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間章 遠い昔の夢(2)

何だよ、調子に乗るんじゃない。僕が脅された……いや、仮に譲歩しただけだ!


頭の上からその重量が離れて行く。僕は頭を撫でて頭蓋骨のラジアンをチェックしてると、娘はとっくに元の位置に戻って座った。相手が笑みを浮かべるけど、あれは一種の合図だとわかる──彼女の威信に挑戦してはいけないということだ。


橋の下は、水が枯れた川床に石が一面に広がってる。娘のサンダルはその岩の二つの中にしっかり挟まった。

橋の端の近くにある坂道から下って大きい岩を踏み越え、バランスが崩れてもう少しで転落するところだったが、あのサンダルを石の間から拾った。


軽い、そしてなかなか綺麗だ。夕日に照り映える白いサンダルが煌いて、拭いた水晶をほうふつとさせる。でも当時の僕はまだ鑑賞することが理解できなかったから、死んだ魚を提げるように手で紐を引いてサンダルを持っていった。


途中、娘は長閑にサンダルを履かない裸足を揺さぶってるのに気付いた。早くしなさいって注意してるのかなと思った。


「取って来たよ」

「履かせて」


おい、聞き違いじゃないよなあ。


靴を取ってあげるばかりか履かせろなあ?ひどすぎるよ!


元々このカジュアルウエアっ子に靴を取って来させられた上に、調子に乗りやがって……どうやら譲歩ってのは、時にいい戦術じゃないんだな。さっきから強く抗えばなあ……だが、もっと悲惨な結末へ。


娘は頬づえをつきながら、ゆっくり足を突き出してきた。


いかにも美しい足だ。血色が赤みがさす肌にちょっとした瑕疵もなく、一つのしみさえも見つからなかった。

あれをじっと見つめてぼうっとしてると、いきなり娘が足を僕の首にぴょこんと当て、さらには足の甲で下顎を上げた。


「疑ってるの?のろのろしてて男らしくないよ。早く」


怒りもせずに言った娘。内心あの足を出すスピードに驚いた僕。


怖い。声を聞いたとたん、相手の足裏がすでに目の前に出たのに気付く。これはちょうど光が音波より速いってのを証明できるぐらい。


娘が自分の足を引っ込め、僕の腰の間くらいに垂らしてる。


この高さで靴を履くのにしゃがまなければならない。片膝をついて体を下げた僕は両手の指でサンダルのふちを押さえて、小心翼々と紐を相手の足指の間に挟み込む。


そっと微笑み、挟み込んだばかりのサンダルを少し調えると、娘は勝手に橋の端の向こうへ立ち去る。


礼儀がないなあ。ありがとうぐらいも言えないのかよ。明らかに彼女の担任の先生は重大な職務怠慢行為があるんだろう。


離れていくあの後姿を眺めて、やっと息をつく僕。改めて帰途につける感じがいい。


「ね、待って」


ただ数歩を歩いただけで、遠くから届いた声がすぐ僕の甘さを証明してしまう。


引き返した娘は音もなく元々座ってた欄干に立ち、まるで全然移動していないようだ。


賭けてみようか、彼女はもし抜き足で走るのに長じるんじゃなかったら、浮かぶことができるだろう!


「な……何なんだよ?」

「孺子教うべし」

「はぁ?」

「君には教える価値があるということ。従順な態度で知り合わない淑女を手伝ってあげるってのはこの時代に稀だよね。じゃあこうしよう、五日後同じ時間にここで会おう。あるものをあげたいからね」


と、娘が機敏に橋の側へ飛び降りるのを見た。急いで前方に駆けて見るが、すでに枯れた川床から消えていった。


一体どの時代の人か。本当に人間なのか?あるいはいわゆる都市伝説にあったのか?


あるものをくれる?何のもの?同じタイプのサンダルかな?そんなの要らないよ。


もうどうでもいいんだ。僕とあの娘の邂逅はただ多くの断片的な記憶の一部分に過ぎない。その後も真偽を確かめるチャンスがなかった。


だって四日後、家に『あの事』が起きたから。

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