魔人のメイドさん
話し合いの後、アイラさんはメイドを何人か用意すると言って俺は部屋でそれを待っている。
「それにしてもメイドさんかぁ…どんな子がいるんだろう…」
TMOでは色々な種族がいた。人族以外に魔人族や獣人族、エルフや妖精なんかもいたことを覚えている。
この国、リグレシア王国は亜人差別の風習などなく、むしろ亜人種と共存している国だった。だから恐らくメイドさんも人族だけではないだろう。
そう考えると楽しみになってくる。
「失礼します。準備ができましたのでお呼びに来ました」
朝と同じメイドさんが呼びに来てくれた。
メイドさんの後について行くと大きな扉の前に来た。メイドさんがその扉を開けてくれると中はとても広く、豪華な飾りが施されているホールのような所だった。
「お待たせして申し訳ありません。こちらで家事など一通りでき、ジン様の足を引っ張るような真似はしない子を選びましたのでどうぞお選びになってください」
アイラさんはそう言って十人くらいのメイドさんを紹介する。
メイドさん達はみんな着こなしなどもちゃんとしていていかにもできるメイドという感じだ。
そして予想通り彼女達の種族も様々だ。左の方の子は犬耳が付いているし右の方の子は耳が尖っていてエルフだとわかる。
「ふーむ………ん?」
あまり近すぎる距離で凝視しても失礼だし、少し距離をとって一人一人の様子を見ていると、ある一人の子に目が止まった。
その子の特徴は、小柄な体格に透き通るような白い肌、美しい銀髪で瞳は燃え盛るような紅。
一目見ただけで彼女が魔人族だということがわかった。魔人族はほとんどの者が魔族領から出ることはないため人族の領土にいるのは珍しいが、全くいないというわけではない。
注目した点はそこではなく、彼女の様子であった。一人だけ俯いた様子でどこか他の子と比べて自信なさげだった。
「アイラさん、あの子は…」
「え?ああ、あの子魔人族の子で、孤児なのです」
「孤児?」
「はい。彼女がまだ幼い頃、雨が降りしきる日に母親の亡骸に泣き縋っていた所を保護しました。恐らく彼女の母親は魔族領から彼女を連れて逃げ出し、そして追っ手に殺されてしまったのでしょうね…」
「………」
小さい頃にそんな経験をしていたなんて…。
そう思うと俺の足は自然と彼女の方へと向かっていた。
「ねえ、君の名前を教えてくれる?」
「…ふぇ?あ、あの私ですか?」
「うん、君だよ」
まさか自分が呼ばれるとは思わなかったらしく、裏返った声で聞き返してしまった彼女にできるだけ優しい笑顔で話しかける。
「あ、あのぼーっとしててすみません!わ、私はリリーです!」
「そっか、リリーって言うんだ。良い名前だね」
慌てて返事をする少女、リリー。
失敗しても微笑ましく思えるくらい可愛いメイドさんだ。
よし、決めた…!
「ねえ、リリー。もし良かったら俺のメイドさんになってくれないか?」
「え…?私なんかが…?」
「うん、リリーが良いんだ」
そう言って後ろを振り返りアイラさんに、良いよね?と目で信号を送る。
アイラさんは何も言わずに微笑み返してくれた。多分良いってことだろう。それに恐らく俺がリリーのことを聞いた時点で俺がリリーを選ぶとわかっていたのかもしれない。
「私なんかが御主人様のお役に立てるなら頑張ります…!」
「うん、よろしくね」
こうして俺のメイドさんは内気な魔人族の少女、リリーに決まった。




