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29話:今日もお城に呼び出し


 お腹いっぱいでギルドに戻ったら、カノンさんから呼び出しを受けていた。

 前回同様、王城までてくてく歩いていく。


「ちわーす。また来ましたー」


 門番さんに挨拶。最近よく来るのですっかり顔馴染みである。


「おー、オウカちゃん。今日はどうした?」

「カノンさんに呼ばれましたー」

「またか? 今回は何やらかした?」

「失礼な。何もしてませんよーだ」


 んべっと舌を出す。


「はは。すまんな。ほれ、いつもの部屋に行きな」

「はーい。んじゃまたー」


 お城の中に入ると、メイドさんにいつもの部屋に通された。

 コンコンっとノックをして中に入ると、いつ見ても美女なカノンさんがお出迎えしてくれた。

 今日は何だかいつもより機嫌が良さそうだ。

 いつもは格好いい美人だけど、今日はニコニコしてて可愛い。

 眼福である。ありがたや。


「あの。何故拝むのですか?」

「あ、気にしないでください。それで、噂で聞きましたけど、カツラギアレイさん見つかったんですね」

「ええ、お陰様でお兄様と再会することが出来ました。ありがとうございます」

「どういたしまして。良かったですね」


 うーむ。よほどお兄さんが好きなんだろうなー。

 今まで見たことも無いくらい機嫌が良い。可愛いなー。


「はい。レンジュさんに関しても、残念ながら一緒に帰還しています」


 あ、そこは残念なんだ。こっちは仲が悪いのかな。


「もうそろそろお兄様もいらっしゃると思いますので、もう少しお待ちください」

「……あの、ちなみになんですが、カツラギアレイさんってどんな人ですか?」


 なんかね。本とかで読んだ話と、色んな人から聞いた話で、だいぶ内容が違ってんだよね。


「お兄様ですか? そうですね。誰よりも意思の強い方ですが、それ以外は普通です」

「普通? 英雄なのに?」

「はい。身体強化も上手く行えず、魔法も得意ではない。単純な能力的には一般の騎士団員と同程度でしょう」

「えーと。それ、大丈夫だったんですか?」


 言ってしまっちゃ何だけど、とても魔王討伐の旅に参加できるとは思えない。

 むしろよく生き残れたなー。


「ふふ。それがですね。これは私達英雄の全員の共通認識なんですが、お兄様は最強の英雄なんですよ」

「……ごめんなさい、意味がよく分かりません」

「はい、皆さんそう仰られます」


 んーむ。普通なのに最強? 謎かけかな。てか最強って勇者じゃないの?

 ……よく分からん。会ってみたら分かるのかな。


「あら、噂をすれば。いらっしゃいましたよ」


 カノンが言った途端、ドアがノックされる。

 え。何で分かったの? 絨毯ふかふかだから足音も無かったよね?

 なんか怖っ。


「どうぞ。鍵は開いていますよ」


 ガチャリとドアが開く。


〇〇〇〇〇〇〇〇


 ――自動認証:該当魔力を目視。

 ――緊急シークエンス起動。

 ――最優先事項を【生存】から【殲滅】に変更。

 ――対象の削除完了までリミッター限定解除。


 ――Type-0【killing Abyss】再起動します。



 対象を目視確認。デバイスを強制召喚。対象に向け攻撃を開始。


 Type-2により弾丸が切断。攻撃失敗

 確実性を高める為に接近を施行。

 Type-7による対物魔障壁を確認、排除不可。

 Type-2による妨害を確認、排除不可。

 接近不能により遠距離からの狙撃に移行。


 実行不可。Type-2により行動不能状態。

 Type-2、Type-7の上位命令執行を申請。

 メインサーバーに接続……不可能判定。

 単機での任務続行に切り替えます。


 エラー発生。外部より無線接続。指示個体により命令系統の上書きを確認。

 緊急シークエンスを終了します。


〇〇〇〇〇〇〇〇


 気が付くと。

 私は地面に組み伏せられていた。

 ……え? なに、何で私抑えられてんの?


「オウカさん!」

「へ? あ、はい。貴女のオウカです」

「良かった。意識が戻りましたか」

「……意識? はい?」


 なんだ? 何がどうなってんの?


「――オウカ:貴女はカツラギアレイを強襲しました。

 コダマレンジュ、カツラギカノンの妨害により阻止、私が命令系統を書き換えました」

「……強襲? 命令系統?」


 えっと……つまり、なんなの?


 訳が分からないまま、私は周りを見渡した。


〇〇〇〇〇〇〇〇


 コダマレンジュさんに取り抑えられたまま聞いた話によると。

 カツラギアレイさんが部屋に入ってきた途端、私が拳銃を抜いて攻撃したらしい。

 それをカノンさんの加護で防ぎ、コダマレンジュさんが私を組み伏せた、らしい。


 えぇ……何それ。全く覚えてないんだけど。

 でもそれ、本当なら私相当危ない人じゃないか?


「あの、ごめんなさい。全く覚えてないです」

「呼び掛けに反応もしていませんでしたし……洗脳系の魔法でしょうか」


 カノンさんが難しい顔で首を捻ると、その後ろから男の人が声をかけてきた。


「レンジュ。もう大丈夫だ。離してやれ」


 ボサボサの黒髪に無精髭、強い意志を感じる黒眼。

 右腕に銀の鉄甲を装着したお兄さんが、私をじっと見ていた。

 懐かしむような、哀しそうな顔をしている。


「お兄様、それはちょっと」

「大丈夫だ。理由は分かってるから」

「アレイ、離していいのっ⁉」

「あぁ、構わん。説明する」


 後ろで掴まれていた腕を離され、改めて目線を上げる。

 なんだろ。初対面なのに、どこか懐かしい気がする。


「……前に、お会いしたことあります?」

「ああ。だが君は覚えていないと思うよ。まだ眠っていたからね」


 優しい口調で、そう言った。


「……眠ってる私を一方的に知ってるって、大分犯罪臭いんですけど」

「おいやめろ、俺はロリコンじゃねぇ」


 おいてめぇ。誰がロリだって?


「……お兄様?」

「アレイっ⁉」

「だから違うっつってんだろうが」


 大きなため息。どことなく、苦労してそうな雰囲気だな。


「勘弁してくれ。俺はごく普通の一般人だ」


 英雄は面倒くさそうに、そう呟いた。


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