王城へ
初戦闘から二日経ち、俺はまた山の練習場にいる。もちろんやることは決まって自分の力の制御だ。
またモンスターが現れるのではないか?と心配しこの場所に来ることを躊躇ったが、リリーに聞いたところ俺が倒したレッドベアはこの山一帯の主だったらしい。そのため縄張り争いは激化しているらしいがレッドベアが倒された場所である俺の練習場までは恐れて足を踏み入れないだろうとのことだった。
「午後から予定入ってたんだったな。そろそろ切り上げるか」
この日は例の約束の日であり午後から使者が来て王城に行かなくてはならない。
俺は急ぎ足で自宅へと帰る。
◇ ◇ ◇
家が見えるところまで来ると既に騎士らしき人物が三人ほどいた。
俺は不味いと思い全力で騎士達の元へと向かう。
「すみません。お待たせしちゃって…」
「いえ!こちらこそジン殿もお忙しい中であられるのにお呼びたてして申し訳ありません!」
こちらが遅れたことを謝罪すると向こうからも謝罪の言葉が出た。
どうやら騎士達も俺がどういった人物で、どんな用件で城に呼ばれているかをしっかり聞かされているらしい。
かなりきちんとした…というより何処と無く緊張しているかのような面持ちだ。背筋はピンと張りつめ額には一筋の汗が流れているのが見える。…というかこの人達も俺のこと『伝説の傭兵』って言われてるのかな?それ、なんかこそばゆい感じで嫌なんだけどなあ…
まあ、そんなことはまずは置いておき早めに準備をしよう。恐らくリリーが整えてくれているはずだが。
「リリー!」
「はいジン様。御準備はできております」
俺が家に入って名前を呼ぶと、俺が何を言いたかったのかちゃんと汲んでくれたリリーが荷物を用意して現れた。流石できる子だ…
今回は泊まりがけということもありリリーも同行する。
俺はリリーから二人ぶんの荷物を受け取ると自分のマジックボックスに入れる。このマジックボックスを初めてリリーに見せた時、
『こ、こんなにいっぱいの物が入るマジックボックスは初めて見ました!』
と驚いていた。
どうやらマジックボックスという物は持ち主の魔力によって収納量が決まるらしく、ここまで入るマジックボックスを持てる者は大陸でも屈指らしい。
未だに自分の能力が未知数だが今回で明らかになるだろう。
「よし、行こうか」
「はいっ!」
俺とリリーは家を出て待たせている騎士達の元へと向かう。
「遅くなりました。後は大丈夫ですので行きましょう」
「了解しました!ではどうぞこちらへ」
そう言われ騎士達が護衛する馬車の中へとリリーと共に入る。
馬車の扉を閉めると程なくして出発した。
◇ ◇ ◇
「そういえばここら辺って険しい山道だけど山賊とか出ないのかな?」
初めて我が家である城に行く時も気になったが道中に険しい山道がある。
こういったところは山賊が出たりする定番の馬車に思えて仕方がない。
「大丈夫ですよジン様」
リリーは俺に微笑んでそう言う。
「リグレシアは大変治安が良い国として大陸でも有名です。確かに賊は少なからずいると思いますが王国の騎士が護衛している馬車を襲おうなんて考える人はいません」
リリーの話だとどうやら騎士の中でも、現在俺達を護衛してくれているこの人達はエリートの部類に入るらしい。剣術はもちろんのこと、魔法も中級クラスのものは使えるらしい。
ミスティックナイトか…
俺は剣と魔法を両方使える騎士と聞いてTMOのジョブであるミスティックナイトを思い出す。
片手剣を持ちながらもう片方の手で魔法を操る。一見防御に隙があるように見えるが「マジックシールド』を展開すると攻守一体の文句の付け所のないスタイルだ。
今度それをやってみるのも悪くないな…
そんなことを考えていると、
「あ、ジン様見てください!王都が見えました!」
リリーが窓の外を指差す。
何度見てもやはり綺麗な街並みだと思う。大通りは活気が溢れているし。
その後関所を通り大通りを通過する。
リリーは街に入った時は元気だったが大通りに近づくとやっぱり喧騒が苦手なのか少々縮こまってしまう。
「やっぱり人混みが苦手?」
「はい…。一回行ってみたいと思うのですがやっぱり怖くて…」
でもリリーは俺といる時は本当に明るくて元気なんだけどなあ…。あ、そうだ。
「リリー、俺と一緒に街に行ってみないか?俺が付いていれば怖くないだろ?」
俺はこうすればリリーも憧れていたリグレシアの街に遊びに行けると思い提案する。
「えっ、よろしいのですか?」
「うん、俺も街に行ってみたいし」
俺がそう言うとリリーはぱぁっと花が咲いたような、眩しい笑顔を見せる。
「ありがとうございますジン様!」
ここまで喜んでくれると俺も嬉しい。
リリーの笑顔に癒されていると、どうやら王城に到着したらしく馬車は止まった。
護衛の騎士の一人が馬車の扉を開けてくれて俺達は降りる。
「それではこちらへどうぞ!陛下がお待ちです!」
そう言って案内する騎士について行き、俺は国王に謁見することになる。




