ナルシストに恋をする
小学五年生の時、女子なら一度はあるはずである、グループからハミられるといった些細ないじめにあってた私は泣きながら公園でブランコを漕いでた。
今思えば本当になんでそんな事でうじうじ不安になってたのかと言うような感じではある。だけど、その時の自分はなんだかとても消えそうで、こわくて、揺らいでた。
どうしようもない不安の波にゆらゆらと。
不甲斐ないという思いなのか、愛してくれる両親に申し訳ないという思いのような、自分ってなんなのか。
そんな時目の前に美少年が現れて言ったのだ。
「お前、俺のこと好きだろう?だから、遊ぶぞ」
私は、驚いて涙が止まった。
誰だ、お前は。
「ほら、さっさとこい。俺は俺のことが好きなやつをほっとけないからな」
因みに俺は俺が好きだ、と堂々と言われてしまえば、もうリアルに口が開いた。ぽっかーん、と。
だから、誰なんだお前は!と思う同時に凄いやつ来た!!!と色んな意味でドキドキした。
ヤバイやつ、と逃げても良かった。
でも、ヤバイやつとは思えなかった。私を見て大胆不敵に笑いながら堂々と自分が大好き発言したやつをみて、なんだかすっきりした思いになった。かっこいいと思った。
ウジウジと、他人から存在否定されて傷ついた私がなんだかちっぽけに思えて、自分の存在こそ一番と自分を認めている美少年は大きく見えた。
「ほら、いくぞ!!」
と言われてしまえば、たいして自分を持っていなかった私は
「う、うん!」
と流れるままについていった。
あれから五年と月日が流れた。
「るりー!!」
あの時の美少年は垣内夏稀という名前で私はなっちゃんとよんでいる。
そのなっちゃんが私の元へとくる。なっちゃんは愛も変わら美少年だった。いや、美青年になった。
「るり!」
日真るり子、だからるりとなっちゃんはよんでくれる。
「どうしたの?」
「今日も俺輝いてる!」
「うわ、うん、まぁ、ね。輝いてるのは違いない」
「だろ?あ、おはよー!みんな、今日も、俺に熱い視線送ってくんだよなー!俺ってホント罪な男!」
素晴らしく輝く笑顔ではあるし、人から視線を集めているのも間違いはない。
「いや、みんなブレないなっちゃんに尊敬してんだと思うよ」
「あ~、尊敬されるレベルってわけね?まぁ、そんなにみんな俺の顔好きなら減らないからどんどん見てくれていいよ?」
きらきらと笑いクラスのみんなを見渡す。登校してくるクラスメイトにおはようと笑いかけるなっちゃんのあだ名は
「おはよー!王子!」
おうじだった。
「ねぇ!恥ずかしくないの!?王子って、いや、日本に王子ってどうなの?」
「おはよー!おいおい、嫉妬か?見苦しいぞ!」
「してねーよ!」
こんなキャラなのにクラスメイトから嫌われてないのは確かにイケメンだから。あと、キャラに嫌味がないというか、本人が本当に心の底から自分が好きであるためいっそのこと清々しいというか。
つまり、憎めないのである。
「あ~モテる男って罪だね」
「いや、モテてはないけど」
「おいおい、嫉妬はやめろって」
そう言ってなっちゃんは大きな声でクラスメイトに叫ぶ
「みんなー!俺のこと?」
「「「大好きー!」」」
みんな朝から元気すぎる!!!
男女関係なく叫ぶ。もはやこれは我がクラスの鉄板ネタなのである。
しかし本人は本気でみんなを自分が好きだと思っている。
いや、まちがってはないんだ、それも。
ラブではなくライクって意味ではみんななっちゃんが好きである。
「るりは?」
「はいはい。好きよ」
ラブの方でね。
チャイムがなるとみんな席に座る。なっちゃんとは同じクラスだけど座る場所はそれなりに離れてた。
前の席に座っている中学からの私の親友、篠原園、園ちゃんが後ろを振り向いて話しかけてくる。
「王子、今日も元気だねー」
「いつものことだけど」
「入学一ヶ月でこの状態になるカリスマ性まじ尊敬」
あんなカリスマ性なんて、やだ。
「いや、うーん」
確かに王子のおかけでもう何年もクラスメイトだよね〜と不思議な空気側がクラスには出来上がってる。入学一ヶ月にもかかわらず。
「はじめはさ、これでもまたやっかまれんのかなって思ってたんだけど」
というと、園ちゃんは
「ないない。見た目はありでも中身はないね。ラブにはならない。」
そう言ってニヤニヤ笑って私を見たあと前を向いた。
なっちゃんとは高校生ではじめて同じ学校になった。あの時から仲は良くなって遊んでいたが区域の違いから小中は違う学校だった。
遊んでいるとなっちゃんは中身が残念さんでも外はいいからよくナンパされていた。しかし持ち前の性格で無意識に撃退させていたのだ。相手にどんびかせて。
そのたびに私は人類最強と賛辞を送った。
高校生になっておんなじ学校でおんなじクラスになって嬉しかったけど、はじめは不安だった。
とりあえず、外だけはイケメンだから仲良くしてたら漫画みたいにイジメられるのかなって。
現実はそうでもなかった。みんなわりと現実派だった。中身もある程度重視してた。
しかもなっちゃんは有名だった。ナルシストのなっちゃんって。なんか不名誉!って思ったけど、ある意味本人からすると名誉なのかもしれない。
中身残念無念と散々いってしまったがそうでもない。
自分のことを一番好きなだけでとっても優しいというかなんというか。
帰るときはいつもいいよって言ってもかばんを持ってくれるし、男女構わず重いもの運んでたら率先して手伝うし、頭いいし、勉強教えてくれるしと、ほら、やさしい。
だから、本当はモテるんじゃないかって、不安だった。
しかし、なっちゃんはさすが人類最強だった。優しさとその美貌を持ちながらも相手からの好意をラブからライクへと変える発言力は凄まじかった。
本当はいてた。入学当初なっちゃんを知らない人達の中には本気で好意を寄せていた子もいた。しかし、日に日に、話せば話すほど不思議なことにラブからライクになっていった。
なっちゃんは今日もきく。
「俺今日も輝いてるよね!るり、どう?」
「うん。好きだよ」
いつものように何気なく答えは言葉にナルシストは赤面した。
え、なんで?!
「やっぱり俺は俺が好きだ。」
周りがニヤニャにしている。
なんなんだ!
「るりが好きな俺が好きだ。だから、ずっと好きでいて?」
今度は私が赤面する。
ナルシストはどこまでいってもナルシストだけど。
そんな君に恋してる。
「なんでここで言うのかな!?大好きだけど!!!!ずっと好きでいる自信あるけど!!!」
だって、あの時から輝いて見えるのだ仕方がない。
「だって、みんな俺の事好きだから俺の輝いてるところみたいかなって」
「「「ヒューヒュー!流石王子!」」」
ほんとこのクラスは!!!
「「「姫の誕生だ!おめでとう!」」」
ふざけすぎ!!!!
「ありがとう!」
でも、大好き!