王と第一王女
リリーも一緒に謁見するというわけには行かず、リリーを待たせて俺だけ謁見することになった。そして現在、俺は国王に謁見する前に礼儀作法についての説明を受けていた。
まあ、異世界から呼ばれた人間と言うこともあり完璧な作法までは求められていない。だから国王に失礼のない、最低限のことだけきいた。
「それでは陛下が謁見の間にてお待ちです。どうぞこちらへ」
騎士の一人から案内され俺はこの国の王が待つ謁見の間へと向かう。一体この国の王はどんな人物なのだろうか……。
そんな期待と不安を募らせがら歩く。
謁見の間の大きな扉の前に立つと、既に扉の前で待っていた二人の騎士が声高らかに宣言し扉を開ける。
扉が開かれた先に待っていたのは豪華な飾りで彩られ、天井にはシャンデリアがある広い部屋だった。
部屋の奥には王都思しき人物が玉座に座っており、入り口からそこまで敷かれた赤絨毯の左右には騎士が列を整えて立ち並んでいる。
俺は事前に聞いた通りに絨毯の上をゆっくり進み王の前まで来ると膝をついて頭を下げる。
「面を上げよ」
威厳のある声でそう言われ俺はゆっくりと顔を上げて王を直視する。
厳格な顔立ちであるが金色の髪と青い瞳、他にも顔の作りがどこかアイラさんに似ている部分がある。隣には恐らく第一王女が立っているがこちらもアイラさんを少し大人っぽくした顔立ちだ。
「余はリグレシア王国第十三代国王、レドワルド・リグレシアである。隣は、我が娘で第一王女であるセレナだ」
「ジン殿の伝説は何度も聞いております。どうかその武勇をお貸しくださいませ」
王の自己紹介と第一王女のセレナさんの紹介があり、紹介されたセレナさんは気品のある佇まいで礼をする。
「まず、この度はジン殿をこの国の騒動に巻き込んでしまったことを詫びよう。すまなかった」
突然の王の謝罪に騎士達がざわめく。
確かに一国の王がおいそれと頭を下げるものではない。しかし俺としては横暴な態度などではなく素直な謝罪から入ったため好印象だ。
「静まれ。今回は身勝手な理由でジン殿を呼び寄せたのだ。謝罪するのは自明の理だろう」
王が騎士達に向けて言うとざわめきは消え再び落ち着きを取り戻す。
「単刀直入に言うが、どうかジン殿にはどうかこの国を救っていただきたい。事前に我が娘、アイラからは説明があったと思うが……」
「はい。そのことなら既に了承しております。ただ、一つだけ聞きたいことがあるのですが」
「何であろうか?」
ここで俺は気になっていたことを聞く。前回聞きそびれてしまったがとても大事なことだ。
「俺は何をしたら元の世界へと戻れるのでしょう?」
俺にとっては大きな問題。
元の世界にはまだ未練があるし、二度と戻れないなどと言われたら困るどころではない。
「うむ、アイラに聞かされていなかったか?帰還はジン殿の意思次第でいつでも帰ることができる」
俺の意思次第?どういうことだ?アイラさんには聞いていないけど……。
「こちらとしても無理な願いで呼んでしまった以上、いつでも帰還できるよう処置をしたはずである。詳しい事はアイラに聞いていただきたい」
俺の疑問は残ったままだが次の話へと入る。
「では次に本題である戦の話に移ろう」
そう言って王は話を切り替える。
「余は先日バルジア、サンクリードと敵対関係にある国に訪れ、それらの国の王と会談をした」
なるほど、それで俺が来た当初アイラさんしかいなかったわけか。
「しかし、それらの国と同盟関係を結んでいるわけでもないため救援要請は却下され現在兵力は圧倒的に不利な状況にあるのだ」
案の定断られたか……。敵対関係にある国を潰すチャンスとはいえ小国であるこの国と共闘して勝てるとは思えないしな……。
「そこでジン殿には我が国の精鋭を幾人かお貸しして敵国の一個中隊を撃破してほしい」
ふむ……。一個中隊となると二百人弱といったところか……。
精鋭を借りたとしても二十人程。普通に考えれば無謀とも言える。
「ジン殿にはここで迎え撃っていただきたいのだ」
そういって王は近くにいた大臣から地図を受け取りその位置を指し示す。
周りの地形を見るにどうやら渓谷であり恐らく敵が進軍してくるであろう道の両側には高い壁ができている。
「なるほど……。この地形を利用すれば勝てなくはないか……」
先ほどは無謀に思えたが、油断している敵、地形を生かした奇襲など勝てる要素はたくさんある。
「わかりました。引き受けましょう」
それらの点から勝機を見出し俺は王に返事をする。
「おお!引き受けてくれるか!」
レドワルド国王は大層な喜びを見せる。
「ジン殿に貸し出す兵の選別は後でこちらでしておこう。それではよろしく頼む」
「私からもよろしくお願いいたします」
レドワルド王とセレナ王女の二人から改めて頼まれる。
こうして段取りが決まり戦は現実味を帯びたものとなった。




