第一戦 目には目を(2)
「芸音に興味があるのか?やめた方がよい。お前に勝ち目はない」
コースターみたいな大きいグラスを突き抜けて、あの細い目つきは赤外線を放つように僕の全身をじろじろ見てる。僕が武器か危険物かを体に隠してると思ってるのか?こんな犯罪者扱いのような視線で見つめられたら気味が悪いんだよ。
「い、いや……僕は……」
「否定しても無駄だ。情報によるとお前は生きてる間に彼女一人さえも作っていないし、女性の手すら握ったこともない。しかも部活でいつもわざわざ芸音に話しかけてる噂もある。以上をまとめると、お前は芸音に好意があるのを証明できるじゃん」
フレームを押し上げて、柳下のメガネはグラスが光の反射で真っ白になった。
一体こいつはどこからその情報を取り入れたのか?彼女を作ったことがないのは自分でもほとんど忘れちゃったのに。
「勘違いよ、誠。先輩は私を気にかけてくれるだけで、別に何もないよ」
「おや、あいつのことを庇う気か。ならば俺はどうする」
柳下は敵意を控えて、自認の優しい心を含んだような声で芸音に言った。
「そんな……私もちろん誠の味方よ、でもこう先輩をいじめるなんて……」
言い渋ってる芸音に向かい、柳下は微笑んでから目を細めてまた僕を見た。
「余計なことをするなよ、お前ジジツを知ってるから。俺は無駄骨折りって見ていたくない」
芸音を連れて僕の傍を擦り、後ろに振り向いた柳下の眼差しが人を不安にさせるように一瞬光ってる。
「まあ……芸音と知り合わなければお前のように失敗する人生へ転落してたかもしれん。俺は運がいいようだ」
まさかこんなに早くもあいつの性格の悪さを証明できるなんて、もう説明する必要もないね。口が悪いだけじゃなく、他人のプライドを無視するのは固有スキルということだ。やつと話をした人は絶対一緒に昼飯など言いようもないだろう。
妙なのは、柳下がやたら僕に因縁を付けるのが好きだと感じてる。
柳下の後姿を見て言い返そうとしたけど、芸音が振り返って手を合わせて詫びる様子に吐き出そうとしてる話を飲み込んでしまった。
あいつが言ったジジツってのは、芸音と恋人同士ということだ。
すでに知られてるけど、たくさん男子生徒は鼻についてる、もちろん僕も。そんなに気だてのよい芸音はなんであの性格が悪いやつが好きなのか?まさか部長だからか……あっ、言い忘れちゃったけど、戦略部は柳下によって率いられてるんだ。やつは転校して一週目に部長の役職を引き継ぎ、新人を多く部に入らせていた……僕もわなにかかった生贄の一人だった。
こう言ったって戦略部に入ったのを後悔するというわけではないんだ。芸音の傍にいるなら何でもいい……いや、いつか柳下をしめてやるのを待ち望んでる。あの軍服を身に付けて部長として威張って何様だ!
しばらくすると、廊下を通って歩道を通り抜け、小高い丘に聳えるベースに近か着いた。堡塁みたいな造りの建物は威圧感十分で、城壁に繋がるゲートの両側にサーチライトが設置した守備塔もあるんだ。
ゲートの前を歩いて、二台のサーチライトの光が身体に当たり、大戦のドイツ軍の高射砲一門の砲口が僕に向いた。
他の生徒たちなら手も足も出ないほど驚くかもしれないが、こんな光景に僕は慣れっこになってきた。
「名乗れ」
「佐野戦嵐、一等兵。軍種、怯者」
「認証完了。入れ」
ゲートは機械制御で後ろに開け放し、僕が堡塁のペーブメントを沿ってホールへ行く。
こんな軍事施設に入るような恒例行事は理事会の人が提出したそうだ。あの二人のガードマンは、この検問する方法にちょっと馬鹿馬鹿しいと思ってるかもしれないけど、僕にはどうでもいいんだ。あの高射砲も理事会から寄贈されたものらしい。
一等兵ってのは二年生。一年生は二等兵で、三年生の方は上等兵というのだ。
…………
はいはいはい、まだ何を説明してなかったのかわかる。軍種のことだろう。あれは柳下の仕掛けなのだ!
部に入った時あいつはたくさん籤を渡してこれはベースに入る時の認證コードだから引かなきゃならんとか言って。結局とっくに良い籤が他の人に取られてしまってダフしか引けなかった。柳下のやつ、転校生をいじめてるだけじゃないか。
今はこの怯者という名詞は自分のコードになり、僕と一緒にベースのホールへ。