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3話:紅白の拳銃


 とりあえず分かった事として、リングの声は私以外には聞こえないらしい。

 首からチェーンでぶら下げてみた所、朝食の時も洗濯してる時も、誰もリングの声に反応しなかった。


 本当にお化けじゃないのだろうか、こいつ。大分あやしいんだけど。

 まあひとまず、シスター・ナリアにはその部分を省いて説明する必要があるか。


「てな訳で、なんか指輪と拳銃が二つ入ってた」

「……ええと、意味が分からないんだけど」

「うん、私も分かってない。

 でさ、なんか王都の冒険者ギルドに事情を知ってそうな人がいるみたいなんだよね」


 リング曰く、送り主のグラッドさんとやらは、そこにいるらしい。

 詳しい話を聞こうにも、気軽に行ける距離じゃ無いんだよなー。


「ああ、送り主の人ね」

「その人に事情を聞きたいところではあるんだけど、王都だし。どうしたものかなーって」

「……うーん。手紙には何て書かれていたの?」

「貴女の運命をお返し致します、だったかな」

「……運命ねえ」


 訳が分からないって顔をしてる。

 そりゃそうよね。私も意味が分からないし。


「んー。そうね、行ってみたら?」

「え。王都に?」

「ええ。もしかしたら、貴女の御両親の事が分かるかもしれないし」

「うーん。それは結構どうでもいいんだけどねー」


 ぶっちゃけ、私を捨てた人達とか興味がない。

 それに、私の母親はシスター・ナリアだ。

 黒髪黒目の異端な私をここまで育ててくれた、私の恩人でもある。

 恥ずかしいから絶対口には出さないけど。


「てーか王都って往復で一週間くらいよ? 私いなかったら困るでしょ?」

「しばらくはみんなで何とかするわよ? 他の子達も出来ることを増やすチャンスだし」

「うーにゅ。そっかー……」


 そう言ってくれるのは嬉しい。んだけど。うーん。

 あの良くわからん指輪と拳銃が私の運命、ねぇ。

 何を言ってるんだろうって感じではある。


「それにね、オウカ。さっき拳銃って言ったわよね?」

「え、うん。言ったけど」



「ねえオウカ。拳銃って、なに?」



 え、何って……あれ?


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「え、あれ? なんで……」



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「ね。不思議でしょ? 私でも知らない物の名前を、何でオウカが知ってるのかしら」

「え、何これ怖っ⁉」


 今まで見たことも聞いたことも無い物の名前を、私は何故だか知っている。

 なんだこれ。変な感じだ。

 

「まあ多分、ここに来る前に知った事なんでしょうね」

「……ぬぬ。余計意味が分からなくなったんだけど」

「そういうのを含めてね。一度、王都に行ってみるのもいいんじゃない?」


 この教会に来る前の事なんて覚えてないし、あまり興味も無い。

 と、思ってたんだけど。



『貴女の運命をお返し致します』



 ……これは多分、知っておいた方が良いことなんじゃないだろうか。

 リングの事も合わせて、何となくだけど。

 私が何者なのか。なんで救国の英雄と同じ黒髪黒眼なのか。

 それは気になっていた事ではあるし。


「……わかった。私、王都に行こうと思う」

「うん。それがいいわ」

「そうと決まれば学校と旦那さんに連絡しなきゃだね」

「そうね。伝えてらっしゃい」

「んじゃ。いってきまーす!」


 とりあえず、学校からだ。

 しばらくお休みする事を先生に伝えよう。

 まあ、伝えなくても問題ない気はするけど、一応ね。


∞∞∞∞


 結果。やっぱり学校は何の問題も無かった。

 わかりました、の一言で終わり。

 そんな適当でいいんだろうかと思ってしまうが、楽だったので良しとしよう。


 ちょい問題があったのが雇ってもらってるパン屋さん。

 奥さんは「気をつけてね」と言ってくれたのだけれど、旦那さんが猛反対してきたのだ。

 女の子の一人旅は危ないだの、嫁入り前で何かあったらどうするだの、それはもう色々と心配された。


 最終的には寂しいじゃないかと男泣きする旦那さんを、奥さんがトレイで殴って黙らせる所まで行った。

 普段はお淑やかだけど怒らせると怖い人なのだ。


 他にも、よく買い物に行く八百屋さんや肉屋さんにも、餞別として日持ちがする物を色々と貰った。


 うーん……私、本当に良くしてもらってるなあ。

 いつか恩返しをしたいのだけど、恩ばかり溜まってしまっている。

 王都でお土産でも買ってくるかな。

 前にパン屋の奥さんから王都の美味しいお菓子屋さんを教えてもらったし、そこがいいかもな。


∞∞∞∞


「と言うことで。私は明日からしばらくいないから、みんなそのつもりでね」


 夕食を食べながら今日話し合った結果をチビ達に伝える。

 元気良く「はーい!」と返事されたが、本当に分かっているんだろうか。

 特に年長組。明日からシスター・ナリアと一緒にご飯作らなきゃいけないからね。


「でもさ、作り置きはしてくんでしょ?」

「まあねー。何日分かはストックしてくけど」

「じゃあ大丈夫じゃん。心配しすぎだよ」

 

 うっさいな。大体、料理は趣味でもあるんだからいいでしょ。


「あーそうだ。お土産よろしくね!」

「アンタに言われなくてもちゃんとみんなの分買ってくるわよ。そのくらいのお金は貯めてるんだから。

 そんな事よりあんた達、シスター・ナリアの言うことをちゃんと聞くのよ?」

「いや、普段から聞いてるし」


 ……そうね、普段から聞いてるわね。

 私が言ったことは反発するくせに。



 わいわいがやがやと、いつも通りの賑やかな夜が過ぎていった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 自分が貯めたお金をどう使おうが好きにしたらいいと思うけど、往復一週間の旅に盗賊、魔物が襲って来るなどの危険はないのかな。どうして、質問したら答えてくれる指輪があるのだから、もっともっと色々と…
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