体の様子がおかしいんです
昨日の夕方頃から体が凄く痒いのです。
虫に刺されたわけでもなく、アレルギーが出たとかいうわけでもありません。
ただ、赤い発疹が出て物凄く痒いのです。
なんだかわからないですが、薬を塗っても改善されません。
それどころか、逆に痒くなってくるではありませんか。
もうどうする事も出来ずに、私はボリボリと掻き毟り、なんとか今日という日を迎えました。
昨日の晩に目一杯掻いたおかげか、今朝は全く痒くありませんでした。
なんだったのかわからないのですが、私はとりあえず寝巻きから服を着替えます。
すると……
なんということでしょう……
昨晩掻き毟った体は真っ赤になっているではありませんか。
まるで血のような赤です。
よく見ると、微細な赤い毛が生えてきているようです。
ああ、とても体が熱い。
私は服を脱ぎ捨て、鏡の前に立つと、そこには真っ赤な服を着た様にしか見えない全裸の提灯鮟鱇がいるではありませんか!
そして髪の毛も真っ赤に染まり、逆立ち始めます。
この時、鈍感に定評のある提灯鮟鱇でも流石にわかりましたね。
「こりゃ今年のサンタに選ばれちまった」
とね。
こうなったらウカウカしていられません。
私はすぐに世界サンタ連盟本部に連絡。
私の住む地区の管轄案内を貰いました。
そして愛車のカイエンを売り払いトナカイさん三頭を購入。
ソリはBMWの今季一押しのモノを購入しました。
トナカイさんの負担を最大限に減らすエコタイプです。
一旦家に戻るとウェブから(ヤフ○知恵袋)先輩サンタのアドバイスを見ます。
最近のクリスマスは少子化もあるのですが、子供の強欲化によって昔より大変だそうです。
プレゼントを格納するバッグは麻のモノで、白にこだわる事は無いとの事。
強度が大切だそうです。
ややあって、本部から私の管轄区域の良い子リストと欲しいもの表がFAXで送られてきました。
なるほど、こういうシステムなんですね。
私はリストに目を通します。
普通のプレゼントをねだる子もいれば
「サンタさん、ゆきこちゃんのおパンツが欲しいです」とか言ってるマセガキもいます。
そんなおませさんには吾郎左衛門の三日三晩履き続けて黄ばみ始めたフンドシをそっと枕元に置いておきましょう。
さあ、いよいよ出発です。
私の体は、全裸なのにどこからどう見てもサンタになっております。
ガレージを開けるとBMWを繋いだトナカイさんたちがヨダレを垂らしながらスタンバイしております。
目はもうギンギンですね。
「さっさと行こうぜぇッ!サンタさんよぉ!」
と言わんばかりの顔です。
動物好きな提灯鮟鱇は頭を撫でてあげますが、がぶりと噛まれてしまいました。
今度こそ出発です。
ソリはどういう原理か空を飛びます。
それを引くトナカイはどうかというと、走るそぶりなど微塵も見せず、完全体になったセルが腕を組んでクリ○ンを見下す時の様な姿勢で浮いています。
範馬の親父さんみたいなポーズをとるトナカイさんもいますが、非常にキマっていますね。
その姿勢で、スーと進んでいきます。
私、提灯鮟鱇も手持ち無沙汰なので、ソリの上でジョジョ立ちを決めます。
三頭の腕を組むトナカイに引かれた真っ赤な全裸のサンタ。
私は麻袋の中に手を突っ込み、ばんばんと放り投げていきます。
それ! 良い子の元へ飛んでゆけ!
三時間ほど経ったでしょうか。
プレゼントを配り終える頃には真っ白な雪が降り始めました。
ああ、今年も終わるのですね。
良い子のみんな、メリークリスマス!
こうして、おませさんの枕元には吾郎左衛門のフンドシが無事に届けられ、翌朝「うわあ、ゆきこちゃんってフンドシなんだ! カッコイイなあ!」というおませな子供の感嘆が真っ白な街に響いたとさ。
めでたしめでたし。
割烹で書こうとしてたのですが、勢い余って短編になりました。
なお、作中に登場する人物、団体名はすべて架空のモノであり、現実とは一切関係ありません。
また、作者はカイエンとか乗ってません。