序ノ章ノ『四』
『おや、お兄さんまた当たってるねぇ。』
「マジで!?やった!!この宝くじ当たるような気がしてたんだ。」
『あれ、こっちのも当たってるねぇ。』
「うおっしゃぁぁぁ!!!」
俺は、昔からカンがよかった。自分が当たると思ったら当たっていた。
今のように宝くじだって、応募した懸賞だって、アイスだって、それに、当てクジや射的、他にも輪投げ等々。数え切れないくらいだった。
最近じゃ能力者が生まれてるくらいだから俺も能力者なのかもっておもったけど、こんな能力があるわけないと思った。ただ俺はカンがいい。そう思っていた。
「ふんふんふふーん♪」
俺は宝くじが予想以上にあたり機嫌が良かった。そのときだった。
『キキキキーーーーーッッッ!!!!!ドン!!!』
目の前を何かが通りすぎた。車だ。暴走しているのか?車はまだ普及して間もない。きっと操作ミスをしたんだろう。
車が行ったほうを見ると、人が倒れていた。周りには血だまりができていた。
『きゃああああ!!!ひき逃げよーーーーー!!』
近くにいた女の人が叫んでいた。ひき逃げ!?嘘だろ!?近くに駆け寄る。
どうやら女の子のようだった。まだ高校生ほどに見える。その子には意識がなかった。
「おい!救急車は!?もう呼んだのか!?」
俺は近くにいた人に聞く。
『いや、呼んだんだが、ここら辺は道が入り組んでいて、入ってくるのに時間がかかるらしいんだ。』
「はぁ!?マジかよ!?そんなんじゃ間に合わねーよ!!おい!ここらで一番近い病院は!?」
『た、確か、帝都第四病院が一番近い筈だ・・。』
「帝都第四病院だな!?わかった!この子は俺が運ぶ!」
「・・はぁ、はぁ。」少女を抱えて走って約15分ほど走っただろうか。やっと病院が見えてきた。
「おい!ひき逃げだ!すぐにこの子を治療してくれ!」
病院内に入ってすぐ俺は叫んだ。直後院内がざわめいた。程なくして、医者と看護士が数名こちらにやってきた。運ばれてきたストレッチャーに少女を乗せ、俺は医者に全てを話した。
そのまま、少女は緊急手術となった。手術の直前俺は、意識のない少女の手を握って呟いた。
「大丈夫だ。お前は必ず死なない。」
そう言った後少女は運ばれていった。手術は約2時間後に終わった。出てきた医者が俺に告げた。
『あの子は助かりましたよ。奇跡と言っていいほどです。きっとあなたの想いが通じたんでしょう。』
「本当ですか!?助かったのか・・・。良かった・・・。」
とりあえず少女が助かったのを確認した俺は帰ることにした。服にも少女の血が大量に付着して着替えが必要だったからだ。
数日後、俺は再び病院に足を運んだ。少女のお見舞いだった。部屋に着くと少女はもう意識があるようだった。そして、俺に気づいた少女がこちらを見て軽く会釈をした。
『あなたですよね?私を助けてくれた人って。』
「ん?ああ、そうだよ。山吹順平っていうんだ。君は?」
『私は遠野日奈子といいます。』
「よかったな。助かって。」
『はい。でも先生が言うには奇跡だって。きっとあなたが絶対助かるって言ってくれたからって言ってました。』
「奇跡なんかじゃないよ。きっと君が強く生きたいって思ったから助かったんだよ。」
その後俺と日奈子はお互いのことをたくさん話した。あの日、日奈子は友人のところへ向かう最中だったそうだ。そして日奈子はやはり学生だった。帝都大學付属女子高等学校3年。
しばらくして俺は病室を出た。ロビーに来たときふと声を掛けられた。
『よかったですね。彼女助かって。』
「ああ、本当だよ・・・って、誰だお前!?」
話しかけて来たのは見知らぬ男だった。
『知ってましたか?彼女が助かったのはあなたの能力のおかげなんですよ。』
「はあ?何言ってんだ。俺には能力なんかないぞ?」
『あるじゃないですか。言ったことはかならず当たる立派な能力が。』
「・・・嘘だろ。これが能力なのか?俺はただカンがいいだけだろ。」
『いいえ。能力なんですよ。そして、あなたにはお願いがあってきました。』
「お願い?なんだ?」
『私と一緒に政府へ来てください。あなたのその能力を政府のために使ってほしいんです。』
「政府のため?たとえばどんなことだ?」
『たとえばあなたが助かると言えば、救える命がいくつでもあるんですよ。今回の彼女のようにね。』
「そうなのか?わかった。そのためならあんたと一緒に政府へ行こう。」
『ご理解いただき感謝いたします。』
俺は能力者だった。人を助けるためならいくらでもこの能力を使ってやる。