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「あの、そろそろ僕は仕事に戻っても……」

 顔をひきつらせながら僕は口を開いたが、どうやらクリスティアナ様たちは僕の言葉なんか聞いてはいなかった。

「庭師? 何でこんなところに?」

 僕についての説明を受けて困惑するジュリエッタ様。

「わたしが気に入ったんだもの、いいじゃない」

 と、開き直るクリスティアナ様。

「変に勘ぐる貴族たちは多いのだし、誰かに見られる前に外に出しましょ」

 と、苦い表情のジーン。


 ……帰りたい。

 僕は肩を落としてため息をついた。

 そこに、さらに。


「仕立て屋がきたわよ! ねえ、布地はどれがいい?」

 と、明るい口調の女性が扉を開けて入ってきて。

 この場にいる皆の姿に気づいて後ずさりした。

「何なの? 何かあったの?」

 そう言葉を続けたのは、二番目の王女様、キャロライン様だった。


 キャロライン様は胸元に華やかな布地を数枚抱え込んでいて、どうやらどれがドレスの布地として最適か訊きたくてここにきたようだ。

「……その赤いのが似合いそうね」

 ジーンはそれをまじまじと見つめた後に言ってから、一番華やかな赤い布地に反応した。

「あ、そう?」

 キャロライン様は他の二人の王女様と同じく銀髪だったが、くるくるとしたウェーブを描く長い髪を持っていた。

 とても華やかで、立っているだけで目立つ美女。今身につけているドレスも、三姉妹の中で一番オシャレで派手だった。

「他にも布地があるの」

 やがて、キャロライン様は我に返ったように微笑み、この場にいる全員の顔を見回して続けた。「舞踏会用のドレス、作ってもいいってお父様が言ってたし。作るでしょ?」

「そりゃ主役のジュリエッタお姉さまは作るだろうけど」

 クリスティアナ様が頭を掻く。「わたしは別にいらないけどなー」

「とにかく、皆でいきましょ! せっかくの舞踏会よ!」

 キャロライン様はきらきらとした笑顔を振りまき、ジュリエッタ様とクリスティアナ様を急かした。

 そして、僕にすら微笑みかけて言った。

「あなたが誰か解らないけど、男性の意見も必要よね。一緒にきて」

「え、あの」

 僕は慌てて首を振って、どうしたらいいか解らず、困り果ててジーンを見た。

 すると、魔術師が少しだけ強張った笑みを浮かべて口を開く。

「私はこの少年と話がありますので、どうぞお先に仕立て屋のところへ」

 すると、キャロライン様はすぐに頷いて部屋から出て行った。

「後からきてよね」

 クリスティアナ様もそう言い残して、ジュリエッタ様の腕を引きながら後に続く。

 僕がそれを見送って安堵のため息をつくと、ジーンが今までに聞いた声より一番低く言った。

「あなた、何か企んでいることあるの?」


「企んでいること?」 僕はつい後ずさる。彼が僕のほうへゆっくりと近づいてきたからだ。

「王族に近づくってことは、何か企んでるって思われても仕方ないのよ」

「そりゃ……」

 そうかもしれないけど。

 でも、理不尽じゃないか?

 近づきたくて関わったわけじゃない。元はと言えば、クリスティアナ様が……。

 僕の顔に不満らしきものが浮かんでいたのか、ジーンは少しだけその目元を和らげた。

「まあ、クリスティアナ様に目を付けられてしまったことには同情するわ。一度言い出したら聞かない性格だもの」

 ……だよね。

 僕がすぐにこくこくと頷いて見せたが、彼はさらに続けた。

「でも、国王陛下はいい顔をしないはずだわ。だって、あなた、カイト・ローズウッドの息子でしょ?」

「は? え、はい」

 カイト・ローズウッドは僕の父の名前だ。

「私はこの国に仕えてそんなに長くはないけど、前任の宮廷魔術師からある程度は事情を聞いてる」

 事情?

 僕が首を傾げていると、彼は少しだけ沈黙した後、口を開く。

「あなたは何も聞いてないの? あなたの父親はなぜこの国の庭師になったと?」

「……え?」

「その様子だと知らないのね」

「何をですか? 父が何か問題でも?」

 何となく心臓が嫌な音を立て始めた気がした。

「父親に聞いてみなさい。私も噂が本当なのか聞いてみたかったし」

「噂って何ですか?」 僕が重ねて訊くと、魔術師は笑みを完全に消した。


「あなたの父親と、この国の王妃様が恋仲だったって噂よ」

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