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転移した先は…

 俺を包んだ白い光は消え、気がつけば薄暗さを感じるランプが辺りを灯す、石床の部屋に立っていた。


「ようこそおいで下さいました」


 混乱…というかあまりに急な出来事で呆然としていたところに声がかけられた。

 声の主は薄い金髪で整った顔立ちの、まず日本では見ることのない美しい女性だった。


「驚かせてしまい大変申し訳有りません。ですがどうか私の話をお聞きください」

「は、はい」


 緊張のせいで声が少し震えてしまっている。


「まずは急なお呼びだしをしてしまいましたことを深くお詫び申し上げます」

「い、いえいえそんな…」


 金髪の女性は深々と頭を下げた。何が何だかまだ理解できていない状況だが、かえってこっちも恐縮してしまう。


「それでは単刀直入に申し上げます。ジン様、どうかこの国の救世主となってください」

「…はい?」


 え?救世主?何かのの聞き間違いだろうか…

 俺はどこにでもいるような大学生で確かに剣道や空手とかの武道は嗜んではいたが国を救えなんてそんな…


「すみませんが俺にそんな力は…」

「そんな…!御謙遜なさらないでください!あなたはあの『伝説の傭兵』ではありませんか!」

「いや、だからってそんな…ん?」


 ちょっと待て。『伝説の傭兵』!? なんだその異名は…


「え?『伝説の傭兵』って…」

「はい。千年前、この地に災厄をもたらした魔獣をたった一人で撃退した王国騎士団にも属さない傭兵…それがジン様ですよね?私、やっとの事でジン様をこの時代に召喚することができたのです」


 そんな凄い魔獣をたった一人で!?俺が!?

 生憎だがそんな力は持ち合わせていない…


「あの…すみませんが人違いかと…」

「いえ、絶対ジン様に間違いありません!…ちなみに魔獣の名はファイアードレイク。いくつもの街を火の海にした強大な竜です」


 …ファイアードレイク…聞いたことがある気が…というよりTMOの先々月のイベントボスだったな。フィールドが燃え盛る街で回復アイテムが欠かせなかった。何よりギルメンが誰も来なくてソロ狩りになったのが思い出だ。

 …あれ?もしかしてこの人が言ってるのって…


「…すみません、この国の名前を聞いてもいいですか?」

「ここはアルカニア大陸の南西に位置する国、リグレシア王国です。そして、申し遅れました。私はこの国の第二王女、アイラ・リグレシアです。」

「リグレシア王国…」


 完全に一致した。大陸名もこの国の名前も全てTMOと同じだ。

 確かにリグレシア王国のクエストを一番多くしていたし、例のソロ狩りもこの国の街がフィールドで間違いない。


「ジン様、どうかこの国をもう一度救ってください!」


 …どうやら俺には選択の余地は無いらしい。

 

◇ ◇ ◇


『今日は急な事でお疲れでしょう。とりあえず今夜はお休みください。詳しい話はまた明日ご説明いたします』


 アイラ王女にそう言われ、彼女に呼ばれたメイドに案内されて、現在は客室と思われる部屋にいる。


「伝説の傭兵…か」


 一人になったところで色々考えてみる。

 俺がTMOでやっていた事がこの国の歴史として反映されていると思うとなんだかこそばゆい気もする。

 しかし今まで俺が倒してきたモンスターの中には伝説級もいる。千年後のこの時代にどの程度の強さのモンスターが存在するかはわからないが、それでも語り継がれているくらいだし同程度だと考えてもいいはずだ。


「でも俺は桐生仁であってゲームの中のJINとは違うんだ…」


 この国を救えと言われ戦うとしたら、平和な日本で育ったただの大学生に何ができるというのだろうか。一人の兵士として従軍する程度ならできるが一騎当千の勇者にはなれない。


「…せめてゲームと同じ力を使えたらなぁ」


 そう独り言を呟いてベッドに横になる。


「メニューオープン…なんて開くわけ………⁉︎」


 冗談半分で言ってみた言葉に反応して現実世界で見慣れたメニューコマンドが現れた。いや、正確に言えばTMOのメニューコマンドより欄は少ない。あるのは【ステータス】と【スキル&アビリティ】と【アイテム】の3つだけだ。


「えっと…とりあえずステータス…」


 宙に文字が見えると言うなんとも近未来的な状況に恐る恐る【ステータス】指を運ぶ。


「うわっ…マジかよ」


【ステータス】が開き現れた情報は、


≪桐生仁≫

種族:人間

性別:男

年齢:21

レベル:999

職業:傭兵

称号:『伝説の傭兵』

所持金:0R

魔力:???

攻撃力:???

防御力:???


…というものだった。ほぼTMOのデータを引き継いでいる。攻撃力や防御力の欄が表示されないのは何故だろうか?まあTMOは割と攻撃力などはレベルに依存する傾向にあるからこのレベルで低いということはないだろう。

 所持金が0なのはこの国の通貨が変わったという認識で良さそうだ。単位も変わっている。それに関しては特に問題ない。きっと幾らかの金は貰えるだろうしいざとなればアイテムを売ればいい。

 

「スキルとアビリティは…こっちも全部揃ってるか…」


 TMOで入手したスキル、アビリティはもちろん、TMO内で作成したユニークスキルも引き継がれている。


「これは使えるぞ…よし、次はアイテム…」


 アイテムに関しても一般的な回復アイテムなどから伝説級モンスターから取れる素材、レア武器、防具なども全部あった。


「これがあれば戦える…」


 そうだとわかると胸が熱くなってきた。

 この世界に存在するモンスターと戦える。そう思うとなんだかわくわくする。


「この世界を知るのが楽しみだな」


 これからのことを考えながら眠りに就いた。




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