居城に到着
リリーと色々会話を交えた後、馬車は止まり、目的地に着いた。
「うわぁ…」
俺とリリーは馬車を降りると目前の立派な城の迫力に息を飲む。
王城と比べれば確かに小さいがそれでも十分に大きい。それに管理も徹底されているようで見た目も綺麗だ。その悠然な姿はヨーロッパのノイシュヴァンシュタイン城を彷彿とさせる。
…というかこれ本当に二人で住むの?大きすぎない?
「そ、それじゃあ入ってみようか」
我に返って隣で呆然としているリリーに声をかける。
「あ、はい。入りましょう」
大層な門を開けるとまず大きな広間があった。恐らく大理石が敷き詰められていてとても綺麗な床だ。他にも派手さはないが、柱の一本をとっても白く美しい仕上がりで良質な素材を使っていることがわかる。
「こんなに立派だとは思わなかった…」
「わ、私もです…こんなに凄いお城に住んでいいのでしょうか?」
中に入っても呆気にとられる俺とリリー。
アイラさんから支給されたものだからもちろん自由に使っていいのだろうが…ここまで立派だとなんだか恐れ多い気もする。
「…とりあえず他の部屋も見てみようか」
「…そうですね」
その後俺とリリーは城を探索する形で全体を回った。キッチン、浴室、客室、寝室、書斎、図書室なんかも備え付けられていた。そしてその全ての規模が大きい。浴室なんて大浴場並みだ。
「リリー…苦労かけると思うけどよろしく…」
これだけの広さだと掃除とか色々大変だろう。
後ろめたさはあるけど、メイドである以上リリーがする仕事だ。
「お任せください!」
だがリリーは予想に反して元気な声で返事をしてくれた。
いつもの内気なリリーからは想像できない、やる気に満ち溢れている姿だった。
「…こんな仕事押し付けて嫌じゃない?」
「嫌じゃありません!ジン様のお役に立てることならなんでも嬉しいです!」
そう言って彼女は眩しい笑顔を見せてくれる。
リリーは良い子だなぁ…
リリーを選んで正解だったと思った。
「それじゃあ早速御夕食をお作りしますね」
「うん、ありがとう。楽しみにしているよ」
こうして俺とリリーの城で生活が始まった。