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二回目の配信はリスナーに私の誕生について話そう

 このアナザーブラッドを持ち込んでいることから分かるかもしれないが、現実の持ち物を電脳世界に持ち込める。

 さらに言えば、イラストとして描き込んだものもリアルな物体として電脳世界に設置される事になる。そしてそれを電脳世界から現実に持ってきてしまえば……? 描いたものを現実に持ってくることさえ可能になる。なんでもありと思うかもしれないが、最低限イラストのクオリティだけは要求される。

 私がイラストレーターで、眷属だって人間の頃の私なのだからイラストレーター。なのでイラストの質の問題も楽々クリア。おかげでいい感じのワイングラスを手に入れた。器がいいとアナザーブラッドの味も少しは良くなったように感じるものだ。


『そういやササヤキで魅了できるようになったって言ってたけどどんな感じ?』


 そんな話もあった。色々あって忘れていた。


「アナザーブラッドの作成実験の為にこの姿でワインを買うための年齢認証突破するのに使ったよ。とはいえ、もうそんな使い方をする必要もないがな」


『?』

『と、いいますと』


「まず、眷属が出来た。大人の女性だ。あいつに買いに行かせればいい。そしてもう一つ、私自身が成長できる」


 マントで顔を隠し、座ったまま吸血鬼パワーを全身に勢い良く循環させる。そうすれば、この幼い吸血鬼は体型をぐんぐんと大人のものに変化させられる。


『えっっっっ』

『おっぱいでっか』

『美人杉内』

『もどして』

『ロリコンがおるな』


 ぽひゅっという音と煙と共に、私の身体が元のロリボディに戻る。あれはそうそう使えるものじゃない。


「これはエネルギーを大量に消費する代わりに成長できる裏技だ。今回は見せたが、今後はそうそう使わん。吸血鬼の力を増幅する必要がある時しか使わないのつもりなのでね」


『また見たい』

『吸血鬼の力使う時ってないだろ』

『配信に吸血鬼の力は使わんわな』


 それはどうかな、としか言いようがない。大人形態だと、面白いことが出来る。面白いのは私だけだけどな。


「それで、さっき少し触れた眷属についてなんだが。こいつには事情があって名前をつけていない。そこで、お前達を仮にでも眷属と呼ぶと混乱をきたす。よって、お前達視聴者の総称は家畜だ。いいな?」


『そこは眷属さんの方に名前つけてもろて』

『ロリに家畜呼ばわり……イイネ』

『お姉さん状態に家畜って言われるならまあ』


 意外と反応悪くないな? だが、もう一押しさせてもらおう。


「素直な家畜が多くて私は嬉しいよ。とはいえ、納得のいかない連中もいるだろう。そんな奴らは自分たちの呼び名を考えてもらう。だが……一度私の眼を見て書き込みをしてもらおうか」


 そう言って、私は自身を成長形態。大人モードで魅了の魔眼を発動させる。


『家畜でいい。いや、家畜がいい』

『家畜と呼んでください』

『俺達は家畜だ』

『色気だ……いや、違うなんだこれは。服従したくなる。家畜である事を受け入れてしまう』


「魅了の魔眼、というやつさ。まさか、画面越しなら吸血鬼だろうが安全だとでも思ったのかね? だからお前達は家畜なのさ」


 大人モード終了。画面の前の視聴者達の魅了も解けたことだろう。


『頭ぼんやりしてた……』

『魅了されるってこういう事なのか。すげえ』

『てことはまさか、本当に本物の吸血鬼……?』


 グラスの中のアナザーブラッドを飲み干し、グラスを落として影の中にしまい込んだ。


「やっと分かったか。ここは電脳吸血鬼の危険な配信さ。とはいえ、魅了はたまに冗談でかける程度にするがね。なんでも思い通りではつまらない。そうだろう?」


『全然魅了なんてなくても服従しますぜお嬢!』

『本物の吸血鬼だったなんて……お嬢には参ったな』

『お嬢はこええけど……こんなスリリングな配信ねえや』


 いや、お嬢ってなんだ。まだ魅了が解けてないのか?


「今の魅了で視聴者数も若干減った。怖くなったのだろうな。

 だが、構わない。家畜は配信を続けていればまだまだ増える。それに、お前達もいる」


『お嬢! 感動しました!』

『貴重なお嬢のデレだぞ!』

『あざといデレの大安売り! いいですぜお嬢!』


 思い通りはつまらないとは言ったがお嬢はちょっとやめてほしい。ちょっとだけなので言及まではしない。


「と、いう事で私は吸血鬼なので活動時間は夜がメインだ。だからと言って二時三時の配信では家畜共がついてくるのが難しいだろう。私も夜の散歩をしたい時もあるしな。だから二十二時くらいから今後配信するので期待しておいてくれ。ササヤキも使うからそっちもチェックしてくれれば間違いない」


『今回ササヤキ使ってませんがね』


 忘れてたわ。


『せっかくの魅了回なのに宣伝不足悲しい』

『アーカイブ見てもろて』

『アーカイブで魅了されるのか?』


 まあ、多分されるだろう多分。メアリーと一体となった今でも彼女に組まれていた設定以上には吸血鬼の能力について詳しくなっていないのだ。今回の件で言えば、大人の状態なら画面越しにでも魅了が使える、というところまでは設定されていたがアーカイブについてまで言及されていない。よって私にも分からないのだ。


「さて、せっかくの雑談枠だ。私はセンベイも開設してないからな。溜まっている質問も無い。コメントからなにか質問を募集しようか」


 センベイとは匿名で質問を送る事の出来るサービスで、ササヤキとの組み合わせで使われる。


「スリーサイズは? 今さっき見ていれば分かる通り、可変というのが答えになるな」


 その辺利用してロリ巨乳とかもやれるんだが、サプライズで使えそうなので秘密にして取っておこう。


「翼とか生えてないの? しまってるだけだ。ちょっと力を入れれば……この通り」


 生やして見せて、すぐ仕舞った。無駄に吸血鬼パワーを使うつもりも無いのでサービス程度にしておく。このムーブも評判良かったので気分がいい。


「トリオ・ザ・ハロウィンどうなった? ん? なんだそれは」


 リスナーから聞いたことの無い単語が出てきた。


『フネちゃんが言ってたやつ』

『パンプキンとお嬢を誘って三人組でユニット組みたいんだって』

『サイバをハブにした実質五期生組って感じ』


 なんだそれは。聞いていないんだが……これ今答えないと駄目なやつだろうか。とはいえ断る理由も無いか? サイバの方はダー・バーテンがなんとかしてくれるだろう。


「誘ってくれるというのであればやぶさかではないな。何をやるのかは知らんが、面白いことをしてくれるつもりなら参加しよう」


『おお!』

『可愛いフネちゃんと面白いパンプキンとヤバいお嬢のコラボレーションじゃん』

『サイバのいない五期生……推せる!』


 あいつ本当嫌われてるな。結局配信開始二日目のゲーム配信は上手くいかなかったのか、それともまだ受け入れられるのに時間がかかるのか。とはいえ、それをリスナーに聞くわけにもいくまい。今、サイバに興味があるような反応を取る事は私とサイバ、そして視聴者の三方にメリットが無い。


「それじゃあその件は裏で二人と相談するとして、そうだな。今センベイやってないけどいるか?」


『いる』

『どうかんがえても必要』

『お嬢は謎だらけなんだから気軽に質問させて』


 いらないとコメントしたものはごく少数だし、いるかと言われていらないと答えたいだけの天邪鬼だけといった感じだ。


「よし分かった。設立しよう……さて、結局ブラッディ・メアリーとは何者なの? という質問も多くなってきたのでこの辺りで答えておこうか」


『おお!』

『お嬢の謎が今明らかに』

『それ目当てで初回配信から追ってる。まだ二回目だけど』


「まず私の母は一期生の松葉チユリだ。これは知ってる奴も多いのではないか」


『知ってた』

『知らなかった』

『絵柄と、チユリさん配信少なくて忙しそうだったから多分そうだろうと』


「彼女によって私はより良いものを作りたいという熱意と、キャラクターに対する愛。そして詳細な設定が与えられた。吸血鬼に何ができるか、できないか、弱点……等々だな」


 メタな話? などのコメントもあるが、今は無視して説明を続けさせてもらう。


「そして私は気付けば何もない箱の中。今思えばスマホだな。スマホの中にいた。そして私にはこの時から自我が生まれ始めていた」


 うんうん、などと相槌を打ってくれる。それで? と先を促す者もいる。


「一人の人間の元に送られた時、彼女は言った。私は貴方よ、と。だから私はその人間を乗っ取り、外にでようと考えた。電脳空間から送れるだけの吸血鬼の力を与え、彼女はその力にどんどんと馴染んでいった。これが初配信の頃だ」


『AIが搭載されてる訳でもない絵が自我を持つだけでもとんでも話なのに、設定されていた能力を人間に与えただって……?』

『普通に乗っ取ろうとしていて草も生えない』

『やっぱお嬢やばいやつだわ』

『設定凝ってるな』

『お前あの魅了受けなかったのか? お嬢はガチだぞ』


「彼女はアナザーブラッドを完成させ、その身に取り込んだ。これが、私を受け入れるだけの下準備になったのだ。彼女は再度、私は貴方になりたいと言って私を望んでくれた。嬉しかった……だから私は、その人間を電脳空間に引きずり込み、私を与えた。彼女という人間に、私の設定と自我を上書き保存した。とはいえ、存在しない部分に上書き保存だ。人間の私の人格を完全に消したわけではない。せいぜい、重なっている部分が消えただけだ」


『結局一部消えてんじゃん』

『こっわ』

『本人が望んだことですしおすし』

『本当かー? 本当に望んだのかー? 吸血鬼化された時点でそうなるように仕向けられたんじゃないかー?』


『そうして完成されたのがこの私、電脳吸血鬼、元人間のブラッディ・メアリー。私になりたい私は願いが叶った。外に出たい私も願いが叶った。幸せな、ハッピーエンドというやつさ』


『勝手に終わらせないでもろて』

『結局、本物の電脳存在だから動きとかが他のライバーより自由自在って事でいいのかな』

『作り話としてはホラーって感じで面白かった』

『結局これ、設定次第では他に設定の力を得た存在が現実に生まれてもおかしくなさげ?』


「私と同じ吸血鬼か……他には魔女とかサキュバスくらいか? 相手に干渉できるのは。これまでの話はこれで終わりだ。これからの話をしようじゃないか」


 リスナー達に対する説明は終わりだ。これからはライバーとしてこれから何をしていくかの相談が始まった。夜はまだ長い。

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