表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

後編

「私はサハラ第三騎士団長ギル=バークレーだ。その赤ん坊を渡して貰おう。」

一番階級の高そうな男が言った。

騎士だかなんだか知らないが、こんな横暴で乱暴な奴等に赤ん坊は渡せない。

「この子はこのキャベツ畑でコウノトリに託された、大事な子なのよ。あんたたちみたいな不審者に渡せる訳ないでしょ!」

「あくまで自分が産んだと言い張るか。」

産んでないっつーの。


「お嬢さん!こいつら子拐いですか?」

騒ぎを聞き付けて、祖母と小作人達が駆け付けてきた。

皆手に収穫用の鎌を構えて、交戦の構えだ。

ありがとうみんな!


(ジョシュ)「俺とお嬢さんの子供をどうする気だ!」

(私)「違う、あんたとの子じゃない。」

(ダン)「その子は俺の子だ!女房もいいって言ってくれた!」

(私)「気持ちは嬉しいけど、今その話はやめて。」

(騎士)「父親は既婚者なのか?不倫か!」

(私)「だから違うって!余計ややこしくなった!」


……やっぱりいない方が良かったかもしれない。


オギャー!と赤ん坊が泣き出したので、とりあえず我が家に行くことになった。

ちなみにコウノトリは、既に飛び立った後である。


家には長兄がいた。

「この子は誘拐された、さる高貴な方のお子様である可能性が高いです。王都に連れ帰っても宜しいか。」

騎士の言葉に、兄が無言で立ち上がる。

そうだ兄貴、こいつらを追い返せ!

「ではこれも一緒に持っていって下さい。妹の荷物です。リサ、気を付けて帰れよ。ガレルには手紙書いといたから。帰り賃が浮いて良かったな。」

鬼畜兄!


王都への帰り道、私は赤ん坊の世話係であった。

なんせ、私以外が世話しようとすると泣くのである。

私は遠慮なく、騎士らをこきつかった。

特に、最初に剣を突きつけてきた団長には、湯を沸かさせたりオムツを洗わせたりと、様々な用事を頼んだ。

「あの団長を顎で使ってる……。」

恐っ!と言う声が、団員達から度々聞こえたが、失礼な話である。


久々の王都、というか王宮で私達を出迎えたのは、次兄ガレルと次期大公夫妻であった。

次期大公妃ハスカ様が、赤ん坊に駆け寄る。

「リアム!私の可愛い息子!」

なんとこの赤ん坊、次期大公夫妻の息子であったようだ。

……ここの警備は大丈夫か?

「あの、私、誘拐犯じゃないんですけど。」

私が休暇を取った時は、まだ赤ん坊は王宮に居た筈なので、アリバイはあるんだけど。

すると次期大公ベルン様は、

「わかっている。というか実行犯はもう捕まってる。この子の乳母なんだ。」

と困った顔で仰った。

ハスカ様が、続けて仰る。

「だからこの子には、乳母が居なくなってしまったの。リアムは貴女に随分なついたのね。リサ、貴女この子の養育係になってくれないかしら?ガレルの妹なら安心だわ。」

なんと私は、将来の国家元首様の養育係になったようだ。

まさかの大出世。

……結婚が遠退いてしまった。


こうして、結婚してもいないのに、子育ての日々が始まった。

リアム様は可愛い。確かに可愛い。

が、私はいつ婚活すればよいのだろうか。

一連の騒動により失恋の傷が癒えた今、できれば婿探しをしたいんだが。

責任ある地位に就いたせいか、あのにっくき騎士団長ギル=バークレーとやらと顔を合わせる機会が増えた。

彼のせいでこうなったと思うと、つい顔を見る度文句が口から出る。

「あんたのせいで私、いつまでも結婚出来ないじゃない。どうしてくれるのよ。」

「すまなかった。責任は取る。」


責任は取る。この意味をもっと深く考えるべきであった。

今、私の隣には、正装したギル=バークレーがいる。

「汝、病めるときも健やかなるときも、その者を愛する事を誓いますか?」

神父様のお決まりの問いに、ギル=バークレーが答える。

「誓います。」

そう、私はギル=バークレーの妻となったのだ。

式には親族や同僚達の他、可愛い可愛いリアム様(3歳になった。天使!)も参加してくださった。

ギル=バークレーに抱えられて教会を出ると、上空を大きな白い鳥が飛んでいった。

コウノトリだ。


さて、その後はというと、私達夫婦は三人の子宝に恵まれた。

子供達に「子供ってどうやってできるの?」と聞かれた時は、こう答えることにしている。

「キャベツ畑にコウノトリが、運んでくるのよ。」

少なくとも、我が家においては真実である。

本編は以上で終わりです。

この後1話ありますが、短い蛇足な話です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ