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第三戦 MADっていう暮らしの始まり(3)

「性同一性障害か……」

ベースから図書館まであまり時間がかからないけど、道すがら芸音が言ったことを考え込んでいた。

僕は精神疾患の専門家なんかじゃない、ただ以前本から見た資料でその名詞について少し認識を寄せただけだ。それは患者が生まれつきの性別を認めない病気で、他の性別への憧れを抱くものだ。

もし芸音の推測が正しければ、じゃ何の原因で柳下にがこうなってしまったのか。

この病気は先天性説と後天性説の仮説があるって芸音が言ってた。先天性は生まれつきの体に欠陥が出ることで、後天性は環境のせいで影響させるのは今の臨床推論だ。柳下は後天性に属するのなら、かつて何かの原因で柳下に自分の性別を嫌わせるっていうものだ。

「おいおい、あの人が来たぞ……」

耳元にひとしきりひそひそ声がした。深く考えから脱した拍子に、大勢のウオーミングアップをしたばかりみたいな学生たちがぞろぞろと両側へ移動し、人だかりの中に道が現れた。明らかに僕に……いや、柳下に譲ったものだ。

モーセじゃないけど、こんな人だかりの真ん中を堂々と歩く感じがいいな。柳下はこの人たちの眼中にそんなに有名だったのか、どうも今のうちに有名人の優越感をたっぷり味わっておこうか。

「お!やっと来たな!今回俺がてめえの相手にしてやろう」

一人の大柄で背が高い男子生徒が道の一番奥に姿を見せてきた。

あれ?恐れてるから道をあけたんじゃないの。なぜ今僕を阻んだ。

「やっぱ戦略部の部長は度胸があるな。我々陸上部の練習時間に道場破りして来やがって。我らの部長さんはよ、てめえのせいで体力使い切って入院した。今度こそ絶対仇討ちしてやる!」

「待って!何のことを言ってるんだ」

「何のことって?この前てめえが我らの部長と二十分で八千メートル競走したのを忘れたのかよ」

「にっ、二十分で八千メートル?」

「そうだよ。部長が五千メートルまで走ったら吐血し始めたのに、てめえは……てめえは全然救いの手を差し伸べてくれねえなんて!部長を校庭で気絶させやがって!今まだ集中治療室に……うーうー……」

相手は言いながら涙がこぼれて、他の部員らも目がうるうるしてて、哀悼するような雰囲気が人だかりの中に拡散し始めた。

そのうち、周りの人たちの眼差しに悲痛以外、かたきに会ったのをほうふつとさせる粛殺な雰囲気が宿るのに気付いた。

やばいぞこれは!

「俺はただの副部長だけどこの命は陸上部のものだ!てめえら戦略部は最高の部室や設備などを楽しんでるくせに、我が予算不足の普通のクラブを虐げやがって!たとえ校庭で死んで逝っても、俺が死ぬ寸前の悲鳴でてめえら戦略部に不平の怒号を上げ、俺の血で全校にてめえら戦略部の残酷さを告げるぞ!今日俺と二十分で一万メートル競走を勝負しようや!すべては我が部長のために!」

まるで主人公しか言う資格のないセリフが陸上部員の全員の闘志を掻き立てた。人だかりの中にたった僕一人がこの意気盛んな演説に手をあげてないんだ。

逃げちゃだめだ……逃げちゃだめだ……逃げちゃだめだ……早く逃げろ!

「おいっ!待て!」

ラグビー選手が人の包囲を突き破る感じがこんなに刺激的なのか。僕はマントをぎゅっとつかんで封鎖を突破し、まだ彼らの部長のために泣いてる大勢の生徒たちを突き倒し、陸上部員が混乱してるうちに駆け出した。

きっと僕を男らしさがないやつって咎める人がいるね、だがこのまま死んでしまったら男らしさなんか何か?まず命を守るんだ!

「柳下!またテニス百回するわよ!」

「柳下!今回リンゴを射るよ!またリンゴを両方の頭の上に置いてろ!」

「軍服を着るやつ!防爆スーツを用意しといたぞ!今日絶対後逸なんかしないぞ!」

「戦略部の部長よ!今回おまえにカッターナイフしか使わせないぜ!俺と剣道の輝きの下で堂々と勝負しろや!」

怪しいかけ声が後ろに多く聞こえてきて、図書館までの距離はいきなり南極大陸をまたがるように遥か遠くなってしまった。

柳下!おまえ一体何人を怒らせたんだよ!

「そこだ!あいつを逃かさんぞ!」

まるで有名人の追っかけをするような人波が壁の向かい側から追い回してきて、僕は勢いに乗じて曲がり角にある低木の中に隠れてマントでカモフラージュにして、影から人群れが通り過ぎるのをじっと見てる。

怖すぎる!この軍服を着るまで全然わからなかった!柳下が学校でこんなにたくさん敵を作ってたのか。

「あいつ、どこにいったんだ……あそこに行って見よう!」

あの連中は固い決意をして柳下を……僕を粉々してやろうと思ってるようだ。ここに居残り続ければ何れ発見されてしまう。

図書館の通用門は、もう後ろに。

人波が引き返す前、自分の生きる道があのドアの後ろにあるのがわかる。何のことも起こしてないように、僕は金属門を引いて隙間に潜ってそっとドアを閉じた。

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