第6話 愛人とのひと時
今日は愛人に会う予定では無かったが、イシュアとのやり取りが疲れたので、癒されたいと思い、呼ぶことにした。
シュタナートの性欲は20代の頃と変わりなく、他の男と比べても強い方である。
愛人は何人かいるが、夜も遅い事もあり、一番手近な者にした。
屋敷でシュタナートの身の回りの世話をする非魔術師の使用人の女である。
《通話》を使い、直属の上司である家政婦長に寄越すように命じる。
しばらく待っていると、
「お呼びに預かりました、アオラです。入室させていただきます」
数回、扉を叩く音の後、そう声を掛け、しばらく間を置いた後、部屋に一礼をして入室してきた。
当然、扉の上の水晶は透明のままで変化しない。
まともに変化するのはイシュアが入って来た時ぐらいである。
さっきまで絶世の美女であるイシュアを見ていたため、どうしても見劣りしてしまうが、なかなか美形でふわふわとした可愛らしい感じの女である。
容姿、気立てが良く、働き者だったので、好意を抱いたシュタナートが愛人に誘い、アオラも特定の恋人や婚約者がいなかったのでなる事を了承したのだった。
歳は20歳、肩にかからない長さの金髪でやや小柄で、若干幼くみえ、いつもにこやかでイシュアとは対照的である。
愛人になるとシュタナートの力を笠に着て、増長する者もいるが、アオラは全くそういうところが無く、一般の使用人然としている。
身近にいてかつ、一緒にいて過ごしやすいため、今現在の最もお気に入りの愛人で呼ぶ頻度は最も高い。
歴代の愛人の中でも最高の一人である。
「よく来てくれた、突然の呼び出しで済まなかった」
シュタナートは椅子から立って出迎える。
アオラはシュタナートのいる方に近づいていく。
「シュタナート様のお役に立てるのは嬉しい事です。まあもっと事前に言って頂けたら、ありがたいですが」
「すまんな、今日の礼は多めにしよう」
シュタナートは愛人に会うたびにそれなりの金品を与えている。
「そういうのはいいんです。今夜は優しくしてくださいね」
少し不満げな表情の後、甘える表情で言った。
「私はいつも優しいだろう」
シュタナートはすぐ傍まで来ていたアオラを大事そうに抱き寄せながら答えた。
アオラはうっとりとした艶っぽい表情になる。
シュタナートは確かめておきたい事があった。
「アオラ、少し聞くが……」
「はい?」
「私からジジイ臭がするか? 正直に頼む」
アオラは一瞬首をかしげた後、顔をシュタナートの体に近づけて臭いをかぐ。
「そんな事は無いです。私の好きな良い匂いがするだけですよ」
シュタナートは少しホッとする。
シュタナート体は《老化停止》で20代前半に保たれているから当然であるが、イシュアの言葉には何故か妙な説得力がある。
しばらくアオラと触れ合いながら、何気ない会話する。
彼女は教養があるわけではないが、意外と賢く、思いやりもあるのでなかなか会話を楽しめる。
普段は魔術の研鑽と魔術師団の運営に追われているシュタナートはその事を忘れさせ、アオラの人懐っこい可愛さにも癒される。
この感じが続くならこのままずっと一緒いたいとさえ思える。
しかしシュタナートは《老化停止》の魔術の影響で彼女とは同じ時間とは歩めない。
しかも《老化停止》の副作用の影響でシュタナートは性行為を行ったとしても孕ます事も出来ない。
シュタナートの中では《老化停止》の魔術を使用できない女と一緒になる事はありえないのだ。
安易にその魔術を取得していない女と一緒になるのは、フィーネが《老化停止》のために必死の努力したことを冒涜する行為だとすらシュタナートは思っている。
アオラについては好意を抱いているからこそ、そう遠くない日に愛人から解放し、相応しい伴侶を探す邪魔はしないようにとシュタナートは思っている。
愛人を強制させているわけでは無いが、このままだと貴重な若い時間を浪費させてしまう。
その後に彼女と一緒にシュタナート邸自慢の大浴場に入り、二人で酒を飲みながら再び会話を楽しんだ後、閨を共にした。
こうしてシュタナートの一日が終わった。




