通貨のお話
国王の方で兵を選別する間、俺はアイラさんの元へ来ていた。
もちろん、理由は前金の受け取りと帰還の方法について聞くためだ。
「……これで以上ですかね?」
「えーっと……。はい、確かに」
まず俺は前金を受け取っていた。
硬貨の単位については先ほど説明を受けており、この国で流通しているリグレシア硬貨の単位はR。硬貨の種類は鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨があってそれぞれの価値は
・鉄貨=10R
・銅貨=100R
・銀貨=1000R
・金貨=1万R
・白金貨=100万R
……となっているらしい。
とりあえず今回の前金として頂く分は100万Rで、金貨ばかり渡されても使いづらいため金貨95枚、銀貨40枚、銅貨100枚で受け取った。
それぞれ袋に入れてもらって受け取るが凄まじい重さだ。金貨に至っては95枚全てを一袋に入れると持ち上げることができないため数袋に分けてもらっている。
マジックボックスあってよかった……。
「あ、そういえば聞きたいことあるんですけど俺ってどうすれば元の世界に帰れるんです?」
正直現実世界に帰ってもTMOくらいしか楽しみがないから、こっちに来てからというもの帰りたいと強く願ったことはない。むしろノーリスクであるならば長居したいとも思っている。
「あっ、すみません! 私としたことが……」
アイラさんは凄く申し訳ない表情を見せる。
まあ今すぐ帰るってわけではないから大丈夫なのだが。
「それでは帰還について説明させていただきます。まずはこの魔法具を……」
そういって片手で持てる程度の大きさの魔法具、TMOでいうマジックアイテムを受け取る。
「これは?」
「これを手にしながら強く帰りたいと念じていただくとジン様が元いた世界へと戻れるはずです」
なるほど、ワープアイテムか。
しかし試そうにもここに帰ってこれる保証は無いし……。
「ちなみに元の世界に戻ったとして、逆にこちらに戻ってくることは可能ですか?」
「こちらからもう一度召喚すれば可能です。しかしその魔法具を使用できるのは三度までとなっているのでそれを超えると帰ることは不可能となります」
上限があるアイテムなのか……。
「これは一つしかないのですか?」
「ええ、これはとても貴重なものでこの国にはそれ一つしかありません」
アイラさん曰く召喚者を帰還させる為のアイテムだから今回特別に作ったこれ一つしかないらしい。
まあ使用限度を守れば問題ないだろう。
「わかりました。あと、こちらから一つお願いがあるのですが」
「はい。なんでしょうか?」
「魔法を学べる場所、もしくは俺に魔法を教えてくれる人はいませんか?」
かねてからの願いであった魔法の使用。
これを今回で取得しておかなければ戦でも上手く役立たない。
「魔法の師ですか……。わかりました、こちらで明日までに手配しておきましょう。明日の正午にまたこちらに立ち寄ってください」
「ありがとうございます!」
どうやら願いは聞き受けられたようだ。
それにしても魔法を使えるとなるとわくわくしてくるな。
「それにしても……」
俺が有頂天になっているところでアイラさんが声を発する。
「大陸中の魔法を取得したと言われるジン様でもまだ魔法を学ぼうとするその姿勢……。とても立派ですね」
「いや、あはは……」
純粋に尊敬の眼差しを送るアイラさんに、本当は魔法が制御できなくて使えないなんて言えるはずもなく俺は乾いた笑いをこぼすしかなかった。
◇ ◇ ◇
アイラさんとの話を終えとりあえず一日が終わった。
兵の選別にはまだ時間がかかるようで、明日の朝までにはなんとかするとのことだった。
「それにしても明日は忙しくなるなあ……」
午前は兵士との顔合わせ、午後には魔法を学ばなくてはいけない。
まあ、楽しいからいいんだけどね。
そんなことを思いながら王城に滞在する間に借りる部屋に入ると、
「あっ、ジン様おかえりなさいませ」
笑顔で出迎えてくれるリリーがいた。
「あれ? リリーがどうしてここに?」
「実は王城にいる間のジン様のお世話も私がしたいと無理してお願いしてしまったんです」
どうやらリリーの希望によるものらしい。
たまにはリリーにも休んでもらいたいのだが本人がそこまでいうなら……。
「あ、でもさすがに部屋は別だよね?」
「ジン様が望まれるなら一緒でもいいですよ?」
小首を傾げて可愛らしく言うリリー。
危うく俺の理性が持っていかれそうになった……。
「いやいや、リリーだってもう年頃なんだし……ね?」
「はい……。わかりました……」
わかりやすく落ち込んでいる。
というかそんなに一緒がいいのか……。
波乱に満ちた王城の日々はまだまだ続きそうだ……。
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