―chapter8 今回の後日譚―
イエローは俺が気絶している間に、捺香と一緒に帰っていった。
銀子は「大丈夫だから」と言ってくれたが、正直な話捺香が何時チクるんじゃないかと不安な日々を過ごした。結局、不思議なことにいくらたってもウチにJUNASの手が来ることはなかった。
これはこれでよかったことなのだけど、いろいろ心を構えていただけに納得いかなかった。
――そんでもってパッと時間は飛び、さらに数日後。
俺はアトスの生み出した新たな怪人サーベルライガーと共に、襲撃の任務に出ていた。
襲撃の最中に案の定というか、お決まりのごとくアーマーズが立ちはだかって戦闘に入った。
格段に連中はレベルアップしていて、銀子が倒したときのことが遠い昔の様に感じられる。
スピードー・パワー・機転、全てにおいてが以前戦った時と比べて別人の様に変わっていて、俺たちは成す術なくフルボッコにされている。
中でも特に厳しいのがイエロー。
前は俺と他の戦闘員の区別がつかなくて手当たり次第に無差別に襲っていたのだが……。
「見つけた! 山田アクジはそこか!」
「うわっ! どうしてここに居るのがバレたし」
理由は不明だが、索敵能力が俺専門に特化していた。
「イエロー! お前、さっきからただの戦闘員相手に執拗すぎるだろ。もう今回の怪人サーベルライガーは、お前らに敗れて撤退しちまったぞ」
「つべこべ言わず、大人しく掴まってろ」
「いつまでもこんなところ居られるか! 俺は逃げるぞ!」
「あっ、待って……」
これから俺は出撃の度に粘着的にイエローに狙われるハメになるのだった。
「ふい~、えらい目に遭った。ただいま~」
雑魚戦闘員が、パワーアップ正義の味方に粘着的に追いかけられるという恐怖の鬼ごっこを生き抜き、アフターファイブ(死語)の心休まる空間に戻って来ることを叶えることができた。
「靴が多いな、それに家の奥から黄色い声がする。銀子とか捺香とかが来ているのか?」
靴を脱ぐ際に玄関に並べられた他人の靴だと思われるものが一……二……三? 思っていたよりも余分にある。
きっと家族のうちの誰かのお客だよ。きっとそう、きっとそうに違いないんだよきっと。
「…………」
原因不明の嫌な予感がするようなしないような。
「用心はしておこう」
自分の家なのにソロリと靴を脱いで、抜き足差し足忍び足と声の聞こえる方へ向いて歩いていく。
「やあ、山田アクジ。お邪魔しているよ」
「こんにちは、アクジさん。今日はルカちゃんと一緒に来ちゃいましたけど、いいですよね?」
「あくじの周りに女の子の影がまた増えてる……」
――スー、パタン!
いますぐ見なかった事にしたい。ここはどこだっけ。
慌てて玄関へ走って行き、表札を確認。うん、俺の家……だよな? 間違えて他の人の家に入ったんじゃないよね。
なんだ、やっぱり幻覚だったんだよな。
部屋に戻ればきっと幻覚も……。
「住んでいる家なのに、走って出て行ってどうしたの?」
「まだ用事が帰る前に残っていたんですか?」
「人の顔を見るなり逃げるなんて失礼な」
消えてくれなかった。何度も目をこすって確認しても、目の前のイエロー(今は変身していないから久瀬ルカか)が居る。見間違いであって欲しかった。
イエローこと久瀬ルカは、ヒーローにあるまじき剣幕でズズイっと寄ってきて、
「ボクは捺香の親友として、悪人のお前がルカを泣かすようなことにならないように徹底的に監視してやる。安心しろ。公私混同はしないほうだ。まだ善良な一市民としている間は、事を起こそうなんて思わない。でもそうでないないときは……分かるな?」
ルカの鋭い目線が、俺の背筋を凍らせる。キリキリと、まるで千枚通しで突かれているかの様に胃が痛んでくる。
こうして俺の受難は一層、難度を増していくのだった。
作者は悪堕ちが好きなので、一時はそういった展開も考えてはいたのですけど、今後の展開や面白さを考えてみた結果あのように落ち着きました。
今回オチまでが、かなりのハードランディング(※飛行機とかが急な角度で着陸すること。かなり危険)だったので、いろいろと思うところがありました。作者自身が作品の事を実際に悪く言ってしまっては、本当の作品が意味で終わってしまうと考えているのでこの場では言えませんが、このことは次回へ持ち越して改善しようと思います。
あっ、皆さんの方は遠慮なく感想で悪い点を書いてもらって構いません。感想は最後まで読んでくださった読者の、正当な権利ですからね。
具体性のある意見ほど、作る側としては採用がしやすいです。
次回の第三話ですが、前回もお伝えした通り、まだ全然着手されておりません。方向性としては今回はシリアスとかが多めだったので、次回はもっと明るい話にしようと考えております。
まだ投稿予定は未定ですが目途が立ち次第、次回予告としてお知らせしよます。
でわまたさらば!




