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ノンヒーロー/アンヒロイン  作者: Iso Rock
第二話 衝撃!明かされる組織の野望
22/64

―chapter5 戦闘員、乙女の寝床で正義のヒロインとラブコメをするの巻―

 外はさっきからずっとから騒がしく、雷鳴が鼓膜をつんざかんばかりに喚いている。雷の音は苦手だ。その音が鳴る度に、ボクの身はビクついて仕方がない。

 用意された部屋に捺香とシニードリンの女三人で寝ることとなり、ボクを除く他二人は既に熟睡していた。

 やはりここは悪の住家だ。敷かれた布団に包まって、気疲れで心身を共にグッタリと預けた。

 アクジの母だという人物はボクを捕まえるなり、着せ替え人形とでも思っているらしい。無理やり色んな服を着させては、キャーキャー騒いだ。どれも裾が長かったり、ヒラヒラしたりしていて動き辛いことこの上ない。アクジの母は、ボクが嫌そうな顔をしていようと表所が変わることは無かった。

 しかもこれが、どれも気味悪くなるぐらいにぴったりのサイズで(しかも、胸囲の部分まで)、見た感じではアクジ一人しか子供がいない様子なのに、若い子向けのい女物の服がある所も不気味だ。

 捺香はシニードリンはこれに対抗し、結託してドレスアップに燃えて(これまたどういう訳か、山田家にサイズぴったりの服が置いてある)負けじと着飾った。

 ボクは、敵の家にいるは、敵のみならず友人からも敵視されるは、アクジの母親が着飾った女子を見る度に歓喜の声を上げるはで落ち着くことなど無かった。……いや、敵地で落ち着くなんて元よりするつもりないんだけど。

 絶対にこれはアレだ。僕の精神を削らせて疲弊したところを内心ほくそ笑んでいるに違いない。流石悪の手先、汚い!

 でも思ったよりも連中が抜けていて助かった。タイミングが悪くて使う機会が無かったけど、ずっと前からこんなこともあろうかと忍び持っていた発信機を使うことができる。

 今までは敵の本拠地だったりして、場所が分かっても救出が難しい場所だったり、もしかしたら救難信号を傍受される懸念があって使うことができなかった。でも、ここなら捺香でも気楽に来れるような場所だし、見たところ何の変哲もないただの民家だ。

「やっと元の場所に帰れるから。捺香」

 私の隣で、すやすやと穏やかな寝顔を見せている捺香を見つめて、帰還できるまであと少しといった所に気を引き締める。

「しっかし、コイツも油断しきっているなぁ。監視しないといけないんじゃなかったのか?」

 その捺香に抱き着いて間抜けな寝顔をさらしているシニードリン。手足を捺香の体に巻きつけてギュウっと抱きしめており、はた目から見ると非常にアレな光景に見える。

 シニードリンのやつ、少しの間寝たふりをしたらすぐに寝落ちしてしまった。

「アイツらボクを本当に捕えておくつもりがあるのか?」

 今までの行動といい、色々と考えが掴めないことが沢山あった。こいつらの本意はどこにあるのか……。

「銀子が寝ているのは、俺を信頼している証拠なのさ」

「おわっ!? ……お前か。驚かすな! そして女子の寝室に忍び込みとは何事だ」

 暗闇の中に稲光と共に浮かび上がったアクジに思わず悲鳴を上げる。普通に怖かった。

「人の顔を見るなり悲鳴とは、失礼な奴め。俺だって傷つくんだぞ」

「あ、ごめんなさい」

 正義の味方の本能で、相手を傷つけたことに対してうっかり素で誤ってしまったが、考えてみたら寝込みの女子のいる部屋に忍び込んでいるアクジの方がやっぱり悪かった。

「あー、そのー。……本当に謝られるとは思わなかった」

 女の子の寝床にいたことに、罪悪感は会ったらしい。アクジは逆にこちらが謝罪したことに戸惑っている。お陰でこっちまで変な気分になってくる。

 ――――ピッッッシャァァァァアアアア!!!!

「うきゃあ!」

「大きい音と光だな。この様子なら近くに落ちたんじゃないか」

 不意に眩しいほどの稲光と空気を割るような雷鳴が目と耳に飛び込んできて、私は思わず布団の中から跳ね起きてしまう。

「随分と可愛い悲鳴だったけど。それにしてもお前、……雷を扱うくせに怖いのか?」

「うるさい、あれはそうなるって分かっているからいいんだ。それに比べて雷は、誰だって不意に大きな音と光がすればビックリするだろ。だから決して怖がっているわけじゃなくて……」

「はいはい分かった、分かった。落ち着いたようなら離れてくれないか?」

 目の前だったアクジの声が、何故か耳元で聞こえてきたので改めて自分の状況を確認すると、ボクは目の前にいたアクジに抱き着いていた。

「!!」

 どうしてボクがこんなことを……。驚いて、思わず誰かに付きたくなるなら、普通この場の中で一番安心できるのは捺香だろ。どうしてよりにもよってこんなやつなんかに……。

 あまりの驚きに、ところ構わず抱き着いてしまった自分が不甲斐なくて情けない。

「こ、こここここれは動揺していたただけだ! 勘んん違がいすんなよ」

「分かったから、まずは落ち着け。な?」

 アクジが両肩を優しく掴んで、ボクをゆっくりと引き剥がしてなだめてくる。

 気持ちは嬉しいけど、敵に慰められるのは癪だ。それにアクジに話しかけられる度に、胸や背中がムズムズしてくる。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

「おい待て、走るなって!」

 とうとうボクは憤りを感じる心に耐えきれなくなって、心の衝動のままに走り出す。ドコに走りたいなんか分からない。

 ――バキ!

「ドアがこうもあっさりと! 生身なのに、あいつは化物か!」

 鍵のかかった部屋のドアを、体当たりで突き抜け私はそのまま走る。

 この時の私は、捺香がまだ山田家に取り残されていることを失念していた。下手なことをすれば、残された捺香が危ない目を見ることなんて分かっていたのに。

「……ハアハア。待てよ! ……あっ! 逃げられた」

 廊下を走っていると追いついたアクジに、一度は体を掴まれたものの火事場の馬鹿力のせいなのか、すぐに振り解くことが出来てしまった。

 暴走してしまっていたボクは、玄関を目指して一直線に突き進む。

「止めてくれ。今、お前は外に出たら危ないんだぞ!」

 後ろの方でアクジが何やら騒いでいたが、暴走していた私には何も耳に入って来なかった。

 外では相も変わらず雷がとどろいている。

 玄関を開けて家の敷居を超えたその瞬間!

 落ちた大きな雷によって、ボクの視界は真っ白に塗りつぶされた。


  *  *  *  *  *


 眩しい稲光が引くと、そこには気絶したイエローを抱えるニョルズがいた。

「どうしてお前がこんなとこに……。そいつを離せ、大事な身柄なんだ!」

「お前みたいな底辺ごときが、よくも生意気に僕みたいな者に口を聞けるもんなんだね。こいつが重要人物なんて、百も承知さ」

「だったらなんで……」

「なんで……か。簡単な事さ。お前の事が僕は大っ嫌いだからさ。だから、こうしてお前の任務を失敗させてやるのさ」

「どうしてそんな面識もない相手に嫌っているんだ」

「そんなの、自分の胸に手を当てて考えてみろ!」

 ニョルズを、現れた時のように再び白い光が視界を埋め、光が去った後にはニョルズもイエローもいなくなっていた。

「何があったの? ルカが凄い勢いで部屋を突き破って出て行ったけど」

 騒ぎを聞きつけて玄関から裸足のまま出てくる銀子。

「銀子。お前が起きたってことは捺香はどうしたんだ?」

 部屋を突然にドアを突き破って外へと出ていく事を、イエローはしでかしている。一緒にいた捺香も起きないはずがない。

「コールドスリープ」

「おまっ。それは大丈夫なのか!?」

 人間は単に冷やして凍らせたくらいでは死んでしまう。説明は省くけど、コールドスリープっていろいろと手間がかかる。

「冗談よ。捺香が言うには、あくじに胸を触られて以来胸の事でからかわれることが増えて、夜中にうなされては時々症状がでるらしいよ。何でもあの日の鬱憤を晴らすためにエネルギーを発散しているんだとか。だから、放って置けば帰って来るって捺香は言ってた。私は面白そうだから追いかけたけど」

 幾らなんでもあれはエネルギッシュすぎるだろ。

「……それよりもイエローが大変なんだよ」

 俺は暴走して外にまで飛び出したイエローが、ニョルズに奪われてしまったことを銀子に話す。

「そんな! こうなる可能性はあったのに……。あくじだけで安心していた私の責任だ」

 いいや、生身の女の子一人引き留める力が無かった俺の責任だ。俺が不甲斐ないだけなんだ。

 それにいくら寝ているといっても傍に銀子がいるし、あれだけ正義の味方を強調していたイエローが、まさか捺香を置いて外に飛び出すんなんて考えていなかった。完全に抜かっていた。

 おまけに事の始まりは、思い返すにどれも俺が発端になっている。

「俺が悪いんだ……。だから今回の責任は全部俺が被る」

 必死に言い訳を考えれば、銀子に罰が行かない考えぐらい思い浮かぶだろう。

 どう説明したらできるだけ銀子が責を追わないで済むかを考えていると、突然頭の中で星が閃いた。

「痛いぞ、なにすんだ!」

 痛むおでこを擦りつつ、同じく額を赤くした銀子に抗議する。

「あくじのバカ! そうじゃないでしょ?」

 護るといっても、攫われた時点でそれは達成できなかったことだ。

 ――だから投げ出すのか? 

 ――ちがう、そうじゃないだろ。

 すべき答えは知っているはずだ。だってイエローとは約束をしていたのだから。

 素直な心の声に耳を傾ければ、いつも通りの自分がそこにはいた。

 どうやら、責任問題が銀子にもかかってくることで弱気になっていたみたいだ。

「そうだな。あいつを護ることが俺の役目だしな」

「……私にも、それくらいのこと言ってよ」

 ボソリとした銀子の呟き声。でもちゃんと聞こえている。

「……? いまさら言わないとダメか?」

「バカ。でもそこがイイ」

 俺と銀子は戦闘服に身を包み、闇夜へ飛び出していった。

転を迎えた次回は二話目ラストに向けてのバトル展開に入ります。今更なんですけど、成分がシリアス気味になります。コメディーはどうした!? ちゃんとあります前半は……ですけど


次回の更新予定は朝の十時頃です。

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