第二戦 ゼロ和ゲーム(15)
「でもね、政府の強制力が学校に影響できないから、一部の国は試運転する装置の機密を盗むために特務工作員をこの学校に送り込むのだ。そんなやつらを、我々はストーカーって呼んでるのよ」
「ストーカー?その追い駆け回す変質者ってことなのか」
「直接ストーカーって外来語を変質者とみなすのはやっぱり君のような英語の教科書にパラパラマンガを描いたやつだけだね」
それはいっときの趣味だけだ。自分が描いたキャラの動作は安価なアニメと大差がないのに気づき、英語を勉強し続けた方が正解だと認識したけど……ちょっ!なぜ芸音はこんなことまで知ってるのか!
「フン、ここでのストーカーはこっそり獲物に忍び寄る人ということなの。ほとんどのストーカーは少年と少女だったし、子供の頃から軍事訓練を受けてたから、普通の学生に変装して学校に潜り込むのは朝飯前なの。この前ハーハイネスは君があんな男らしくないところを見て、何処かの国より送り込まれた馬鹿なふりで人の警戒心を緩めさせるストーカーだと思ったの。でもその後すぐ自分が勘違いしていたのを知った」
っていうことは僕が正真正銘頭から足に至るまで男に見えない人っていうわけ?だから柳下はこんなに僕を馬鹿にしてるんだ!
「一週間後、戦略部員は二日間の試運転を行う。場所は学校の裏山だ」
「全部員は参加しなければならないんですか」
「そう。それも中間テストの成績だ」
「もし参加したくない場合は?」
「親に顔向けできるかな」
親の顔に泥を塗るようなことはしないでね。それは男らしくないわよ──突然お袋の声が頭の中で木霊してる。
「……わかったよ。参加したらいいんだろう」
「よろしい。少しは男性のプライドを持ってるようだね。男ならあっさりすべきだ」
どうしてそんなに早く心が変わったのか皆わからないかもしれないが、それはRが僕の尻尾をつかんだんだ。
もちろん理由があるんだ。お袋が口やかましく言った言葉で、その一言だけが一度聞いただけで覚えてたからだ。
男らしさということに対して、僕は妥協してはいけない。
まだ覚えてる。お袋がここに就学し始めるのを知らせる手紙に、今回の学校生活は僕への試練、そしてこの場所でちゃんと自分の男らしさを鍛えて欲しいっていうことも書いてた。
怯者。この単語は僕にとっては、かつてただのコードだけじゃなかったのだ。
「もう許諾したなら、男性を興奮させるものを見せてあげようか」
意味不明な言葉を言ったRが事務机から立ち上がった。
と、手をスカートの下に入れて、それから──
一つのボタンを取り出した。
「しっかりと手すりをつかんでなさい」
返事する暇もなく、Rは勝手にその赤いボタンを押した。
ゴゴゴゴ──!
たちまち激しい震動が地面から体に伝わってきた。
「じっ、地震だ──!」
「落ち着け。まず外を見ろ」
ぎゅっと枕元の手すりを握り締め、強烈な震動で窓に目をやる。
外の光景が下がってるんだ!
「SPB77移動式基地。多脚式移動システムを使用し、新型機械関節を搭載、一平方メートルごとに十トンの重量に耐えられる」
「移動?」
「よく見なさい」
棒付きキャンディを銜える相手はシルバーの手で事務机をパンとたたく。
と、机が音とともに開き、ロボットアニメによくある大型制御盤みたいな装置がデスクの面の部分に代わった。
冷静沈着にRは自分の銀の爪を一本のジョイスティックのようなものに置いて側へ引き、ひとしきり機械音が響いてすぐに、重量物が着地した衝撃が起こった。外の景色がさっきよりだいぶ退いていく。
まさか、この戦略部のベースが移動したってわけか?
「君の想像通りだ、この建物は我が会社の設計で建造し、素早く戦場配置や陣地転換などが提供できる。これは世界でも最先端の技術で、我々はアウテック学院に送り試運転や展示などをしてたわけだ」
はっきり一つ一つの言葉を言って、Rの眼差しと表情から自分が所属する会社を誇りに思う気持ちをもらしてる。
道理でわざと堡塁にそっくりな外見に設計したわけだ。これはRTSの中にある主要施設が真の世界に出てきたものじゃないか。
この移動式基地は、多分あの時芸音が言った機密っていうことだろう。
「この後、我々は移動式基地を裏山に移動し試運転を行う。この間に部員の皆はここに泊まらなければならないんだよ」
「柳下も参加するんですね」
「まさにそこが問題だ。試運転を行うこの二日間、私は帰国しなければいけないんだ」
「帰国?」
「本来私が移動式基地の試運転を取り仕切るべきだけど、その日に重要会議があるって知らせが我が会社から臨時通達されたんだ。こうなると私は手いっぱいで柳下を守れなくなるので、芸音は君を引っ張り出したわけだ」
「だったら学校に試運転の期日を変更してもらったらいいじゃない」
「理事会により決定した事務は理事会しか変更できないし、国でも容喙する余地がない。必ず決定通り実行するんだ」
そうか。それは芸音が強引に僕を護衛に押し付ける本当の原因だな。
保護者は一時離れていく。他の補充人員がいないと危ないから信じられる人で代わりの人を選ぶしかないんだ。
「そういうこと。移動式基地を試運転する間ハーハイネスをちゃんと守るのを手伝ってくれればいい。試運転が終わったら君は自由になる」
無感情な声で最後の結論を出した芸音。護衛という仕事を引き継ぐのが避けられないことを理解した僕。
しばらく沈黙して、僕が前方にいる二人を眺め、
「じゃ、僕は何をしたらいい?」




