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某所談議

「おっと、芋が焦げるな」

 父が脳天気な声を上げつつ、石の上で焼けている芋をひっくり返している。

 それは現実逃避って言うんだよ!

「だいたい、男なら誰だって巨乳が好きでしょ?」

 ジーンはそう言いながら、騎士の一人を指差した。「あなたはどうなの!?」

「えっ」

 指を差された男性は目を白黒させながらも、僅かに口角を上げた。「やっぱり巨乳ですよね」

「友よ」

 何だか二人が握手している。

「確かに小さいよりは大きいほうがいいよなあ」

 と、アイザックも会話に参戦した。しかも、凄く真面目な表情でしみじみと。

「そっちのあなたは!?」

 ジーンはさらにイリアスに向き直り、詰め寄る。

 イリアスは一瞬、驚いたように身を引いたが、すぐに真剣な目を見せた。

「私は、適度な大きさのほうが」

 それは真面目に話すようなことか。

 皆、大丈夫か。

 イリアスは声を潜めて続ける。

「こう、手で包み込んだ時にぴったり収まるくらいの感じの」

 この人も見かけによらず変だ。

「貧乳だっていいよな」

 また別の騎士が、僕の肩を叩く。何だか必死な目つき。

 仲間意識を持たれたらしい。

 違う、僕は貧乳が好きなんじゃなくて、たまたまクリスティアナ様が!

「すまんなあ」

 父が一人で先に芋を食べながら言った。「箱に入れて育てたから、息子はまだ頭の中が子供で」

「ああ……」

「なるほど……」

 同情に満ちた視線が集まる。しかも、騎士たちに順番に肩をぽんぽんと叩かれる。

 何だよ! 貧乳だっていいじゃないか!

 僕はしばらく固まって何か言ってやろうと必死に考えたけれど、何もいい言葉が浮かばない。

「とりあえずこの子には近づかないで下さい!」

 僕はただ、門番を自分の後ろに隠して、ジーンから遠ざかることにした。

「普通、手は出さんだろ」

 アイザックが低く呟く。

「だよなあ」

「いくら巨乳でも」

「さすがに無理だろう……」

 騎士たちがそれぞれ微妙な表情で僕と門番を交互に見やる。

 その後で、ジーンに視線を向けて感心した表情を作る。

「怖いもの知らずだな」

「変わってるよ」

「有り得ないし」

 それを聞いてジーンの片眉が跳ね上がった。

「恋敵はいないわね」

「許しませんから!」

 僕は思い切り叫んだ。


 何というか、気づいたら空気が軽かった。ぎこちない沈黙や、気まずさは消えている。

 僕らはそれぞれ食事の皿を取り、色々会話をしているうちにお互いの距離が近づいていたようだ。

 自然と冗談や笑顔も出るし、雑談も色々と。

「男ってのは、基本的に単純だからな」

 父は皆の会話を笑って聞きながらも、僕にこっそり囁いてきた。

「単純すぎる」

 僕は頷きながらも首を傾げた。普通に会話できるようになったのはいいけど、そのきっかけが胸の話。どうなんだ、それ。

「しかし、門番って恐ろしいって聞いてたけど、何だか少しイメージ違うな」

 アイザックが言って、皆がそれぞれ頷く。興味津々といった目つきの彼ら。

「近寄る者全てを攻撃するのかと思ってたよ」

 騎士の一人――貧乳好きらしい青年が言う。彼の名前はコンラッドというらしい。明るいブラウンの癖毛の彼。

「それは違う」

 門番が静かに言った。「ガラムの子を攻撃するやつだけ殺す。あなたたち、味方」

「味方で良かった」

 別の騎士――ジーンの心の友になったらしい、ウェルズが笑った。「しかも女性だし。でも、いざという時は変身するんだろ?」

「そう。目立つから今はあの姿は禁止と言われた」

「当たり前よ」

 ジーンは苦笑した。「あんな格好じゃクランツに入る前に大騒ぎになるもの」

 そう言ってから、彼は少しだけ表情を引き締めて、門番を見つめ直す。

 門番は相変わらず表情がない。

「そう言えば、疑問があるの。あなたは多分、子供の頃に仲間の門番たちを失ったはずよね。クランツ王国の馬鹿な王が、あなたたちを襲って皆殺しにしようとした」

「わたし、子供だった。よく覚えてない」

「でしょ。貧乳好きなシリウスが赤ん坊の時だったみたいだから、あなたは3歳とか4歳とか、その辺りかしら」

 いい加減、胸の話は忘れてくれないだろうか。

 僕は二人の会話を聞きながらため息をつく。

「そんな子供なのに、役目とか色々詳しいわよね? 誰に教えてもらったの?」

「教えて?」

 門番が首を傾げた。「誰も教えない。ただ、解る。門番はみんな、そう」

「どうして?」

「門番、生まれながらにして知ってる。門とガラムの子を守る。そのために生まされる」

「生まされる?」

 僕がつい、口を挟んだ。「そう言えば、子供を作るって……」

「それが罰だと知ってる」

 彼女は真っ直ぐに僕を見つめ、淡々と続けた。「過去、悪いことをした。だから、罰を受ける。門番、生まれながらの罪人」


 辺りに落ちる沈黙。


「それ、何だか嫌な感じだよ」

 僕はやがて口を開く。「君は何もしてないのに変じゃないか」

「でも、仕方ない。そういうように生まれた」

 しかし、納得できない。自分がやったことでもないのに、罰を受ける。それはおかしい。

 しかも、そのためだけに子供を作る? 絶対おかしい。

「せめて、愛のある子作りを」

 気がつけばまたジーンが門番の手を握っている。

 手が早すぎるぞ、変態!

 僕はまた彼の後頭部を叩いたが、ふと、ジーンの様子が変わった。

 何か驚いたように振り向き、その顔色が僅かに白くなった気がした。

「……そんな強く叩いてませんが」

 僕が戸惑いながら言うと、彼は鋭い視線を僕の右手に走らせた。

「ちょっと、右手を見せなさい」

「え?」

「いいから!」

 彼は乱暴に僕の右手首を掴み、その目を細めた。

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