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はじまり
朝でも昼でも夜でもない時間帯。
逢魔が時?
黄昏時?
丑三つ時?
時間とは不思議なもので、くっきりと境目が歪む時間帯が存在しているのである。
境目が歪む瞬間。
それは空間すらも歪ませ、いびつな生き物を作るのである。
「災い」と呼ばれる化け物なのかすらもわからないもの。
それは逃げられようのないもので、運命を告げるかのような悪のいきもの。
境目のわからない時間に歩き出す貴方は、「災い」に目をつけられてしまえば終わりになってしまう。
だって逃げられない。
必ず殺されてしまうから。
しかしそれは災害として、殺人でも妖でもなんでもないもので。日本は、知らず知らずそんな化け物なのかすらもわからないものと隣り合わせに暮らしている。
「ねぇ、今日は私の番よね?」
黄昏色の髪を三つ編みのおさげにした少女は、フラスコを揺らしながらそう言った。
「あぁ、そうだね。……気をつけてね、行ってらっしゃい。」
同じく逢魔が時の空の色を髪に宿した少年がふふっと静かに微笑んだ。
これは、そんな「災い」を倒し続ける誰にも知られない神様のお話。