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34・奴隷娘のフロッガ

 残された草歩とピョンをガラームがしげしげと眺める。


 「ガららあ。おジい、ゴいヅらならジガるやヅバいグらデもいるダろうに」


 値踏みをするように見られて思わず草歩はにらんでしまう。ピョンはおびえて縮こまっている。

 「お前らジゃやグにもダダんガ、ジガダねえ。おい、ヅれデゲ」


 ガラームはいかにももったいないというように舌打ちすると、草歩たちの綱を持つカエル娘に指で示し、もう興味をうしなって横のヤモリ娘にニヤニヤとちょっかいを出し始めた。


 乱暴にぐいと首輪を引っ張りながら、カエル娘は草歩たちを入って来たのと反対の廊下に連れていく。

 そこには地下に降りる階段があり、どうやら採掘さいくつ現場につながっているようだ。


 部屋からも十分遠ざかり、ほかに誰もいないのを確認した草歩は先導するカエル娘に駆け寄ると声をかけた。


 「ねえ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 カエル娘はじろりと横目で睨むが無視して歩きつづける。


 「ここに赤毛の猫獣人の奴隷が連れて来られなかった?結構大柄な女の人なんだけど」

 再び睨んだカエル娘は、草歩の首の綱を思い切りぐいと引く。


 「ぐっ」


 首が閉まって息がつまる。草歩は思わず引っ張られた綱を引っ張り返した。

 「くるしいじゃないか!」


 驚いてよろめいたカエル娘は草歩に詰め寄ると、睨みつけながら小声で言った。


 『どういうつもりゲコ…!あなたも奴隷なら大人しくしてなさいゲコ…!話してるとこなんて見られたらどんな目にあうゲコか…!』


 『あ、ああごめん。実は僕たちは奴隷じゃないんだ…』

 カエル娘の目が大きく見開かれる。


 『ど、どういう意味ゲコ…?』

 『実はその赤毛猫の獣人を助けたくて、奴隷のふりをして潜入したんだよ…』


 『信じられないゲコ…』

 と言ってピョンを見るカエル娘。ピョンはそれに力強くうなづきかえした。 


 『本当なのゲコね…?バカなことをしたゲコ。きっと見つかってひどい目にあうゲコよ…!』

 『いいんだ。親しい人が捕まってるのに何もしないでいるよりはずっとマシさ…!』


 カエル娘が信じられない、という顔で草歩をみ、目をバチパチさせる。


 『僕は天野草歩、よろしくね。君は…?』

 と言って差し出した草歩の手をしげしげと見ていたが、急にそれを掴んでグイッと引っ張る。


 「わっ、ング」


 声を出しかけた草歩の口を水かきでふさぎ、そのまま体を回すようにして階段に置いてあるツボの影に身をかがめる。草歩は振り回され転ぶようにして倒れ込み、ピョンは驚いてみていたが、ハッと気づいて自分も影にかがみ込んだ。


 階段の下から木箱を抱えた奴隷が上がって来ていた。


 服装や顔つきからして、奴隷と言っても他の奴隷を管理する役目を負っている男のようだ。腰には太い鞭が下がり、指にとげのついた指輪をつけている。


 馬のような顔をして鼻息もあらく、草歩たちの隠れているツボの横を通り過ぎていった。


 『もう…!私が疑われるゲコよ、巻き込まないでゲコ…!』

 『ごめん』


 『私はフロッガ。よろしくゲコ、草歩』

 と言ってカエル娘のフロッガは草歩に手を差し出してきた。表情がわかりにくいが、どうやら笑っているようだ。


 『うん、こっちはピョン』

 『よろしくミ、フロッガ』


 両生類独特のしっとりとした肌の手と握手して、三人はお互いにうなづきあった。


 『私にはたいしたことはできないケロ(けど)、協力する。奴隷じゃないってことは、あなたたちは『宣誓』してないゲコね?』


 『うん』

 『よかったゲコ。『宣誓』してたら、主人には絶対さからえない。だからもしその人を見つけても、彼女は自分の意思では逃げ出せないゲコ。なんとか気絶させるか縛るかして、無理やりに連れ出すしかないゲコよ』


 『そうか…』


 そこまで考えていなかった。『あいつ』に勝てない以上、チェスナをみつけたとしても『あいつ』の支配下にある状態から抜け出すことは不可能ってことか。


 あんなに強いチェスナを、彼女の意思なくして連れ出せるだろうか。


 『なに今更なやんでるゲコ…!ここにはロープも袋もあるし、いざとなったらどうにでもなるゲコ。それよりいいゲコ?私は命令されたゲロからあなたたちを下の鉱山につれてかなきゃならないゲコ。


 さっきの馬みたいなやつ、名前はシルバー。あいつと弟のブレイスがガラーム様の命令で奴隷を仕切ってるゲコ。連れていったらきっと働く場所を命令されるはずだケロ、あなたたちが『宣誓』してないんだったらその命令に逆らえるはずゲロ』


 フロッガは時間がないというように早口で喋る。きっとこれだけでもかなり危ないことなんだろう。


 『そうしたら、トード兄さんを探してゲコ。きっとかなり奥の方、もしかしたら毒ガスが出てるところで働いているかもしれないケロ。カエル族は毒に強いゲコから。トード兄さんに、フロッガから聞いた、って言えばきっと協力してくれるゲコ。兄さんに、フロッガは大丈夫。いつか必ず鳳仙花ほうせんかの丘にまた行こう、っていえば信じてもらえるから。いいゲコ?』


 真剣に言うフロッガに、草歩はうなづいて答えた。


 『うん。ありがとう』

 『お礼はその人を助けてからにしてゲコ』


 フロッガはツボの影からさっと出ると、二人の首輪の紐を前までのようにぐいぐい引いて連れてゆく。


 綺麗に整えられた階段を降り切ると、そこは上から見下ろした、巨大な穴の地下へと延々と続く螺旋らせんの道に続いていた。


 道の先では奴隷たちが様々な道具や瓦礫がれきを持ち運んだり、岩に向かってつるはしをるっている。これだけ奴隷がいても管理人らしい人間があまり見えないのは、さっきフロッガが話していたように『宣誓』の力で逆らえないからだろう。


 道から横に空いた、奥へと続く大きな坑道の入り口に、木で作られた素朴ではあるが大きな小屋が立っている。その小屋の前には様々な道具や樽や木箱、荷車が置いてある。


 脇には馬小屋まであって、二頭の馬がかいばをんでいる。

 その馬小屋の手前に、同じような馬の頭をしているが体は人間の獣人が腕組みをして立っていた。


 そいつはいきなり、目の前を通り過ぎた木箱を持って来た大きな岩石人に向かって鞭を浴びせかけた。


 「急げイイイ〜〜〜ン!おまえなら倍はもてるはずブロロロ!怠けるんじゃないイイ〜〜ン!!」


 岩石人は必死に足を早めるがきっと疲れ果てているんだろう、その動きは緩慢かんまんだ。


 ブレイズがそんな彼に向かって鞭を振るう姿は典型的な悪者だ。奴隷だから命令されてやっているんだろうが、ここまでするようには言われていないはずだ。


 フロッガの姿に気づいたブレイズは小馬鹿にしたように鼻息を鳴らした。


 「ブルルルルッ。フロッガちゃん、あい変わらず可愛い格好してブルルルッ。あ〜あ、ガラーム様の趣味がこんな両生・爬虫類専じゃなけりゃあよ。もうちっと目の保養になるんだけどなあブルルルッ」


 そう言いながらフロッガをめるように見る目がいやらしい。


 「ん?なんだこのガキども。ガラーム様がここで働かせろって?こんなよわっちイイイ〜〜〜ン奴らを?ったく何を考えてなさるのかブルルルッ」


 ビシリッ!!


 「「わっ」」

 と、突然草歩とピョンの足元に鞭を振り下ろしてきた。そして驚いて見上げる二人の顔を見ながらにやにや笑っている。


 「いイイ〜〜〜ンか、ここへ来たってことは俺の命令が『宣誓』の主人の命令ってことだからなブルルルッ。逆らうんじゃねイイ〜〜ンぞ。ヒッヒ。まあ、逆らえないようになってるんだかなブルルルッ」


 「はい」

 「はいミ」


 肩を落として見せながら返事をする草歩とピョン。

 ブレイズは帰ってゆくフロッグに向かって、


「今度は雌馬の奴隷も入れるようガラーム様に言ってくれイイ〜〜〜ン!!」

 と甘ったるい声で呼びかけ、指笛ゆびぶえをからかうように鳴らしたあと改めて二人に向き直る。


 「ま、きついだろうが死なねえようにがんばれイイイ〜〜〜ン!」


 草歩はゴクリと唾を飲んだ。

 これからどうなるかわからないけど、なんとしてもチェスナを探すんだ!

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