第三戦 MADっていう暮らしの始まり(1)
「鏡を見なさい、まったく分身なの」
芸音に小さい鏡を渡れた。鏡の中に映る僕は軍服を着たり軍帽を被ったりマントをはおったり、また鼻筋にメカネが掛けてある。
こんな装いで、さらに黄色の短いかつらを加えたら、一人の柳下はこんな風にコピーされた。ただ今の僕は、あの軍服を身に着け、男性の身分として変装する柳下誠と完全一致である。
はい?なぜ落ち着くことができたのかって?だって早くも芸音に銃でかつらを被らせられた時にもう怖さがすべて吹っ飛んでしまったわけだ。
自分の顔かたちが柳下によく似てることをこちらも先ほど意識した。普段柳下は軍帽を被ってるせいか気付くことができなかったかもしれない。目鼻立ちの問題は、メカネが一番いいカモフラージュを提供した。
あの二人の秘密を知った翌日の放課後、いい子モードの芸音に頼みがあるって言われて、一人でオフィスに呼ばれた。ところが、メタルドアに入ったら待ってるのは赤髮魔王だった。まだ事務机に柳下の軍服と同じ服装が置いてある。その銃の威圧で、今こんな格好になったわけだ。
「私も……自分でも驚いたよ……やはり私は人を見抜く目があるようね……」
「あのさ、声の方はどうする。すぐばれるって……」
「ハーハイネスが装った男性のボイスは君の声にかなり似てる、ただ君が知らないだけ。誰も教えてあげなかったし、君はトークフレンドがいないからね、今ここで教えてあげるから、ありがたく思いなさいよっ」
おい、そこまで言う必要があるかよ。家でお袋の写真が僕と喋ってくれるんだよ。
「こうしたら授業でも放課後でも、ハーハイネスは使い捨ての替え玉が使えるの」
「その使い捨てってどういう意味だ!」
「もちろんつかまった場合捨て駒にすることができるし、死んだ場合容易く捨てられるっていう意味なの。でも君が直感っていうエースを持ってるから、そんな安易にパープルハート章を得られるはずがないと思う」
パープルハート章は、アメリカが前線で死傷した兵士に対して与える勲章である。ただしもしマジで危険に遭ったら先ず逃げると僕は思う。
「柳下に彼女の替え玉にするってことを教えたのか」
「教えてないよ。ハーハイネスは君を護衛にさせるところか、部外者にさえも近寄られたくないの」
「じゃなぜこんなのを押し通してるのか」
「もちろんハーハイネスのためなの。ハーハイネスが役に立つ方法を自ら体験しなければ、簡単に他人のアドバイスを受けない体質なの。特にハーハイネスは戦略部の部長だから、Rが試運転に参加して欲しくないと言ったら棒付きキャンディを投げつけられてしまったの。だから、この後君が図書館に行って、ある訓練をしなければならないの」
「図書館?」
「あそこにハーハイネスがとても借りたい本があるんだけど、いつも借りに行く余裕がないの。本を借りてきてよ」
「でもその彼女の利用者カードが……」
「それは要らないの。名前を告げればいい、受付の係員が手伝ってくれる」




