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困惑

 僕は食事を続けながら、セーラたちの様子を眺めていた。

 広い厨房の中はだんだん慌ただしくなっていく。

 たくさんの料理人たちが出たり入ったり、城の召使いたちも出たり入ったり。

 やがて、料理長の年配の女性が、舞踏会に出すメニューの内容だったり、食材選びだったり、料理人たちと相談を始めた辺りで僕はそっと厨房を出た。


 そのまま庭園に出て、色とりどりの花が咲く花壇へと近づくと、そこには誰かが立っていた。

 多分、召使いの一人だろう。背の高い男性で、僕の気配に気づいたのかすぐにこちらを見て声をかけてきた。

「庭師か」

「はい」

「舞踏会があることはきいているか」

「はい」

「会場を飾る花を準備しなくてはならない。棘のある花は棘を取ってもらうし、花が足らなければ街に注文を出したい。後でまた相談しよう。君はここに住み込みか?」

「いいえ、街の外れにある家に住んでいます」

 僕がそう応えると、彼は少し考え込んだ。

「分かった、もし時間が足りないようなら寝る部屋も準備するようにしよう。まずは、花の手入れを頼む」

「はい」

 彼はそのまま足早に立ち去っていった。結構偉い立場の人なのかなあ、とその背中を見送りつつ考えていると、背後からまた別の声が飛んできた。

「あなた、名前は?」

 快活な女の子の声。

僕はすぐに振り返り、彼女の顔を見る前に膝をついて頭を下げた。「シリウス・ローズウッドと申します」

「顔を上げていいわよ」

 少しため息混じりの声が降ってくる。

 僕はそっと頭を上げて彼女を見上げた。

 そこには、まっすぐな銀髪を背中に垂らし、淡い水色のシンプルなドレスに身を包んだ少女がいた。

「堅苦しいのはキライ」

 彼女はそう言って、身振りで僕に立ち上がるように促した。

 僕はこんな間近で彼女を見ることは初めてだったし、もちろん話しかけられるのも初めてだったから困惑していた。

 彼女はこの国の王女だ。

 ただし、三番目の王女。クリスティアナ・イスガルド。それが彼女の名前。

「ねえ、ここにはメリルという花はあるの?」

「メリル?」

 僕は立ち上がって身を正していたが、それを聞いて少し眉をひそめてしまっていた。

「お姉さまが舞踏会って聞いて、すごく緊張してるから。その花、人の緊張をほぐす効果があるんでしょ?」

「ああ……」

 なるほど、と思った。薬草に詳しい人間なら、その花の名前を知っていてもおかしくはないと思う。

 でも、ここにはメリルは咲いてはいない。

「残念ながら」

 僕は首を横に振った。

 メリルは確かに緊張をほぐす効果があるとは言われているが、薬師が煎じてからではないといけない。

 あれは一応毒花に属する植物だから。

「じゃあ、買ってくる。売ってるところ知ってる?」

 クリスティアナ様は無邪気に笑う。


 困った。

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