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36・トード一味の蒼兄たち

 ピョンを押さえつけているのはイタチのような小柄な獣人で、もう一人カメレオンのような爬虫類人が側道の入り口で目をキョロキョロ動かして人が来ないか見張っている。


 完全に計画的に草歩たちを狙ったようだ。


 一体どういう奴らなんだろう、草歩が奴隷に聞き込みをしているのに対しての反応にちがいないけど。


 脇腹に感じるナイフの痛みが草歩を焦らせる。

 答えを間違ったら命がないかもしれない。


 さっきシルバーの部下か、と聞いてきた。と言うことは僕たちを奴隷を監視するために派遣されたスパイと思っているのか?


 それが罠な可能性もあるけど。


 「べ、別に嗅ぎ回ったりしてない。ここに知り合いがいるかもしれないと思って聞いただけじゃないか」


 鹿獣人は片眉を上げきっぱりという。草歩を睨みつける目の草食獣独特の横に長い瞳孔どうこうは、感情が読めず不気味だ。


 「いいや、お前のその目が気にいらねえケーン。なんだってそんなに余裕ケーン?ただの奴隷がここに放り込まれてそんな目をしてるところは見たことねえケーン?こそこそぎ回る密告やろうでもなきゃあよ?」


 くそ。やっぱり奴隷の中では浮いてしまうのか。


 「ミーたちは仲間を助けにきたミ」

 ピョンがそう答えた。


 首元にナイフを押し付けられている割に声が落ち着いている。ピョンは意外と度胸あるな。

 そうか、一か八か、もう正直にいうしかないか。


 「たすケーンに?だと?」

 鹿獣人がけげんな顔で首を捻りピョンを見る。


 「そうなんだ。さっき聞いた、赤毛の猫獣人のチェスナを助けにきたんだ」


 「ばかな。そんなことできるわけないシー。奴隷として放り込まれたら自分じゃ逃げられないシー」

 イタチ獣人が今にもナイフを突き刺しそうな雰囲気でピョンを睨みつけている。


 「僕たちは奴隷じゃない。ここに潜入したんだ」


 鹿男は今度ははっきりと驚いて草歩を見た。そしてイタチ獣人に言う。


 「鎌之助、とりあえずこいつらの話を聞くケーン?この目、ただの奴隷じゃないとは思っていたが、密告屋だったらこんなバレバレの嘘つくわけないケーン。こいつら本物の大馬鹿かもしれないケーン」


 「チッ。シーかたねえ。蒼兄あおにいがそういうんじゃあ聞いてみるシー。ベロリ!こっちにくるシー」


 草歩は蒼兄と呼ばれた鹿獣人に先導されて、坑道の奥にあるゴザがしかれ岩で簡単な椅子とテーブルの作られた片隅に連れてこられた。


 こんな場所ではあるが綺麗にととのえられてあり、ガレキを運ぶかごの素材を再利用したと見えるクッションもあってなかなか快適そうだ。


 テーブルを囲うように腰を下ろした後、蒼兄は改めて草歩に説明を求めた。


 「なるほど、そのチェスナがここにきたかもしれねえって思って助けにきたお人好しってわケーンだ」


 話を聞き、蒼兄は腕組みをして考えている。


 「こりゃ、願ってもねえチャンスかもしれねえシー」


 鎌之助というイタチ獣人はシッシッシと笑う。ベロリと呼ばれるカメレオンは無口らしく先ほどから一言も話さない。目をキョロキョロ動かしては、突然舌を出してあたりを飛ぶハエを捕まえるのは驚くが。


 「チャンス?どういうことミ?」

 ピョンが疑問を口にした。


 「そのまんまケーン。お前らがほんとに奴隷じゃないんなら、ここで自由に動ケーンるだろう?そうしたらトードの親分と連絡をとって、いよいよ作戦を決行できるかもしれないケーン」


 「作戦?」


 わからないことだらけで草歩は戸惑う。この三人はどうやら味方のようだけれど、一体何をしようというのだろう?


 「お前たち、トードの親分を探してたってことはフロッガに聞いたんだろケーン?」

 「うん」


 蒼兄は腕組みをとき膝に手をやって草歩たちに身を乗り出す。そして見得でも切るように首をグイッと回し、斜め上目遣いに二人をねめつけた。


 「俺たちはトードの親分の仲間だあケーン。トードの親分に忠誠を誓い、『あいつ』に逆らう活動をしていたんだあケーン。各地で奴隷商人と『宣誓』して負かして、奴隷解放運動なんかもやってたんでござんすケーン」


 奴隷解放運動だって?草歩は驚く。

 「え!そんな人たちがいたんですか!しらなかった」


 「はつミミだミ」


 鎌之助はすらりとした薄い胸を得意いげに張る。


 「もともとは盗賊やってたシー。でも世の中が狂っちまって、盗賊の方がまともになっちまったんだシー。シッシッシ。トードの親分はとりあえず権力がきらいな天邪鬼だから、『あいつ』が指南役になってからは「人のためになることがこれからの盗賊ゲロロ」とか言って、奴隷とか『宣誓』で苦しんでる人を助け出したんだしシー」


 「盗賊が。本当におかしな世界になっちゃったんだね」


 本音を漏らした草歩に、蒼兄がさっきまでより親しげな態度を見せる。どうやら信用してもらえたらしい。


 「俺は今の活動が結構気に入ってるケーンどな。結構恨みを買っちまってたケーンから、襲われたりすることもあったケーン。まあ、ケーらは強えから返り討ちにしてやってたんだケーンが、ある時留守のアジトを狙われてよ。たまたま一人でいたフロッガが連れ去られちまったケーンで、捕まったフロッガを助ケーンにここにきたのさ。本当はただ力づくで取り戻すつもりで押し入ったケーン」


 そこまで言って蒼兄はやや苦い顔で肩をすくめた。


 「ところがフロッガは無理やり『宣誓』させられちまってて、負けて本当に奴隷になっちまってたケーン。それでトードの親分はフロッガを解放するためにガラームと『宣誓決闘オースデュエル』をしたんだが、負けてここに閉じ込められてるってわケーンだ」


 「『宣誓』って、無理にはできないんじゃないの?」

 蒼兄は鼻息を鳴らしてしかめっつらをする。


 「フルルウ。理屈はそうケーン。だが脅したり騙したり、家族のことを持ち出したりやりようはいくらでもあるケーン。実際フロッガをかけてトードの親分がガラームのやつに『宣誓』させた時は、ほとんど力づくで脅したようなもんだったケーンからな。トードの親分は皇棋がめちゃ強えから、負けるなんて考えもしなかったんだケーンが」


 「ガラームはよっぽど強かったんだね」


 肩を落としていた蒼兄が、その言葉に口惜しそうな顔を見せた


 「いいや。ガラームとやったわけじゃねえケーン。くそ強え『代打ち』が出てきやがったのさ。すげえ目をしたウサギやろうで、そいつがトードの兄貴を負かしてガラームの奴隷にしちまったケーン。で、俺たち一味はトードの親分に『宣誓』で忠義を誓ってるから、親分が奴隷になりゃ自動的に俺らも奴隷になっちまったってわケーン」


 「うさぎミ?」

 呟いたピョンをみると、今まで見たことのない真剣な顔だ。


 なんだろう?なにか気になることでもあるのかな?おなじ国の仲間だろうか?


 「ケーらの仲間は他にもいるんだがみんなバラバラにここにいるケーン。なんとかここから脱出できねえかとずっと作を練ってたんだがようやくそれがなんとかなりそうでな、そんなときにお前らがこそこそ嗅ぎ回ってやがったケーンから、密告屋が送り込まれたかと思ったケーン」


 「脱出作戦?脱出なんてそんなことできるの?」

 思わぬ話に草歩は身を乗り出した。もし、それに手を貸せるなら一番都合がいいじゃないか。


 蒼兄は頭の後ろに手をくんで後ろの壁にもたれた。

 そして一定の距離を取りつつ二人に交渉を持ちかける。


 「今はまだ言う気はないケーン。この作戦にはどうしてもトードの親分の力が必要ケーン。もしお前らが協力してくれるんならケーらもお前らに協力するケーン」


 草歩はピョンと顔を見合わせた。


 こんなにうまくいっていいものだろうか?ちょっと話ができすぎている感じもする。でも奴隷解放にも協力できて、チェスナの救出にも役立つならこれ以上にいいことはない。


 ピョンも迷いはないようだ。

 そうだ、たとえ騙されていたって、今ここでこの人たちを敵に回す理由はない。


 「いいよ、協力する。トード親分を見つければいいんだね?」


 「ケーンケッケッッケーン。ありがてえ、ようやく作戦がうごきだすケーン。ケーらだけじゃどうしても命令に逆らって勝手に動くことはできなくてな」


 そっくり返っていた体を嬉しそうに乗り出して、蒼兄が手を差し出してきた。

 草歩とピョンがその手を掴むと、鎌之助とベロンも重ねてきた。


 一同はお互いを見回し、目的と意思を確認する。

 草歩も力強く皆にうなづきかえす。よし、ともかく一歩全身だ。


 「じゃあケーらはこれから奴隷解放作戦の同志だケーン必ず成功させるケーン!」


 「うん!」

 「やるミ!」

 「たのんだシー!」

 ベロンはベロンと舌を回した。


 「「「「おー!!!」」」」

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