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異界にて揺蕩え、デア ヴァンピール  作者: 葦原 聖
第一章 大地の洞
5/120

05 ステータス・ボード

更新しましたー。

ぜひ楽しんで行ってください。




「——うおあおえ!?」


 目覚めと同時に反射的に飛び起き、首をさする。そこは平時と変わらず、傷と呼べるようなものはなかった。


「ビビったぁ……、なんて夢を見てたんだよ……」


 首ちょんぱの夢とか物騒にもほどがあるだろ。


「ん? なんだこれ、ベッド?」


 俺が横たわっていたのはどうやら高級そうな生地で作られたベッドだったらしい。


 こんな高級そうなのなんて見たことないんだが。一体どこだよここ。


「ようやく気が付いたの。まったく、あれくらいで倒れるなんて軟弱にも程があるのよ」


「——ッ!?」


「ほとんど生まれたてなのかしら。一体何をしでかしたの」


 慌てて声の出どころを探る。すぐ隣だった。


 そこには夢の中で俺を首ちょんぱしようと黒い人がいた。


 なんでか知らないがやたらとフレンドリーだ。怖い。


「え、ちょ、え? あな、たは……?」


 俺の問いにいくらか怪訝そうな顔をするその美女。


 並みの人とは全くと異なり、そのような表情を浮かべた所でその端正な顔立ちには一点の曇りも見られない。それどころか、そうした人間的な表情を浮かべることでかえって人形じみた美しさが際立って見えた。


 見定めるように俺を見る視線が細く引き絞られる。


 ひぃっ、それ怖い。その後首ちょんぱしたじゃん!


(わたし)はミノット=フォガット。出来損ないの吸血鬼よ」





 ♦





 黒によって華美になりすぎない程度に装飾された一室。その中で部屋の大半を占める大きさを持つベッドの上に俺は正座していた。


 目の前にはいくらか年上そうに見える浮世離れした美貌を持つ女性、ミノットがその黒いタイツのようなものに包まれた細く綺麗な脚線美を持つ足を見せつけるかのように組んでいる。


 またその装いは先刻見た時の夜に溶け込むような黒のドレスではなく、フリルなどのついた美しさより可愛らしさを強調するものとなっていた。それでもやはり黒を主張しているものだったが。


「それで? お前、何やらかしたの? 生まれたてで影の国を追放されるなんて、よほどの事でも仕出かしたってことよね。エリザの奴から餌でも盗んだの? それともヴラッディに楯突いたのかしら?」


「……えっと」


 一旦落ち着こう。冷静になることはいついかなる時でも大事なことだ。


 まず目の前の妙齢の美女は何と言った?


 ——そう、己を吸血鬼と称した。


 うん、それも出来損ないだ。全然意味わかんない。


 ここはガリヴァー的な巨人の国とかじゃなかったのか?


 それにしてはこの目の前のミノットとやらは見た目は人間とそう変わらないように見える。


 まあ、ここがどこだろうとどうでもいいか。正直あっちでは息の詰まる毎日だったし。こういう非日常も悪くないといえば悪くない。


 ……でもちょっと死が近くないですかね。


 ともかく、どこに地雷があるのか分かったもんじゃない。また踏み抜いて首ちょんぱされかけるくらいなら多少話が分からなくても適当に合わせるのみ!


 影の国?エリザ?ヴラッディ?国名と人名、だよな?


「そうなんですよー、エリザからこう、ばしっと餌盗んじゃってぇ!」


 我ながら気持ち悪い喋り方になった。ていうか餌ってなんだ。

 こ、これで乗り切れるか?


「ふふん、お前面白いのね。そんな虫みたいな弱さの癖によくエリザから人畜を盗もうと考えたのよ。追放で済んでまだマシな方。まあ、あれも同族をわざわざ殺そうとしないだけの分別がついたということかしら」


「え……、あはい。それでなんかよくわかんないうちにここにいて」


「エリザの奴、嫌がらせのつもりかしら。まあ、(わたし)の邪魔をしない限りお前を殺す事はないのよ」


「あ、ありがとうございますぅ」


 お礼を言いながらも俺の内心は焦りがとめどなく湧き上がっていた。

 それに伴ってもしかしたら滝のような冷や汗が流れ出ているかもしれない。いや、俺はこれでもポーカーフェイスは得意なつもりだ!なんとか誤魔化せているはず!


 いや、ほんと待って。


 餌って、流れ的に人畜とやらか?よく分らんが人ってことなのか?


 そうか、思えばこの自称吸血鬼さんがこれほどフレンドリーに話すのだから同族に決まってる。その影の国とやらではエリザとかいうのが吸血するための餌として人間を飼っているってことか……?


 え、怖い。


 それに、同族をわざわざ殺さないってじゃあ俺は影の国での食料的な人間というわけではなくて、むしろ食べる側である吸血鬼って認識されてるって事か?


 ……いや、どういう事だってばよ。

 

 いかん、何も分からない。

 邪魔だけはほんとしませんから殺さないでえ!


「暫くここにいることを許すのよ。食料くらい自分で取って来れるわよね?」


「あ、はい、何から何までありが……」


 とうございますって言い終わる前にいなくなっちゃわないでください。


 結局どういう事なんだ。


 あ、ここから出る方法聞けばよかった。




 ♦




 さて、なんやかんやがあったが、現状はまったく進展していない。


 出口は分からないし、真彩や紗菜、天理くん、紫葵ちゃんのかけらも見当たらない。

 かといってミノットに聞くのもなんか怖い。あれは俺の事を恐らく同族と認識しているからのフレンドリーさであって他の人を見ると最初の時のように速攻首ちょんぱしてもおかしくない。


 もう殺したなんて言われるのも悲しすぎる。


 と、これからどうしようかと考えを巡らせながらベッドに身体を投げ出している時だった。


「——ん? なんだこれ?」


 突如視界に大きなウインドウが展開された。


 例えるならHMDヘッドマウントディスプレイによる拡張現実のような見え方だった。


 ロード画面のようなバーが示され、その上部には最適化中と表示されている。

 すごいメカニックだ。ゲームの一幕のように感じさえする。


「触れ、ないな……。なになに?」


 最適化中の表示が終わり、示されたのは様々な情報が長ったらしく羅列されたステータスというものだった。


 ——ゲームじゃん!


 え、ガリヴァーかと思えばそんなことなくて実はゲームの世界?


 いやそんなばかな。あの廃墟からほんと何があったんだ。


「にしても見にくい。割と自分のステータスとか気になるし、なんとかならんものか。あっ」


 そう呟いた瞬間、ウインドウが切り替わり再び最適化中の文字が現れた。

 それでも先ほどまで長くその画面が続くことなく、すぐにまたステータスの表記がされた画面へと戻った。


「おお、だいぶ見やすくなってる。どうなってるのか分からんが至れり尽くせりだなぁ——」


 名前:葉桐 琉伊(ルイ ハギリ)/吸血鬼/男

 LEV:1

 HP:最適化中/EX

 MP:最適化中/EX

 ATK:最適化中/EX

 DEF:最適化中/EX

 MAK:最適化中/EX

 MDF:最適化中/EX

 AGL:最適化中/EX

 LUC:最適化中/EX

 SP:0

 スキル;

 ・最適化中


 いや何事?


 待って待って待って。こういう時こそ落ち着こう。


 まず、あれ、俺ってほんとに吸血鬼になってんの?


 ——え?今まで血とか吸ったことないよ?


 それとも本当にミノットの言う通り【影の国】とやらから追放されて、その時の後遺症かなんかで記憶喪失になったのか?

 いやそんな事はさすがにない。もしそうなら天理くんたちも吸血鬼という訳の分からない事態になる。


 ……いや、紫葵ちゃんが吸血鬼だとやばくないか?すごい。


 まあそれはともかく置いておこう。まだ色々言い足りないけど、突っ込みたいのはそこだけじゃない。


 ステータスほぼ全部最適化中じゃねぇか!

 え、どういう事なんだよ。最適化中の画面終わったじゃん。ちゃんとバー最後まで溜まったじゃん。


 ゲームから考えると上から体力、魔力、攻撃力、防御力、魔法攻撃力、魔法防御力、俊敏性ってとこか?


 最後のはスキルポイントなのかスタミナポイントなのか分からないが、0であることを考えると恐らくスキルポイントだろうか。


 それにしても最適化中の横にあるEXの表記は何なんだ。

 一つならふーんで済むけど全部だと流すことすら出来ないぞ。バグってんじゃないのかこれ。


「結局どういうことなんだよ……。紫葵ちゃん、真彩、紗菜でも……、もういっそ天理くんでもいいから教えてください……」


 弱々しく吐き出された俺の呟きは、ほの暗い部屋の空気に吸い込まれるように霧散していった。


 誰か助けて……。




最後まで読んでくださりありがとうございます。

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