笛美、墜つ
私は笛美眞子今日も今日とてオスの男尊女卑を正し、女が生きられる社会にしていくわよ。
笛美眞子はしっかりと大地に根を張る大木のような抜群のスタイル、誰もが後ろ指を指して微笑む容姿を持ちながらも、女を舐め、資源として消費する悪そのものの存在である≪オス≫に靡かず、お一人様…否、孤高にその高潔な生き様を現代社会に知らしめ、魂を燃やし懸命に駆けていた。
…
「ぶフゥーーーーーーッ!!!!!今日もオス狩りに疲れたわねッッ!!!」
笛美眞子は自室の扉を開け、その魅惑的とも言える丸太のような肢体をソファに投げ出し独り言ちる。
今日は退勤中、オスが電車の中でスマホを弄るフリをしながらこちらを視姦していたので大声を上げて威嚇、その声で委縮したオスの首根っこをひっ捕まえ駅長室へと連行したのだ。
「でもあの駅員も所詮オス…隠蔽されてしまう可能性があるわね、何とかしないと。」
やれやれ、今日はまだ寝られないなとSNSを開きフェミニスト各位へ警鐘を鳴らす。
SNSとは言えこれは仕事、世界をより良くする為の活動なのだ。
そして目に入る。それは先日結婚したらしい高校の同級生のアカウント。
「…ッ!!!!名誉男性!名誉男性だお前は!!!!!名誉男性!!!!!!!!!!!」
鮮やかな手つきでオスに篭絡された同級生にリプライを送り付け先制ブロック。
反論は一切させない、フェミニストが得意とする高等テクニックだ。
とは言え、信じていた同級生が名誉男性となった事への怒りと悲しみでSNSをするだけでは最早収まらない。
寝酒を煽り、明日は更にオスに汚された世界を浄化しなければ…そう思いながら床に入り眠りに落ちた。
…
早朝、寝る前にアルコールを摂取したことでかそれとも友が名誉男性になった悲しみにより寝ている間に涙を流していたのか…真実は分からないがどちらにせよ目が腫れぼったくなっていたので、会社の近くにある女性らしく使えるコンビニエンスストア、『フェミリーマート』で保冷剤を買いに行くことにした。
とは言え保冷材だけ買うのもなんなので朝食、そして毎週読んでいる『週刊女性最強』を手に取りレジにて
「フェミニンコーヒー、1つ頂けるかしら。」
そう頼もうとしたときだった。
「お姉さん、財布落としましたよ。」
若年のオスが声をかけて来たのだ。しかし笛美眞子は騙されない。
「あんたッッ!!!!!女の財布をスったわねッッ!!!!!!!」
ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
その声に反応し、フェミリーマートの店内が赤く染まり、けたたましいサイレンの音に包まれる。
「ウワッ!!!!なんだよこれ!!!!」
そう、女の味方なのだ。フェミリーマートは。
店内で女性に危害があったと店自体が判断し、迎撃する。
ゴム弾が財布を拾ったオスに撃ち込まれ、オスは激痛でその場にうずくまりのたうち回る。
「え…なに…?オスが財布を取ったの…?」「なんてひどい奴!今すぐ去勢よ!」「オスは死刑!」「早く店内から追い出して頂戴!」
サイレンが収まり、入れ替わるかのように店内が女達の罵声で埋め尽くされる。
「な…ん、でッ…ぼ、僕は財布を…拾っ、ただけ…なのに…」
そんなわけがない、オスは全て犯罪者。財布を善意で拾うわけがないスったに決まっている。
オスを足蹴にし、フン!と鼻を鳴らしながら退店する笛美眞子。しかし…
「私の彼になんてことをするんですか!!!!!!!!!!」
油断。
気付いた時には笛美の体は前へと飛んでいた。
笛美眞子はオスには騙されない。
だが名誉男性であるオスに汚染された女には反応が出来なかった。
そのゆっくりとした世界で瞳に映るのは、
こちらへ駐車しようとしている車。
驚愕した顔の運転手。
車のボディに映った、般若のような顔の名誉男性。
そして、死を悟った自分の顔。
ドンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!
ああ、私はここで終わるのか。
オスを、この男尊女卑の社会を、オスと和解した女を、正すことなくこの生を終えるのか。
当時、私を虐めた同級生の男子を見返すことなく…
真っ赤なフェミニストブラッドに沈んだ笛美眞子の体はもうピクリとも動かない。
辺りに広がっていた雑多な音達も遠くなり、視界は閉ざされていった。
だが、不思議なことに意識だけはいやにハッキリとしていた。
まだ、終われない。
フェミリーマートって名前めっちゃ好き