表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノンヒーロー/アンヒロイン  作者: Iso Rock
第一話 打倒!正義の味方
7/64

―chapter5 いよいよ戦闘開幕―

 舞台は、不景気で人の入らなくなって潰れた遊園地。普段は閉鎖されて人っ子一人いないが今日は違う。そこには、戦闘コスチュームに身を包んだ俺とシニードリン、俺たちの敵――アーマーズらの姿があった。

 アーマーズは、鎧の色に合わせてコードネームが、リーダーのレッド、グリーン、ブラック、イエローとなっている。

「よく来たねぇ。アーマーズ。怖気づいて今日は来ないのかと思ったよ」

 すっかり女幹部モードに入ったシニードリン。完全に役に入り込んでいる。

「何言っているんだよ。いつも負けているくせして」

 毒を吐くのは緑色の鎧をしたグリーン。

「い、今までは本気出して戦っちゃダメだっただけなんだから」

 すぐ、本名の白谷銀子としての素が出てしまうシニードリン。安い挑発に乗るなよ。

 負けてばっかりだった彼女の名誉のために言うと、確かに大総統からは、普段は敵に本当の力を悟られないよう幹部連中は、力を押さえ怪人を利用し本当の力を隠して戦ってきた。

「ふん。どうせ戦ってみれば分かるさ」

「こらっ、むやみに相手を煽るなグリーン」

「分かったよ、リーダー」

 レッドはリーダーらしく、まともだった。

「ところでなんなんだい? 端っこのピンクは新入りかい?」

 アーマーズは全部で四人。ところが今回はピンク色の鎧をまとった五人目がいた。

「そうさ! 俺たちの新しい仲間だ!」

「お初にお目にかかります。私は新人のピンクといいます」

「ピンクは初出撃で経験も浅いから、今回は前線には出てこないないけど、俺たち一番の注目株さ」

 レッドは新人を誇らしく紹介した。

「ボク思うんだけどさ、シニードリン。相手をするのはそこの戦闘員と君だけかい? さすがに四対二は、正義の味方的に両親が痛むんだけど」

 いつも寄って集って四対一で怪人をボコるお前たちが言うな、と言いたいくなる質問をイエローがふる。

「いつも、四人がかりで倒怪人を倒しているお前たちがそれを言うのかい?」

 あ、シニードリンが、自分が思っていたのと同じ質問を返した。

「質問を質問で返すのかい? まあいいけど。だって僕たちいつも、その前に三十人がかりで戦闘員に襲われていたしさ」

「それはもっともだ」

 イエローに、聞けば納得できる返答を貰い、俺はポンと手をうった。

「ここは、フェアに二対二で戦うというのはどうだろうか?」

 レッドが嬉しい提案を持ちかけてくれる。正直、俺は四対二はいくらなんでもきつ過ぎると思っていたんだ。

「そんなのもちろん断わ――モガモゲモゴッ!」

「しますします! ぜひお願いしますレッドさん」

 シニードリンがせっかくのチャンスを不意にしそうだったので、慌てて口を押えて俺はOKを出した。

「そこの戦闘員、話が分かるな。一人は俺が出よう。あと一人は……ブラックお前はどうだ?」

「―――――――」

「そうか、今日は遠慮しとくのか。思えば、お前とシニードリンじゃ、やや相性が悪いか」

 え? ブラックってなんかしゃべったの? 黙っていたようにしか見えないんですけど!?

「それだったら、イエロー。お前がでないか?」

「ええ〜なんで? って思ったけどそれもそうか。グリーンの力の方がもっと相性が悪いし、ピンクは入ったばかりで心配だもんね。それなら、ボクが出るよ」

 アーマーズから戦う二人が決まったところで、ようやく臨戦態勢に入ることができる。

 俺たちは、隙を窺うためにしばらく睨み合って緊張が高まっていった。

 動いてもいないのに、自然と顔には汗が吹き出てそれが身に入る。お互い顔は、仮面に隠されて分からないがおそらく同じだろう。

 張りつめた空気を破って先に動いたのは相手側だった。

 レッドは俺に拳を放ちながら、イエローは俺に蹴りを放ちながらそれぞれ向かって行く。――って、どっちも俺かよ。

「「各個撃破だ」」

 消耗の少ない相手を先に潰しておく。それは、正しい選択だけどもさ!? 結局、複数人にボコられることには変わりない。

「こなくそー」

 シニードリンとの特訓の成果が発揮され、俺は咄嗟に、レッドの拳は弾き、イエローの蹴りは足を捕まえて攻撃を捌くことができた。

「ちょっと。私がいること忘れてないかい?」

 俺の捕まえているイエロー目掛けて、シリードリンの鞭が飛ぶ。

「よっと」

 それをイエロー自身の体を軸に一回転し、避けてしまう。

 ついでに、もう片方の自由な足俺を蹴り飛ばして、俺のホールドを解いてしまった。

「気を付けろ! そこの戦闘員は結構やる。相手は一筋縄ではいかない」

「ああ、分かっている。ボクたちも、もう本気を出そう」

「そうだな」


「「リアライズ」」


 二人がそう叫ぶと手元が光だして、光が収束したいった後には、先ほどまで素手だった相手は武装していた。

 レッドは真っ赤な炎が漂うグローブを、イエローは柄の長い細身のハンマーを手にしていた。

 バーンフィスト、プラズマハンマー、それが武装の名前である。

 バーンフィストはその炎で殴った相手を焼きつくし、プラズマハンマーは華奢な見かけと裏腹な破壊力と電撃をまき散らす。

 どちらもまともに喰らえば、お陀仏ものの威力を秘めている。

「簡単にはどちらも削れない。作戦変更でイエロー。お前は戦闘員を叩け!」

「わかったよ。それっ!」

 ものすごい速さで振り下ろされるハンマーから、俺は大目に距離を取った。

 振り下ろされたハンマーが地面に当たった時、俺は恐ろしさを改めて知った。

 まず、まるで杭落ち機を使ったかのような轟音が耳に届き、続いて目の前が眩しい明滅を繰り返しす。光が収まった後には、直径五メートルはあろうかというクレーターが出来上がっていた。

(ヤバいって、これ当たったら、死ぬどころか、死ぬを超えてしまうって)

 脂汗の止まらない俺に残った選択肢は、回避行動しかなかった。

「こらー。ちょろちょろしないでよ。これじゃ、サクッと殺れないしょ」

 サクッとやられてたまるか、俺は必死で避けて避けて避けまくった。

 でも避けていくうちに次第にハンマーの速度に目が慣れて、余裕がほんの少しだけど生まれてきた。

 タイミングは一瞬しか見えない。それはハンマーからの電撃が止んだほんの一瞬の隙。

 ここだ。

 まだ電撃で眩しい中、俺はあえてイエローへの特攻を試みる。

「そんな!」

 視界が晴れた俺の目の前には、ハンマーを振り上げる最中のイエローが狼狽していた。

「もらった!」

 俺は全ての持てる力を掛けて左ストレートを繰り出した。充てる場所は右腹部、レバー。

 拳がイエローのなよっちく薄い胸板に到達し、その感触が最初に届いたときだった。

 ――ぷよ。

 拳に妙な感触が伝わり慌てて引っ込めてしまう。

 相手の胸にほとんど入っていない状態で拳を引っ込めたので、効いてないはずなのだがイエローは胸を強く押さえていた。いや、まさかそんな! だって自分のことボクだっていって、それに胸だってそんなに……。

 最初はイエローの反応の意味が分からなかったが、遅れて思考が事態を理解し始め、俺は悟った。


「お、お前、男じゃなくて、おおお、おん――」

「AAAで悪いかーーー!」


 言ってもないことでキレたイエローが、ハンマーを放り出し、俺は顎先に強烈なアッパーカットをお見舞いされた。

 マズイ。今ので意識が半分持っていかれた。

「アレきついんだよなー。イエローに胸の事は禁句だぜ」「そうですよ。私もよく目の敵にされるんですから。私は普通なのに……」「――――」

 呑気な外野はブラックみたいに黙っとけ。


「あーくーじぃぃぃぃぃぃいいい!」

「へべれけっ!」


 泣きっ面に蜂、踏んだり蹴ったり。弱っているところに、今度は味方のシニードリンから容赦のない攻撃される。半分残っていた意識から、さらに大部分がもっていかれた俺はもうフラフラだ。

「ドサクサに紛れてなななななに、お女の、むむ胸を揉んでいるだい!」

 揉んでねえよ! ただの事故だよ!

「女の敵だなー。……死ねばいいのに」「サイテー」「――――」

 勝手な外野二人は、俺に軽蔑を送ってくる。ただ黙っているだけのブラックからも同様の視線が伝わってきた。

「あなた、本当は女なら見境が無いんじゃないのかしらねぇ! この! この! この!」

 シニードリンがピンヒールで繰り出すストンピングは、一撃一撃が必殺級の威力を伴って俺を襲う。

 たちまちボロ雑巾のようになっていく俺を見たアーマーズは……、


「「「「「うっわぁ!」」」」」

 

 見事なまでのドン引きだった。 

 というわけでまだ戦闘は続きます。

 最後がギャグテイストなのはそもそもこの話は、ジャンル的にはバトルものではなくコメディー寄りの作品のため、そちらを順守した結果でした。

 それではまた明日。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ