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異世界傭兵の救国記  作者: 若宮える
第1章 リグレシア王国編
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魔法の授業と緊急報告

 俺はセオドアさんに案内されか彼の研究室へとやってきた。研究室といっても広い書斎のようなものであちこちに魔法に関する書物が置いてある。


「さて……それでは早速ですがジン様の魔法を見せて頂けますか?」


 部屋の扉を閉めるなりそう言われた。


「えっ?いや、でも俺魔力制御とかできないから威力とかが……それにここ室内だし……」

「ご安心ください、ここには魔力結界が張られておりますので書物などが燃える心配もございません。それに、いざとなればこの私が止めますので」


 セオドアさんはそういってにこやかな笑顔で返答する。

 正直言って不安だが俺よりも魔法に詳しいこの人がいるから大丈夫か。

 そう思い俺は魔法を展開する。


「じゃあとりあえず初級の……『火球(ファイアボール)』!」


 燃える心配がないとわかった以上遠慮せずに、火属性の初級魔法『火球』を発した。


 順調に掌中に魔力が集まりあっという間に火の球を形成する。

 ここまでは想定通りだ。しかし問題はこの後だった。


「……えっ⁉︎」

「これは……!」


 手から放たれる瞬間に手に集中していた魔力が突如として膨張し、一瞬にして大きな火球ができあがった。

 そしてそれを自分の意思とは裏腹に前方に向けて放出してしまう。


「くっ……!」


 なんとか防ごうとセオドアさんは魔力で作った壁、おそらく『魔力障壁』を展開させて結界に直接当たるのを防ぐ。

 数秒間威力が拮抗したあと火球はその場で消え、魔力障壁も同時に砕け散った。


「ふう……。まさかこれ程までの威力とは……」

「す、すみません!」


 俺は突然のことで反応が遅れてしまったがセオドアさんに謝った。


「いやいや、私がそう指示したのでジン様は悪くありません。しかし、初級魔法でこれ程の威力が出るとは想定外でした」


 一難去って一安心した顔でセオドアさんは言う。

 彼曰く部屋に張ってある結界は上級魔法クラスでないと破壊することは難しいらしい。しかし先ほどの俺の魔法が直撃すると破壊された恐れがあるとのこと。


 やっぱり制御できない魔法は怖いな……。


 俺は自分でやったことにも関わらずつい身震いしてしまう。


「あの……俺、本当にこれを制御できるようになるんでしょうか……?」

「ええ、もちろん。この私が教えますので」


 そう言って俺を安心させるように微笑む。


◇ ◇ ◇


 それから三時間ほど経った。


「はぁ……はぁ……これでどうですか……?」

「だいぶ抑えられるようになりましたね。あとはこれを毎日続けることです」


 俺はずっと魔力の制御だけを練習していた。

 魔力制御の練習はイメージが重要らしい。身体の中にある魔力を一点に、この場合は手のひらに集中させる。……といっても先ほどのように膨大な魔力を一気に送ってしまえば暴発するだけだから魔力の供給量を制限しなくてはいけない。


 これを繰り返しながらようやく微調整ができるようになってきた。

 しかし、今はまだ一瞬の気の緩みで失敗してしまう。こればかりは日々の練習で感覚を掴むしかないらしい。もちろん、魔法に限らずそれ以外のスキルやアビリティに関してもだ。


 最強のステータスを与えられてもすぐには強くなれないか……。


 これが今の悩みではあるが最初から無双していてもやりがいは無い。むしろこういうことは徐々に成長していくものだろう。ゲームの育成のように。

 そう前向きに捉え、これからも練習を続けることにする。


「とりあえず、今日のところはありがとうございました。また何かあったら聞きに来てもいいですか?」

「もちろん、またいらしてください。いつでもお待ちしておりますよ」


 終始優しい先生として指導してくれたセオドアさんだった。


 こうして午後の魔法の授業も終わりセオドアさんの研究室を出ようとした時だった。


「失礼します! ジン様に伝令がございます!」


 一人の騎士が息を切らして俺の元にやって来た。


「これ、そんなに慌てるでない。一体どうしたと言うのだ」

「こ、これは魔導師長! 申し訳ありません!」


 セオドアさんに宥められて息を整える騎士。


「じ、実は敵の勢力が大幅に増員され、ジン様の部隊が迎撃する敵の数が5000人に……」

「5000人⁉︎」


 予定の20倍以上じゃないか……。

 いったいどうしてそこまで増えたんだ……。


「それは本当なんですか?」

「は、はい。敵国に送った間諜からの情報なので間違い無いかと……」


 どうやら確実な情報のようだ。

 しかし5000人となるといったいどう対処すればいいだろうか。

 俺の魔法だけでどうにかなるような相手では無いだろうな……。


「これ以上こちらの部隊に増員はできないのですか?」

「敵本隊も大幅な増員がされておりそちらに割ける人員はこれ以上はないかと……」


 かなり厳しい状況のようだ。

 たった20人程度の部隊で5000人を撃破? スパルタ軍じゃあるまいしできるわけが……。


 そうだ……騎士の増員は見込めないんだったら雇えばいいんじゃないか?


 ふと俺の中でこんな考えが湧いた。

 俺だって傭兵なんだから傭兵が傭兵を雇ったところで問題ないだろう。むしろ傭兵団を作ればいいかもしれない。金はかかるだろうけど。


「国の冒険者の中で腕の立つ者を兵として雇い入れても良いですか?それで部隊を形成します」

「なるほど。しかしそれはかなりの出費になるかと思いますが……」


 確かに一人雇うのに最低銀貨十枚くらいはかかるだろう。しかし、


「今はそんなこと言っていられる状況じゃないでしょう?」

「は、はい……確かにそうですね……」


 詳しい事情は後で聞くとして、とりあえず傭兵団の目処は立たねば……。


「傭兵を雇うなら冒険者ギルドに行った方がいいでしょう」

「冒険者ギルド?」

「ええ、王都には大規模なギルドがあり、傭兵も多くいます。きっと求める人材も集まると思いますよ」


 セオドアさんはそう俺に教えてくれた。

 冒険者ギルドっていうとクエストを受注するだけのイメージだったが、逆にギルドに登録した者が傭兵として仕事を探すために雇い主を探していることもあるらしい。


 そうとなったら早速明日行ってみよう。

 俺はそう決めセオドアさんと騎士に別れを告げ部屋へと戻った。

 

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