男の回心
手違いで地獄に堕とされた男が居た。
その男は覚えの無い罰を受けながら、在るべき場所に戻る機会を窺っていた。
死ぬことすら許されない連日の“裁き”に屈しかけていたある日、男の前に閻魔の使いが現れてこう言った。
「あなたを誤って堕としてしまった可能性がある。改めて精査するために本人確認をとりたい。前世での行いについて幾つかの質問に答えてもらおう」
ひとつ目の質問を言おうとした所に、堕ちた男は割り込んでこう言った。
「私は前世で様々な人間を助けて“やった”。飯を食う前も必ず『頂きます』と言ったし、毎日欠かさず『重誓偈』も読んだ。私は天国に行って当然だ」と。
閻魔の使いはそれを聞くと新たに質問をすることもしなかった。
そして男を置いて帰ろうとした。
男が必死に呼び止めると振り返ってこう言った。
「お前には地獄が相応しい」