―chapter1 嫌な予感しかない―2/3
「やめろっ、ボクを放せ!」
大総統に指示された部屋へ、嫌がるイエローを引っ張り連れてきた俺と銀子。
「それっ!」
「きゃ!」
イエローの拘束を解いて部屋の中で解放してやる。
「暫くお前は、上からの指示が来るまでそこで暮らす事になる。当面は……そうだな、大総統が好きにしてもいいとか言ってたっけ」
「ボクに何をしようと無駄だからな! ボクは絶対に、お前たちみたいな悪の組織には屈しない!」
「そんな減らず口が叩けるのも今のうちさ。分かっているのか? 今のお前はアーマーズのイエローじゃない、スーツの力を奪われてただの無力な人間になっていることを」
「うぐっ。それは……」
総統から貰ったアンクレットは確かな効力があったらしく、スーツの恩恵が置けられていない今のイエローは、俺たちからすれば赤子ほどの非力な弱者になっている。
「どうした? 怖いのか?」
「怖くなんかない!」
「せいぜい強がっとくんだな。気づいているか? お前体が少し震えて声はいつもより若干高くて上ずっているぜ。絶対にビビッているだろ」
「……」
俺の指摘にイエローは俯いて黙りこくる。恥ずかしがっているのだろうか。少し可哀そうな気がしてくるが、そこは普段俺たちがボロボロにされている分のお返しだと思えば、おあいこだよな。
そう思えば、相手が女といっても大丈夫な気がしてきた。いっちょ笑い飛ばしてみるか。
「フハハハハ!」
ヒー、ヒー。腹が痛ぇ。
「――あくじ。女の子相手にサイテー」
横から銀子からの冷たい視線が刺さった。
――まあ、十分に驚かしたして満足したし、いじるのはここらでいいか。そろそろイエローにも、これから事の説明をしないといけないし。
「――コホン。ごめんなさい。からかいが過ぎました」
一息を突き、俺はイエローに向かって頭を下げた。
「……突然態度を何かを変えてどうしたの? 気持ち悪いんだけど」
俺の態度の豹変を不信に思い、気味悪がるイエロー。
まあ、さっきまでの事を考えれば、気味悪がることは仕方のないことだろうな。
「今までのは戦闘員としての鬱憤晴らしだったからな、仮でも女の子を傷つけるのは堪えたんだよ」
「変な奴……」
イエローは俺の言い分に完全ではないものの、少しは納得してくれたようだ。
「本題に入ろう。当分暮らすことになるここでの生活についてだ。部屋は六畳一間でユニットバスがついている。鍵がかかっているが使うときに言ってくれれば、風呂トイレは自由に使ってもらっても構わない。もちろん部屋の中なら自由にいても構わない」
「ふうん。不自然なくらい、捕虜のボクに対して待遇がいいじゃないか。もっとも悪の組織の言うことなんて信用ならないけど」
「大総統の『よろしく頼む』には丁重に扱えって意味があるんだよ。あと今まで黙っていたが、『好きにしても構わない』というのは監禁ではなく軟禁しろという意味だ。制組織の中を歩き回りたいのなら制限はもちろんあるが、組織の誰かの付き添いがあればある程度回ることができるぞ」
「なんで敵相手にそんなに扱いが丁寧なのか知らないけど、そんなことされたところで、ボクは絶対にお前たちへの態度を軟化なんてしないからな」
「それは気にしないでくれ。ウチの組織のモットーは『人相手には優しく』だからな。スーツの恩恵を失ってただの人に成り下がったお前を、傷つけたり暴力をすることはアトスでは易々とはできなることではないから安心しな」
悪の組織がおかしなことを言っていると思うんじゃないだろうか。でも、これにはちゃんとした訳がある。
例えばだよ? 仮にウチの組織が世界征服を成し遂げたとする。だけど組織が悪さばかりで征服を遂げたとすれば、組織としての人望が無くて支配される側の人たちが絶対については来ない。
円滑な世界征服には、世間様に『あそこって、確かに悪いやつらばっかりかもしれないけど、やっていることの全部が全部悪いことじゃないよね』と必ずしも悪いところばかりではないことをアピールする必要がある。単純に武力任せの恐怖政治なんて手もあるが、それは決して賢い手段ではない。世界征服というのは、如何にして征服するのかその過程が大事なものだ。
「ふん。そんなこ良い子ちゃんアピールで、自分たちの組織は実はいい組織なんだって言いたいのか? 気にくわないな」
「別に悪い組織って認識で構わないよ。第一世界征服なんて野望は立派な侵略行為だし。組織の利益のために破壊工作とか、JUNASとの衝突によってぶつかった所の施設や土地に影響が出ているからね。そりゃあ、俺たちの組織は悪さ」
当たり前なことだが、ウチの組織のメンバー全員は崇高な理念だの、本当の正義などを掲げていたとしても、立派に世間の悪であることは認知している。
「軟禁状態とはいえ、かなりの不自由が出るだろうが、JUNASへの交渉内容が決定されるまでは我慢してくれ。これを渡しておく」
「このスイッチは何?」
「呼び鈴だ。なにか用事があったら、そのスイッチを押せ。すぐにとまではいかないが、なるべくいそいで来る」
本来は仲間内の戦闘員たちと作戦行動中の召集をかけるものだが、今の任務に就いていたら使うことはないし、いいだろう。
「飲み物とかお菓子が欲しいなら、そこの購買で買ってくるから言えよ。ただし一本分な。今は持ち合わせ少ないから。俺が買ってくるものが信用できないなら、今から一緒について来るのもいいぞ?」
「いらない!」
イエローの口からは、はっきりとした拒絶の言葉が出された。俺としては敵同士だけども、ここに居る間はそれなりの関係を気づきたいんだけどな。
「後、ここでの注意点は――」
俺はイエローに軟禁生活での子細を説明を始めた。
そういえば、タイトルの「組織の野望」の「野望」は、「コンボイの謎」の「謎」と同じくらいの物だと思ってください。




