今後のこと
夜が明けて俺の目が覚めるのとほぼ同時にコンコンとドアをノックし、
「失礼します。お着替えの御用意をお届けに参りました。それと朝食の準備ができましたのでジン様の御準備が完了しましたら案内させていただきます」
と、昨日とは別のメイドさんがやって来た。
用意された服だが、見た目は薄手の生地でできていて柔らかく、それでいてどこか気品も感じるものだった。動きやすく着心地も良い。
そして俺は朝食の用意された場所へと向かう。
案内された部屋へと入るとそこは大きな1つのテーブルに椅子が並べられていて、いかにも貴族や王族が会食とかで使いそうなものだった。
それにしても、メイドさんが数人いるとは言え一人でこのテーブルを使って食事を摂るのは寂しいものだ。
そんなことを思いながら朝食を摂っていると、
「失礼します。朝食の方は満足していただけたでしょうか?」
そう言ってアイラ王女がやって来た。
「あ、おはようございますアイラ王女様。ええ、とても美味しいですよ」
「それは良かった。それと、私のことはアイラと呼んでいただいて結構ですよ」
そう言ってアイラ王女…アイラさんは微笑んだ。
「御朝食を摂り終えたら昨日できなかった話をさせていただきと思うのですが…よろしいですか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。それではまた後ほど」
そう言ってアイラさんは退室した。
俺も朝食を摂り終えて一旦部屋へと向かい、その後メイドさんの案内によって執務室…?のような所へと連れてこられた。扉を開けると、
「お待ちしておりました。それでは早速今後のことをお話しましょうか」
中で待っていたアイラさんはそう言った。
メイドさんが用意してくれた椅子に腰掛けテーブルを挟んでアイラさんと対面する。
「昨夜も言いましたが、私は…いえ、私たちはジン様に国を救っていただくことを望んでいます。大変勝手な願い事だと承知しています…ですが他に手はないのです…!どうかお願いいたします」
そう言ってアイラさんは深く頭を下げる。
王女であるアイラさんに頭を下げられ俺は慌てて、
「あ、頭を上げてください!まずはこの国の状況を教えてください。どのような危機に見舞われているのでしょう?」
そう言って話を切り出す。
「はい…ジン様も知っておられる通り、この国は大陸の南西に面していて2つの国と面しております」
それはTMOの設定と同じで俺も理解してある。確か同盟を結んでいて互いに不可侵のはずだ。
「その二国…バルジア王国とサンクリード公国と近々戦争が起こる予定です」
「えっ!?確か同盟を結んでいたはずじゃあ…」
そこまで大きくはないこのリグレシア王国が長く続いているのは豊富な鉱山資源、それを狙う他国からの防波堤となる同盟国のおかげだったはず。
「その同盟なのですが、十年ほど前に解消されまして、新たにバルジアとサンクリードが同盟を組んで我が領地にある鉱山資源を狙っているのです…」
そういうことだったのか。確かにこの国の鉱山資源は他国も欲しがっているし、二国が同盟を切って直接この国の領地を奪ってしまった方に利はある。
「国境での小競り合いは何度かあったのですが国を挙げての大きな戦というものはありませんでした。しかしバルジアが大きな戦に向け戦力を集めているという情報が入り…こうしてジン様を呼んだ次第でございます」
「バルジアと言ったら武装国家のはずでは?例え俺が来たところで太刀打ちできるか…」
「いえ、ジン様ならできます!」
ガタッと椅子から立ち上がりアイラさんは俺の手を掴んでそう言った。
「この国の窮地だけでなく各国に現れた強大な魔物をも打ち倒して来たジン様ならきっと…!」
どこか過信しているような気もするけど、まあこんな世界に呼ばれた以上引き受けるしかない。
「…わかりました。ただし条件があります」
俺は引き受ける代わりに条件を提示する。無謀な戦に挑むんだからこのくらいしてもいいはずだ。
「まずはこの国のことを全く知らないので情報をください」
「もちろんです。私が知っていることならば何でもお伝えします」
TMOの世界とはいえ千年経っているわけだから知らないことも多いはず。この世界で生きていくには情報は大事な要素となる。
「あとはお金。俺は傭兵なので契約金をいただきます。戦が終わったあとは成功報酬も」
「当然、準備はしております。早速当分の資金を持って来させましょう」
そう言ってアイラさんはメイドさんに命じた。
ここはあくまで傭兵としてのスタンスは崩さずにいこうと思う。
「それと住む場所も必要ですね。あと剣と魔法の練習ができるような場所を借りたいのですが…」
「それについてですが、申し訳ないのですが王城に滞在されることはできません。昨日は特例で部屋をお貸ししたのですが本来ならば王族と貴族のみが立ち入れる場所なので…すみません」
そう言ってアイラさんは申し訳なさそうにする。
「ですが、王城以外に良い場所があります。少し離れますが郊外に使っていない小さな城があるのでそこをお譲りしましょう。近くに山があるのでそこで剣術の鍛錬もできるはずです」
これは嬉しい誤算だ。城が貰えるとは夢にも思わなかった。
「慣れない地で一人では不安でしょうからメイドも一人お付けしましょう」
マジで⁉︎ メイドさんも一人付いてくるなんて…
「メイドについてですが…こちらで選んだ方がよろしいでしょうか?それとも御自身でお確かめになります?」
「自分で選びます!」
つい興奮して大きな声を出してしまった。アイラさんはキョトンとした顔をした後苦笑して、それでは後でお呼びいたしますね、と言ってくれた。
「条件は以上です」
「わかりました。一月後にバルジアが動き始めると情報が入っておりますので、お呼び出しの際は追ってお伝えします。不便をおかけするかと思いますが何卒よろしくお願いします」
こうして俺とアイラさんの話し合いは終わり、俺はこのリグレシア王国を救うため、本物の傭兵になることを決めた。
まだ3話目だったのにもかかわらず本日の日間ランキングに入っていて驚きました。
こんな小説をたくさんの方に読んで頂けて感謝です!