたりするのか」

相手のその自然な態度に探ろうとする口振りを隠してる、だが僕の顔には何の変化も現れない。

宮部さん、こっから他人の秘密に鎌をかけるなんてやめておけよ。中学生の頃からもう顔色ひとつ変えずにお袋からエロ本をクラスメイトに貸したかどうかって詰問をごまかすことができてるんだよ。

約束したから、守秘義務があるんだ。もしこれさえもできなかったら、僕最後に残った男らしさもなくなっちゃうわけだ。

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