38・草歩の作戦!びびるピョン
よく朝、草歩とピョンは行動を開始した。
鉱山では奴隷たちが作業を始めている。朝ごはんもなしに働くなんて本当に大変だ。
毒ガスが出ている作業場は、穴の途中の側道をずっと奥へ降ってくことでしかたどり着けないらしい。それにガスが出てるから普通の人じゃそもそも行くことができない。
「どうしようか?」
「どうしミすか?」
草歩はピョンと側道の脇で考える。蒼兄たちは仕事へ行ってしまった。きっとチェスナのことを確認してくれているだろう。
僕たちも行動しないといけないけど。
「そもそも毒ガスってどうにかなるミんですかね?僕たちじゃ近づけないんじゃないですかミ」
腕組みをして考えるピョンは自信がなさそうだ。
「そうだなあ、ゲームとかだとこう言う時は何かスイッチを押して毒ガスを止めたり、毒ガスのない落とし穴から先に進んだりするんだけど」
「ゲーム?なんの話ですミ?」
「ああ、なんでもないなんでもない」
草歩は笑ってごまかす。どうもこの世界にいるとゲームの中みたいな感じなんだよな。
「あとは、毒ガスにはガスマスクっていうのがあると大丈夫だったりするんだよね」
「ガスミスク?」
「そう、この国にはあるかなあ?顔を覆って、だいたい口元にコード見たいのがついてるか、大きな丸い空気フィルターがついてて毒をすわないようにできるんだ」
「ミーん?」
「よし!」
いきなり立ち上がった草歩にピョンは戸惑う。
「ここで座っててもしかたない。ガスマスクがあるとしたら、1箇所しかないよ」
「どこですミ?」
歩き出した草歩についてピョンもあとを追う。
草歩は側道から外へ出た。
ブレイズたちに見られてもいいように、手近な籠を背負って作業中の奴隷に混ざる。
そうしてガレキを運んでいる昨日草歩たちがやっていた作業の群れに混じって、側道へと入ってゆく。
「どこへいくんですミ?」
「いいから」
奥には上へと続くエレベータシャフトがあって奴隷たちはそのエレベータのカゴにガレキを積んではまた戻ってゆく。生気のない彼らに混じり草歩もエレベータに近づく。
そして奴隷たちの流れが切れた瞬間を見計らって、
「今だ!」
とガレキの積まれたカゴに飛び乗った。
「ピョンも早く!」
あわてて飛びついたピョンを引っ張り上げ、カゴの中に体を伏せて身を潜める。
「兄貴、どういうつもりだミ?」
「これで上まで行くのさ。ガスマスクがあるとしたら上だと思うんだ」
「上のどこですミ?」
「シルバーとブレイズのところ。見たところここの奴隷管理人はあの二人だけだろう?昨日も僕たちを監視していたのはブレイズだけだったし、ガラームにオリハルコンの入ってるらしい木箱を持っていっているのもシルバーだった。
だとしたら、毒ガス地帯もあの二人が管理しに行くこともあると思うんだ」
草歩の説明にピョンが笑顔になる。
「なるほどですミ!そしたらそのガスミスクがあるかもですミ!」
ギリギリとロープを軋ませながら、草歩たちが乗ったエレベータは上から射してくる太陽の光に向かって上昇してゆく。
そして地上にでると、エレベータのカゴはガレキが捨てられている崖に向かっているようだ。
先の方では崖の先にでたカゴの底が、仕掛けによって抜けてガレキが捨てられていっている。
「わわ、ピョン、このまま乗ってたらまずいみたいだ!早く降りないと!」
「ええっ!早く早くミ!」
二人は慌ててカゴからでようとするが、ガレキが崩れてなかなか上に上がれない。焦りながらもなんとかカゴの縁に手が届いた、と思った瞬間にカゴの底が抜けて草歩はその手を離してしまった。
「「わああ!!」」
ガラガラと崖下に落ちてゆくガレキたち。草歩は思わず目をつぶる。
あれ?
いつまでも落ちないのでおかしいなと見ると、背負っていた籠の網目が、仕掛けで開いたカゴの底についていたフックに引っかかっている。
ピョンは草歩の足にしがみついて目をつぶっている。なんとか落ちずにすんだようだ。
「はああ〜〜〜〜〜っ」
カゴが崖の上に戻ってくるのに合わせて、背負っていた籠を外して地面に飛び降りた。
「危なかったミ」
ピョンは地面に手をついて這いつくばって震えている。
「うん。こわかったね」
草歩はなんだか現実感がなくて、遊園地のアトラクションでもやったかのように興奮していた。
草歩たちは岩の影に隠れながら移動して、見つからないように身を伏せながら鉱山の大きな穴の縁から下を覗き込む。
穴の底では相変わらず奴隷たちが働かされている。グルグルと螺旋道路が続いているが、シルバーとブレイズの管理小屋は地上のそばにあるはずだ。
「あ!」
草歩は慌てて顔を引っ込める。
ちょうどこの真下に、シルバーかブレイズのどちらかが仁王立ちしているのが見えた。草歩から見て右手のほうにはガラームが住んでいる宮殿の窓が、岩壁にいくつも開いている。
ピョンに頭を下げるようにポーズで示して、もう一度ゆっくりと下を覗く。
やっぱりいる。
この崖の真下を道路が通っていて、昨日みたようにそこから奴隷を監視しているんだ。
ちょっと高いけど、岩を伝って降りればなんとかなりそうではある。
でも。
もう一度崖から下がって、ピョンと草歩は顔を見合わせた。
「あそこにいられたら邪魔だな」
「困りミしたね」
うーん。と何かを思いついたらしく、草歩はピョンに合図してきた道を戻っていく。
「どこに行くんですミ?」
ズンズンすすむ草歩を追ってピョンがきたのは、上がってきたエレベータの穴のところだった。
「兄貴?また戻るんですミ?」
ピョンを見て草歩は自信満々な顔で首を振った。
そしてそばにある大きな岩の塊を持ち上げようとし始める。顔を真っ赤にして力を込めている草歩を慌てて手伝うピョン。
「あ、ありがとう、ピョン。これを、こ、こっちに」
草歩が一生懸命大きな岩を運んでいったのは、エレベータを動かす仕掛けがある場所だった。太いロープが大きい滑車の間を通っていて、穴から地上へ、そして崖へと運ぶ軌道に調整している。
きっとこのロープをどこかで奴隷が大勢でぐるぐる回して、エレベータを動かしているんだろう。
草歩はその滑車に岩を挟み込もうとしてる。
「な、何をするんです兄貴?こんなことしたらやばミんじゃ」
「そ、そうさ。ここが、止まれば、エレベータも、止まって、きっと、シルバー、たちも、見にくる、はずだ!」
と言って岩を投げ込む草歩。
見る間に回転していた滑車は岩が挟まって動きが止まる。間を滑って流れていたロープも、滑車が止まってしまったことで動かなくなってしまった。
カゴが出てくる穴の下から、なにか大きな声が聞こえる。
「よし!」
ピョンの心配をよそに、草歩は笑顔でさっきの穴の縁へかけてゆく。
それを追いかけながらピョンは思う。
兄貴って、こういうとき楽しそうなのがすごいミ。




