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第二戦 ゼロ和ゲーム(9)

「もうあの人の実名を教えてたのに、また信じてくれないの?」

「ただそのキャトってニックネームが正しいだけだぜ。その前の舌をかみそうな名前を聞いたことねぇよ。おまえ自分ででっち上げたんだろう」

「フン、あの人がよく言った言葉も知ってるよ」

「へえ?本当?何だよ?」

かっと相手の語勢が高くなり、この前の抑えてる言葉遣いと全然違う。

これは僕を変な気持ちにさせる──さっきの言葉はマジで柳下の喉から出たのか?

一瞬、またあの定番的なポーカーフェイスに戻った柳下が軽く咳をする。

「俺が言いたいのはあの人はよく言った話は何って。聞きたいんだ」

「この道の全部手に入れられる食べ物を調達してきなさい、どんな犠牲を払っても」

恐らく何か名言を聞きたい人はがっくりしただろう。皆の口の形が柳下と同じへの字になったと思う。また茫然な目も持ったらもっと彼女に似るだろ。

「おっ……おまえふざけてるんだよな?マイスターはそんな言葉なんて言い出すわけがあるか。そしてそんなに親しい口ぶりなんて……」

「母だから」

多分この答えは、ある意味で相手の心のスイッチをオンにさせてしまったのか。

視野が一頻り激しく揺れて、僕が痛みで強く閉じた目を見開くと、すでに柳下は足でこちらを床に押さえながら片手で僕の上着をつかんでる。

「ウソだっ!おまえはマイスターの息子なんてありえねぇ!いい加減にしろ!」

「うそじゃないよ!何でうそだといい切れるの?」

振るう力がますます強くなる柳下は僕の襟をぎゅっとつかみ、勢いに乗じて僕の上半身を彼女の面前に引っ張る。

「誰でもマイスターは日本人じゃねぇってのを知ってる。あの方は無国籍だぞ!おまえは典型的な人生失敗の日本高校生にそっくりで、混血なんかちっともねえじゃねぇか!」

「……国というのは安心感のない人間によって築く避難所で、さらに味方に属しない人間を排除するのを通じて安全を得るものだ。これは母が教えてくれたんだ。また国籍を持ちたくない理由だ」

柳下は手を、おもむろに放した。

青い目玉が微かにぐらぐらし、相手の口は鯉のようにぱくぱくしてる。

「なぜだ……なぜおまえがマイスターの息子なんだ……」

自分は絞殺される羽目にならないと喜んでたとしたら、僕の危機はまだまだこういう風におしまいになってないようだ。

何も言えない恨みが入り混じるボイスで、元々震えてる柳下は急に野獣のように咆哮し始めた。

「バカな!俺は受け入れん!マイスターにおまえのような息子がいるなんて。まったくあの方に対する侮辱だ!俺はコネで入るやつをひどく憎んでるんだ!おまえ本当はマイスターのコネでこの学校に入れるんだろうがあ!」

「……僕は引き取られて育てられたんだ。実の両親はとうに亡くなったよ」

目つきが怒りから驚きに変わり、柳下の爆発した気持ちが瞬間に冷めてきた。

正直、もし必要じゃなかったら、このことを知らせたくない。

確かに実の親に会った記憶がないけど、彼らの容貌すら知らないほど悲惨じゃない──お袋のおかげで、写真ぐらいは見たことがある。お袋は適切に僕を育ててくれたからこんな生い立ちは可哀想だとは思わなかった。

こんなこまごましたことより、今もう一つもっと心配なことがある──

柳下はもう僕の直感の弱点を発見しただろうか。

「起きてよ」

立ち上がった柳下は床に倒れてる僕へ手を差し伸べてきた。

「自分で立てるから」

あまり顔を立ててあげないかもしれないが、あいつから助けは受けたくない。善意に写真が落ちたのを注意したのに床に押さえられて罵倒されるなんて。こんな恩を仇で返すやつと付き合うってのは三日間もお腹が空いたライオンに肉食べないかって聞くのと同じ藪をつついて蛇を出すもんだ。

「フン、好きにしろ」

手を引っ込めた柳下は不機嫌そうに視線を逸らしていく。

「っていうか、マイスターは人生失敗の高校生を引き取って養子にするなんて……この中に何の秘密があるのかね」

「この前ずっと怯者って呼んでいたじゃない」

「こう呼び続けてもいいんだぜ。もし昇級したくねぇならな」

「怯者から人生失敗の高校生に変わるなんて昇級と言えるのか」

「人生失敗の高校生は色んな種類があるんだ。怯者は一種だけだ。それは廃棄物は色んな種類があり、生ごみは一種だけという道理と同じもんだ」

「でも生ごみと廃棄物は同じ廃棄物じゃないか」

「ちげえよ、廃棄物の中に再生利用できるものがたくさんある。人生失敗の高校生の中に人材育成できる人もいるのと同じことだ。生ごみってのは堆肥にしかできねぇし、他の使い道も全然ねぇんだぞ」

「だから僕は生ごみ?」

「人の下着を掠め取る生ごみだ。芸音が表に立たねぇなら、とっくにおまえを屑肉に打ち砕いてやるところだ」

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