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14話:王都散策


 森には行くなと釘をさされてしまったので、今日は街にお買い物に行こうと思う。

 お目当ては拳銃を入れるホルダー。腰に吊ったままだとメチャクチャ目立つからね。

 折角王都に来たのに観光もしてないし、ちょうど良い機会だ。

 でもその前に。


「おばちゃん、おはよー。今日の朝ごはん、なにー?」

「おはよう。今日はサラダとソーセージとコンソメスープだよ」

「おお! パンも? パンもある?」

「もちろんさ。たくさん食べていきな」

「わーい! いただきまーす!」


 ニコニコ顔のおばちゃんに見守られながら朝食を平らげ、意気揚々と街に繰り出した。



 まだ朝早いのに大通りは既に賑わっている。

 この通りの人達だけでも、うちの町と同じくらいの人がいるんじゃないだろうか。

 道の真ん中を馬車や竜車が走り、端側を色んな種族が行き交っている。


 人間から、獣の特徴を持つ亜人、背の小さいドワーフ。

 耳の長いエルフなんかもいる。

 冒険者ギルドにも色んな種族が居たけど、大通りはそれより更に種類が多い。

 それを見るだけでもドキドキする。

 世界は広いんだなって、実感できる。



 早速探索開始。

 とてもたくさんの店が並んでいる。

 パン屋やレストラン、服屋、露店で装飾品を置いていたり、武器屋の看板があったり、雑貨を取り扱う店の隣には金属鎧専門店なんかもある。

 キョロキョロと周りを見渡しながら、人にぶつからないように気を付けて歩く。


 あの店の揚げパン美味しそう……お、あのマントカッコいい。

 けど丈が足りないか……くそう。

 これなんだろ。なになに、エルフ用の耳当て? へぇ、そんなんあるんだ。

 あ、あのお皿可愛い。けどたっかいな……貴族様用なのかな。



 こんな感じでうろうろとしていると、気が付いたらお昼時を回っていた。

 おおう、いけない。本題を忘れてた。

 ホルダーって革物屋でいいのかな。

 うーん……まーなんにせよ、とりあえずお腹が空いた。ちょうど良いし屋台で買い食いしちゃおっか。


「おっちゃん、肉まん三つちょーだい」

「はいよっ。お、嬢ちゃん可愛いな。オマケに一つ追加してやろう」

「まじでっ? ありがと!」


 らっき。なんか王都に来てから良い事ばっかりだなー。

 


 大通りを抜け、肉まんにかぶりつきながら小路を歩く。

 うんまいコレ。じゅわっと肉汁が溢れるから火傷しそうになるけど。

 何の肉だろ……オークが混ざってるのは分かるんだけど……牛、じゃないし。ミノタウロスかな?

 うーん。流石にこれは再現できないかもしんないなー。


「……あ。そだ、リング。拳銃入れるホルダーって何屋だと思う?」

「――回答:革製か金属製かと思われます」

「んー。金属製は重そうだから革かなー」

「――革製であれば:先程の大通りに店舗があります」

「え、見落としてたわ。これ食べたら行こっか」

「――了解……オウカ、左方でガラスの破砕音。警戒を」


 言われて左を見ると、薄暗い路地裏があった。

 人通りの少ない小道のさらに横。ゴミが散乱しているし、ほとんど人も通らないだろう。


「……あー。シスター・ナリアと路地裏行かないって約束してんだけどなー」


 耳をすますと、もう一度ガラスの割れる音が聞こえる。

 それと、子どもの助けを求める声。

 ……聞こえちゃったもんは仕方無い。行くかー。


∞∞∞∞


「おーいあんたら。何してんのよ」


 現場到着。荒っぽい兄ちゃんら三人組と、座り込んで頭を守っている猫系亜人の女の子。

 わーい。やっぱりトラブルだー。グラッドさんに怒られるー。


 ……はあ。ま、しゃーないわね。

 出来るだけ穏便に行こうか。


「どんな理由かしらないけど、複数で子ども囲むのはダメじゃない?」

「ああ? 誰だてめぇ⁉」

「ただの町娘よ」

「……おい、こいつ。黒い髪、黒い目の子ども!」

「お前……例のオーガ潰した奴か⁉」


 誰が子どもだ、こら。引っこ抜くぞ。


「ちっ……関係ねぇよ。悪ぃのはこいつだからよ」

「少しくらい多目に見てあげなさいよ。男が下がるわよ」

「なんなんだテメェ……うるせぇぞ!」


 こちらに手を伸ばしてくる男。あーあ。やっぱりこうなったか。

 幾ら女だからって、殴り合いの経験くらいはした事あんだけど……ここは穏便に行こうか。


 伸びてきた手を素早く掴む。驚いている隙に、その手を下に降ろした。

 右手を伸ばして、無理矢理握手。

 そのままぶんぶんと手を縦に振る。


「はい、あーくーしゅ」


 にぎにぎして離す。

 リーザさんを真似て笑顔で威圧するのも忘れない。

 まだ続けるなら、分かってんな? 加減しねぇぞ。


「………お、おおおう⁉」


 上目遣いで睨み付けていると、ガラの悪い兄ちゃんは、ぼん、と真っ赤に茹で上がった。


 え、何その反応。想定外なんだけど。

 そこは怒鳴るか逃げるかじゃないの?

 ……良く分かんねーけど、まあいいや。逃げるか。


「ほら、行くよー」


 こちらもぽかんとしていた猫獣人の子の手を引いて立ち上がらせる。

 ……あれ。この子、私より背ぇ高くね?

 …………まじかぁ。私の方が歳上っぽいのが追い討ちだわ。


「あ、そだ。私に話があるなら冒険者ギルドに来なさい。逃げも隠れもしないから」


 ひらひらと手を振ってその場を去る。

 少し行ってからちらりと後ろを確認。

 ……よし。追っては来ない。

 凄いぞ私、ちゃんと荒事無しでトラブルを乗りきった。

 これならグラッドさんも文句は言うまい。


 路地の入口まで行き、繋いでいた手を離した。


「あんた、大丈夫? 怪我はない?」

「あ、はい。ありがとうございました」

「あんな連中もいるんだから気を付けなさいよ?」


 と、そうだ。


「ね。ついでに聞くけど、革職人さんの店ってどこか分かる?」

「え……あの」

「や、知らないなら大丈夫よ。聞いてみただけだから」

「ちが、あの……お父さんが革職人してます」


 おう。まさかの、娘さんでしたか。

 ……縁って凄いなあ。人助けはしてみるもんだわ。


「じゃあお店に案内してくんない?」

「あ、はい! 私、エリーっていいます」

「オウカよ。よろしくね」


 改めて握手。おおお、手がぷにっとる。

 肉球か、これ。いいわー。

 ……は。いかん。めっちゃぷにってた。


「ごめん。行こっか」

「ええと……はい」


 とりあえず手を引かれるまま、エリーちゃんの後を着いていった。


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