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ノンヒーロー/アンヒロイン  作者: Iso Rock
第二話 衝撃!明かされる組織の野望
13/64

―chapter1 嫌な予感しかない―1/3

 俺の名前は山田アクジ。世界征服を目論む悪の組織『アトス』の戦闘員だ。

 久しぶりのやつは久しぶり!

 今日、俺は大総統直々に呼ばれて、大総統のいる組織深部の部屋通称「奥の間」に呼び出されていた。

「大総統閣下。山田アクただいまやってきました」

「おお、来たか」

 薄布一枚を隔てた場所にいる大総統の顔は見えなくて、相変わらず正体が分からない。もっともそれがなかったとしても、「大総統の顔を見たやつは、顔に関する記憶がスッパリ抜けている」「大総統の顔を見たけど何故か真っ暗で顔が見えなかった」「まるでギャルゲの主人公見たく顔なんてなかった」などなどの噂が真しやかにある。

「誰が、ギャルゲの主人公だって?」

 大総統。エスパー能力持ちのため、テレパシーの応用での読心スキルの持ち主である。

「閣下の前で失礼な奴だ」

 奥の間には大総統のほかにもう一人、俺が入るよりも先にいる人物がいた。

「これは、ミョルズ様。大総統にも失礼をいたしました」

『腐土』不死者ミュルトン。二つ名の示す通り通り、アンデッドでアトスの五人いる大幹部の一人だ。ちなみに大幹部の中では、ブロア様に次ぐ二番目の古参だ。その為か、発言力も大幹部若手のシニードリンよりもずっと持っていたりする。 

 俺が大総統とミョルズ様に頭を下げていると、俺の入ってきたドアとは別のドアの向こうから聞こえてくる大声がした。聞き覚えがあまりないはずのに、なぜか聞き覚えがよくある気がづる声だ。しかも、寒くもないのに震えがしてきだした。妙だな。


「山田アクジだって!? よこせ! 殴らせろ。今すぐそいつをボクに殴らせろ」


「げッ!!」

「おー、連れてきたか」

 声が聞こえたドアが開いて、入ってきたのは、ミョルズ様の部下と、両手首を拘束された状態で連れてこられたイエローだった。

 ナンデ、コンナトコロニイエローガイルンデスカ?

「仮にも乙女を見て、『げッ!!』なんて反応は無いんじゃないかな? 山田アクジ君?」

 いえいえ、大総統。あのイエローですよ? 血濡れのイエローですよ?

「なにも恐れる事はないさ、今のイエローは、私の念動力によって金縛り状態だからな。君には手も足も出させないさ」

 なるほど、どうりでミュルトン様の部下一人で拘束中とはいえ、あのイエローをここまで連れてくることができたわけか。

 ――それでも、やっぱり怖いって。

 シニードリンと俺の二人で戦った時に俺の事を恨んで、あれ以来戦闘員が全員区別つかないからって、鬱憤晴らしに無差別に襲って、長らく更新てされていなかった戦闘員撃破記録の歴代1位を塗り替えたあのイエローですよ? この間出撃した時なんか、アーマーズの全員を相手にした怪人の人よりも、イエロー単体に多数で挑んでいた戦闘員の方が重傷で返って来ていた。

 既に仲間内では、イエローは恐怖の代名詞となっている。

「イッパツナグラセロ! イッパツナグラセロ!」

 あの時に一発殴っていたじゃないですか。まだ殴り足りないんですか。勘弁してほしい。

「アハハ、面白い。イエローの金縛りを解くから、一発殴られてみるかねアクジ君? もしかしたら新しい性癖に目覚めることができるかもしれないよ」

 冗談じゃない。丁重にお断りさせていただきます。

「ハハハ。冗談はこれくらいにして本題に入ろうか。まずは、君の抱いているであろう疑問に答えていこうか。何でこんなところに、イエローが居るかについてだ。今、私たちが進めている計画をアーマーズが感づいてな、たまたま部下の任務に居合わせていたミュルトン君が、イエローを捕まえてくれたのだよ」

 それで今ここに、ミュルトン様が一緒にいるわけですね。

「これで君の疑問の一つは、納得してもらえたようだね。それではもう一つの疑問に当たろうか」

「何で、俺を呼び出したのかですか?」

「そうだ。君を呼び出したのは他でもない、彼女の管理を君に任せようかと思ってね。そういえば、君とイエローはただならない因縁があるみたいじゃないか。だったら、その二人を一緒にさせて見たら面白いんじゃないかと思ってね。フクク」

 あんた……、流石は悪の大総統閣下様だよ。なんて意地が悪いことをするんだろうね、この人は。イエローが俺を徹底して嫌っていることを知っていてわざと当てやがった。

 未だにイエローは、危険な目つきでこちらの様子を窺っている。キケンキケンとバイオハザード(生命の警告)を、俺の中の生存本能のアラートが訴えかけている。

「大総統! 俺はただの戦闘員ですよ。戦闘力なんてロクに無い俺なんかが監視役では、少々役不足なんじゃ……」

「なあに、その点に関しては問題ない。そんなこともあろうかと……」

 今度は、俺の後ろにあったドアが開く。

「大総統、用事ってなんですか」

 扉の開いたそこに現れたのは、俺の幼馴染でもあり、大幹部の一人シニードリンでもある白谷銀子だった。

「……心強い助っ人を呼んでおいた」

 お前かYO!

 そりゃあ、前回の戦いでアーマーズ全員を相手取ったんだろうから大丈夫だとは思うけどさ。

 どうしてだろう? とてつもなく悪い事がありそうな予感は。最近はろくな目にばっかり遭っていたせいか、そういうことに関しては、感が鋭くなっているんだ。

 シニードリンとイエロー。この組み合わせには嫌な予感しかしないと。

「おお、シニードリン来てくれたか。実はだな、そこの戦闘員に、イエローであるこの……女でいいのかな? の面倒を見てもらおうかと思ってね」

「なに女の部分に疑問符なんかつけてるんだおいそこの悪の大総統マジぶっ殺す」

「ふはは。捕えられているというのに、敵の本拠地に元気で結構なことじゃないか」

 止めてくださいよ大総統。どうせそのシワ寄せが来るのは、これからイエローと身近にいることになる俺なんですから。

「ボクはこの、握りしめた拳の行方をどうしたらいいのかな?」

 はら早速。こっちを向いて睨まないでくださいな。嫌だよ、俺痛いのは。決してその拳が俺に降りかかりませんように。ここ最近は毎朝、見ているニュース番組の占いコーナー全部に女難の相が出ていて不吉なんだよ。

「ともかくだ、シニードリン。このアクジをサポートする任務を引き受けることができるかね?」

「分かりました、大総統。イエローは私シニードリンと山田アクジが、責任を持って監視します」

 不思議だ。銀子のことだから、てっきり俺の周りに女が増えるとかで嫉妬の一つでも焼くのかと思っていた。

 前回の戦いを通して成長し俺への依存度はだいぶ薄まっているが、銀子の持つ俺への独占欲というのは相変わらずで、俺が女友達を作ろうとすればキツイ視線を送ってくる。

 まっ、何事も無いなら無い方がいいか。

「山田アクジ、シニードリン。例の部屋にイエローを連れていけ! そこで好きにして構わない」

 この言葉には、さっきまで強気だったイエローも血の気が引いたかのように顔を青ざめさせた。

 そうりゃそうだろう。悪の組織、捕縛、好きにしていいなんて言葉が出たら良くないシチュが思い浮かぶのは無理ないことだ。

「す、好きにって……いったいボクに何をするつもりなんだ」

「ククク、それは着いてからのお楽しみだ。なーに、心配するな。お前が思っているより、優しくしてやるからそんなに悪い事でもないさ。――お前が思っているよりもな」

 俺が営業スマイル(悪い顔)で、意地悪く言ってイエローの不安を煽り上げる。やられた俺からのささやかな復習だ。

「そうね、私もあなたをあの部屋に連れて行ったらたっぷりと楽しもうかしら。たーっぷりとね」

 シニードリンも俺に合わせて、イエローの不安を煽ってくれる。ノリがいいな。

 フヘヘ。お陰で思惑通りイエローの奴、脅えているぜ。ざまあみろ。あの時に喰らったアッパーカットの仕返しだ。

「イエローにこれをつけるといい、パワードスーツの出力を抑えることができる。 それでは二人とも、よろしく頼んだよ」

「「ヘイ、ボス」」

 ボスから銅色をしたアンクレットを手渡される。

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!」

 アンクレットを俺たちに装着され、無力化された正義のヒロインの悲鳴がアトスこだました。

今回は何と三分割。超大雑把に三千文字を目安に区切っています。

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