第二戦 ゼロ和ゲーム(2)
いつでも銃で他人の頭を撃ち抜きたがる娘──これは芸音の正体だろうか。
「……どうすればいいか教えてください」
「簡単よ。普通の少女を見る眼差しでいい」
言った途端に柳下は芸音にちらっと一瞥を与えるのを確信する。あれは一種の警告のようだけど、芸音は気に掛けてなさそうだ。
普通の少女を見る眼差しで?まあ、朝飯前のようなものだ。この学校にいる平凡な顔をした女性を何人も観察したことがあるんだからさ……あっ、芸音は顔立ちのことを言ってるんじゃないよなあ。
「っ!」
いや……まったく簡単じゃない……
僕は、柳下のことを普通の少女として扱えないんだ。
あたりまえだ。僕はそんな一晩すぎたらすべてを水に流せるタイプじゃない。この間柳下とはもう恨みが生じてるんだ。色んなカレ……彼女の嫌がらせやら軽視やら受けて、もう積み重ねてきた憎しみはただ謝っただけで消せるものじゃないんだ。
僕にとって、柳下は依然としてあのちょっと見ただけで不快になり耐えないほどのやつなのだ。
「まあ、そのぐらいならいい。見逃してやろう」
えっ?もうおしまい?
待って、何もしてないけど、このまま僕を見逃すだと?
「ただふざけ続けるのが億劫なの。もしこの銃に弾が込められてないんじゃなかったら、その頭に戦果を残してやったのに」
心を読まれたとはっ!この女の子は本当に人間なのか?
芸音は読心術ができるようだな、さもなければどうやって僕の考えを知るのか?
「じゃあ、そろそろ本題に入ろう。今君は自分の立場がよくわかるでしょ」
「何の立場?」
さっと銃のグリップを上げて僕の頭を叩き形相をかえた芸音。
「バカ!君は煮るなり焼くなりお好きなように、あるいはたとえこの身が拘束されようと心までは縛られないとか言うべきなのよ!本当に何もわからなかったらせめて怖がる気持ちを表してくるべきじゃない?何が『何の立場』よ……まったく愚かなやつね」
話す時の芸音の豊かな表情や仕草は、まるでひるむことのない忠実な武士か強い意志を持つ弱々しいお姫様かまたはアホな顔して間抜けのようにも見える。むしろその間抜けは、今僕の座る位置にいると思う。
芸音はかなり芝居の才能があるなぁ。普通の高校に入るじゃなくて専門学校に申し込むべきだったと思い始めた。
「まあいい、少しヒントをやるよ。何で私のセキュリティカードが外に落ちてたのか知ってる?」
「……故意に落して僕に拾わせるためとか?」
「そう。君をオフィスに引き寄せるためなの。色々と教えてもらおうと思ってたのよ」
「教えてもらいたいなら先生に頼んでよ。僕のような中間テストさえも不合格だった人間は何も役にも立たないんだよ」
黒いグリップがまた同じ目標に打ち付けてきてしまった。力加減してたのか僕にその場で気を失わせない。
「バカ!君は『どんな方法でこの体躯を責めようとしても無駄です』と言うべきなの。こうなるとこちらは『電撃を受ける時どんな声を出すのか聞かせろ』ってセリフが言えるの。何で少しも芝居の才能がないのよ?まったく、雰囲気ぶち壊しよ!」
へぇっ、本当に芝居してたのか。意外だな……ちょっ!さっきあの娘が何か言ったんだっけ?天気?電気?もしくはもっと怖い単語?
長く息をはいてから、芸音が無愛想な目で僕を見詰めた。
「直接君を仕留めないのをありがたく思うべき。ハーハイネスはかつて君がキミツを盗む人だと思っていたから」
「機密?」
「この学校が何か凄いことをしてるって知らないでしょ」
知るわけないだろう。この学校に転校したばかりだし、クラスメートの顔さえもよく覚えてないから、何か凄いことなんて知るわけあるか?ただの普通の学院じゃないの?
瞬く間に、相手の鼻先が僕の額の前で止まった。
「ここは高知能地球外生物の前線基地で、学生を捕まえて奴隷や繁殖用のツールにしてるのよ」




