旅人と不死鳥
ローブを身に着け、杖も持った魔術師と思われるの若い男の旅人が人気のない道を一人で歩いている。
見た目は十代中盤、やや痩せ型、高くも低くもない背丈、中性的でなかなかの美形、そして銀髪碧眼である。
その若い旅人が歩いていると前方に赤と金の羽毛を持った鳥が飛んでるのが見えた。
だいたい鷲くらいの大きさに見える。
身に纏っている魔力の影響だろうか、羽毛はまるで炎が燃える様に赤と金の箇所がゆらゆらと変化している。
若い旅人はその鳥の事を知っていた。
不死鳥と呼ばれ存在であると。
別名を火の鳥とも言い、魔獣という魔力を行使する獣の頂点に君臨し、神獣とも称され、その力は竜王をも凌ぐとも言われる。
高い魔力と非常に美しい外見持ち、世界にたった一羽しかいないとされ、完全に不死というわけでは無いが、死んでも復活し、永遠不滅とされる。
古の時代に無礼を働いた皇帝に激怒して帝都を壊滅させた事もあると伝えられ、苛烈さや危険性も併せ持つが、逆に人智を超える叡智や至宝を与える事もあるという。
再生、復活、そして終わりからの始まりを象徴する存在でもある。
そして、この世界の不死鳥は他の世界のものより遥に強力だとされている。
魔術師とおぼしき若い旅人、ライル・ウォレスはこの人生では一度目だが、二度も極めて珍しい不死鳥を見かけるとは非常に幸運な事だなと思った。
彼は不死鳥には非常に思い入れがあった。
そしてそれを見た時、ある女の顔が彼の頭に浮かんだのだった。
その彼女のいる場所が今回の旅の目的地である。
しかし、かなりの拍子抜けもした。
以前見た時は恐ろしい程の偉容と美しさで、神々しく、とてもこの世のものともは思えない程であったが、今回見たものは、それとは比べようもなかった。
空を飛んでいるので分かりづらいが、大きさも以前と比べると相当小さく見える。
それでも並みの魔獣には無い偉容と美しさはあるが、とても以前のように思わず、膝を地面につけてしまうような圧倒的な存在感ではない。
単なる記憶違いで、初めて見た時は衝撃のあまりそう思い込んでしまったのだろうか?
それとも記憶障害でもしてしまったのだろうか?
あんな事があったのだから記憶がおかしくなるのも当然か、ライル・ウォレスはそう思いながら期待とそれを大きく上回る不安を胸に旅路を進んでいった。




