第二戦 ゼロ和ゲーム(1)
感電したような感じが、今は寝てる場合じゃないって警告を発してくれた。
もし自分がごみ収集車の中にいるのに気付いたら、もはや手遅れだ。こんな悲劇を起こさせないため、直ちに目を開かなければならない。
ぼんやりした視野に、蛍光灯と天井の輪郭がだんだんはっきりしてきた。どうやら今横になってる状態だったらしい。
オフィスの休憩室だったかここは……ベッドの上に運ばれたみたいだ。
「…………」
あっ、隣のあの人は……
……柳下だ。傍らに立ったあいつは軍帽を被り目障りな大きいメガネをかけて、鋭い目で僕と目を合わせる。
本来は怒りになるはずだろうね。誰でもあんな眼差しでじっと見つめられると気持ちが悪くなる。
が、今はかえってほっとした。
だってこうなると先ほどの状況が夢だと説明できた──あいつが女の子なんてわけがあるか?
っていうか、あの少女は横暴だけど、マジ美人だった。特に彼女の髪……そうそう、ただ今あいつが軍帽を脱いで解いた金色のロングヘアーとそっくり……
……あれ?
相手が脱いだ軍帽を持ちながら、片手で顔にかけてるメガネを外した。
夢の中の金髪少女が柳下と取って代わり目の前に現れた……いや、まったく柳下の変身だと言ったほうが──
──マジかよ?
彼女、本当に柳下だった。
メガネを外した双眸は真ん丸くて光沢に富んで見え、もう軽蔑の目つきは見られなく、炯々たる眼光が冷たくて親しくなれない気配が宿る。
ふと、相手が身につける服はこの前の軍服じゃないことに気付く。こいつが着るのは平服と長ズボン、メガネを加えたらかなり中性的な格好。
こちらを見て鼻からフンと息をもらすとすぐに、傍らのソファーに腰掛けて軍帽とメガネをぽいっとリビングテーブルに投げた柳下はその上の本を取って勝手に読み始め、さらには足組みをする。
むくっと起き、声をかけようとするけど、やめるのを選んだ。
マズイ……何か言ったほうがいいのかさっぱり。脳内はまだ混乱中だ。
シチュエーションをはっきりしておく必要がある。そうでないとこんなドラマチックな展開は受け入れがたい。
軽々しく僕を離さない予感。先ほど相手にした失礼な振る舞いは脳裏に一つ一つよみがえった。
しまった。確かもう一つまずいことがあるようだ。それはあいつのパ……
「そんな不敬な目でハーハイネスを見るな。さもなければ銃火の洗礼を施してやるよ。佐野さん」
底意地の悪い声が聞こえると一丁の真っ黒な銃身が視野の端っこから突いてきた。
右側に立ってる芸音。最初から注意力が柳下に引き付けられるせいか、あの娘に気づいてなかった。
不気味な空笑いが浮かび、その手に持つルガーP08の銃身は僕の頭と直角になるのが見える。あれは確かに本物である。しばらく前に芸音はあの銃で僕と柳下の戦いを制止したんだ。
目下の状況から判断すると、今は非常に危険な立場に置かれてるのがわかる。
無闇に動くと頭に穴をあけられるだろう。そして遺体も発見されないかも。
「なっ、何する?」
「まあ、もっと自重して欲しいのよ。誰もハーハイネスに礼を失するようなまねを許さないからね……その目つきを直して、せめて基本的な敬意を示しなさい。簡単でしょ」
ハーハイネス?さっきまで君の彼氏だったなのに、どうして突然ハーハイネスなんてなったんだ?
敬意を示すだと。よし、目を円に見開いてみよう……
「偽りすぎ!少しも誠意がない!もう一回!」
たちまち凶悪な顔になった娘。もう少しで銃口を僕のこめかみに突き付けるところだ。うわっ、いつもの芸音じゃなーい!
目を見開いてはいけないのか?じゃ少し眉をあげるのがいい。そうすれば割と荘重に見えるはず──
「死んだ者かそれとも天然記念物を見てるのか?初めて君と会ったとき私はそんな表情を浮かべてない!」
「僕が天然記念物っていう意味?」
「ハーハイネスの真の性別を知ってて、今まで生きられてるのは本当に君しかいないようね。この点から見ればまさしく天然記念物よ。死んだ者にならないようにちゃんとオセワしてやるべきなのか?」
わざに『お世話』の三文字のアクセントを強めながら、銃口を僕の額に何度も擦り付ける。
マジで僕を殺してしまう。




