第一戦 目には目を(12)
二人が互いに目を合わせてすぐ、あいつはバカだと意味を示すように芸音がどうにもならないため息をつきながら肩をすくめた。
「はぁっ、本当にわからないの?あの体にかけたのをはっきり見たの?君」
芸音が同情をもらしてる態度で言ったヒントのもとで、僕はあの片手でバタフライナイフを持ちながら、バスタオルをぎゅっとつかんで体を覆う乱暴な少女を改めて見た。一枚のバスタオルをまとうだけじゃない?しかも相手のパンツも僕に……なんでもない。
……はっ!あ、あれはまったく別物だ!首に巻ける帯が付くバスタオルがあるわけないんだ。
思わず嗅覚が、ある特別な匂いが鼻に付いた。
確信したんだ。その匂いはしばらく前に下のホールで嗅いだ。
「っ!」
少女の体躯にまとうのはマントだ。
先ほどとある人とゲーム盤で対決する時、あの形容できない匂いはそのマントから発散する革の匂いと完全一致した。
でもさ……あのやつのマントが、この少女の身体に現れるってのはどういうことだ?
インスピレーションが脳裏にぴかっと暗雲を払って光が差したようだ。なるほどな、わかった。これはきっと探偵が盲点を突いた感じだな。
答えはほぼ確かめられてる。やっぱり僕の推理ロジックはまだ悪くないのさ。
「フン、わかった。君はあいつの二股の相手だったんだ!」
氷のような冷たい目が一瞬茫然になった金髪少女。ほら、これは犯人の正体があばれられた瞬間に必然的な反応である。
「あいつのもう一人の彼女だから、君は容易くそのマントが取れて、もちろんここに入るセキュリティカードもなあ。黒羽さんもあいつと付き合ってるけど、あの善良な性格によって君を守ろうと思わせ、君とともにあいつを争うことも受け入れたんだ。君たちは憎み合ってるかもしれないが、あいつは君たちが仲良くなって欲しいと思ってるから、君たちをオフィスにいさせて自分が先に寮へ帰って休んでるんだ。間違いはないだろう、黒羽さん?」
芸音の方へ向くと、相手が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。明らかに僕の推理能力に感心してるんだ。やったね、やっぱり芸音はいい観客だ。
満足に頭を戻したとたん、金髪少女が何故か必死に笑いを押し殺そうとしてるのに気付いた。
何だ?そんなに可笑しいわけ?ふつう犯人が暴露された時によく悔やんでるじゃないか?彼女みたいに喜ぶ人がいるか?
相手は本当に大笑いするのを抑えるために唇を噛んでるのを見ると、突然ひやりと悪寒が背筋から頸椎にのぼってきた。
こっ……この品位に欠ける笑い方、さらにあの軽視する意味が含まれてる口のラインとか、確かに先ほど見たことがある……
いや、こんな展開なんてゲームでしか見られない。またパソコンに没頭しすぎて現実と幻が区別できない。
外見はあいつに似てない。
体格はあいつに似てない。
声質はあいつに似てない。
もっとも性別すらまったくあいつと違うんだ。
すべての形跡はあんなことが起きないのをはっきり示すん……頼む、絶対起さないでくれ!
ついに見兼ねただろう直感は、思いがけず脳の扉を押し入って僕にあの少女の正体を知らせた。
バカな……なんとこの人は──
「──柳下?」
まだ意識があるうちに、一抹の優しい微笑が目の前にさっと現れたが、次には瑞々しい肌をする引き締まった足裏が替わってきた。激しく衝撃の後、次第に気が遠くなっていくうちに自分の鼻先はもうぼこっと凹んだ感じがした。
誰か、ゲーム終了のメニュー画面は何処にあるのか教えてくれ……




