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00:52:49 襲撃者

主人公視点



 「いやぁ、誰かと出会うというだけで安心したのなんて初めてだよ。そういった意味では、これはいい経験なのかな?」

 「特によくわからない場所で一人というのは辛いですよね」

 「そうそう。人という字が支え合って出来ているって言葉を思い出して、改めて納得したもんだよ」


 今話している人は、俺たちがこの施設内を散策している最中に出会った人だった。

 緒葉南おばな忠邦ただくにさん。

 見た目通りの初老を迎えた会社員で、妻帯者。高校生の娘と中学二年の息子がいる。見た目通りの性格で、穏やかな性格をしているのがわかるし、長く生きているだけあって、大人らしい余裕もあり、また穏やかな性格からか、気軽話すことが出来る。


 「君たちは一緒にいたけれど、知り合いなのかい?」

 「いえ、俺たちも先ほど出会ったばかりなんです」

 「そうだったのか。それにして仲がいいから、てっきり恋人同士だと思ってしまった。はっはっは」

 「お、緒葉南さん」

 「忠邦でいいよ。緒葉南って苗字は変わっているから、名前で呼んでもらった方がしっくりとくる」

 「わかりました、忠邦さん」


 この人とは、五分ほど前に出会った。

 端末を三条さんと調べていたところ、やはり"Map"はこの建物の地図を表していることが分かった。

 そして地図の中心、そこが自分たちの現在位置ということもわかった。

 そこで三条さんと相談した結果、一階には一箇所のみ広い空間が存在し、そこに行くということとなった。その結果、忠邦さんと出会ったというわけだ。


 「とりあえず、啓一君の言っていることが本当だとしたら、僕たちはココに無作為で運ばれ、ゲームをさせられているということでいいのかい?」

 「はい。三条さんのルールには明確に『ゲーム』という単語が使用されていたので、そう考えるのが妥当かと」

 「しかし、その後ろに続く賞金。それが、本当にもらえる保証なんてあるのだろうか? 例えばその内容通りに生き残ったとして、そのゲームの主催者である人たちが僕たちにお金をくれるとは限らないだろう?」

 「そこは俺も疑いました。ただ、今現在を考えたところ、このゲームの主催者というのは、俺たちに気付かれることなく、何処かもわからないところに運び、さらには人数分だけこの端末を用意し、わざわざ四肢と首に外れない装置を付けた。それだけのことをしておいて、ドッキリで済むということは無いでしょう。それに、三条さんを俺が見つけたとき、彼女は落とし穴に落ちかけていましたし」

 「なに、それは本当かい!? そうか。確かにそうだ。そこまでの規模で最終的に嘘であるという可能性は低い。しかしそれでも、その主催者の人たちがお金を渡すというのはわからないということに変わりないだろう?」

 「はい。だから、今すべきなのはこのゲームを理解することです。ルールに関しては俺と三条さんは9個集まっているということと、俺たちを含めて13人の人がいるということぐらいです。残りのルールを確認しない限り……」

 「そうか。僕の知る限りでは、参加者が13人いるということぐらいと、この装置を解除するためにはチップというのが必要だというぐらいだね」

 「チップ?」

 「ああ。僕の端末のルールを見るかい?」

 「是非お願いします」


 忠邦さんはポケットから端末を取り出し、渡してくれる。

 そして俺が忠邦さんのルールを調べたところ、一つだけ把握していないルールがあった。


 ・11:『装置の解除には、解除条件の入力されているチップをインストールした後、条件を満たすことで解除できる』


 他は知っているルールだが、これは知らなかった。

 そういえば、『Ring』という項目があったけれど、触れていないな。

 一通り目を通した後、俺はそのルールを自分の端末にある『Note』に記入し、忠邦さんに返した。


 「ありがとうございました」

 「役に立てたようでよかったよ」

 「それと、忠邦さんが知らないルールを俺たちは知っていたので、忠邦さんの端末にある『Note』の項目に入力しておきました」

 「おお、それはそれは。こちらこそありがとう」

 「それにしても、僕は、まぁ慣れているというか、責めるわけではないんだけど、そこのお嬢さんの名前を知らなくてね……」


 情報の共有をしたところで、忠邦さんが苦笑い浮かべる。

 その原因にはすぐに気付いた。

 三条さんが、俺を盾にした状態で忠邦さんと話していないということ。


 「す、すいません……」

 「いやいや、一応長生きだからね、いろんな人がいるということもわかっているさ。無理を言って済まなかった」

 「い、いえ、こちらこそ……。三条、撫子と申します」

 「三条さんか。うん、ありがとう」

 「失礼な態度をとってしまい申し訳ございません……」

 「気にしていないさ」


 忠邦さんは朗らかな笑みを浮かべており、本当に気にしていないようだ。

 三条さんの方を見てみれば、うつむいてしまっており、表情がよく見えない。ただ、何事かをつぶやいているのは聞こえる。内容はわからないけれど。


 「ぶつぶつぶつぶつ(あうぅ、こ、恋人だなんて、そんな……。で、ですけれどわたくしここまでお話した男性の方なんてお父様以外はおりませんでしたし、それに私先ほどは萩原さんに助けていただいたのは事実であるわけでして、さらには私ったらあの時は萩原さんをお、押し倒してしまいました……そ、そういえば昔お父様が『パパ以外の男性とあまりくっつき過ぎてしまうと子供が出来てしまうぞぉ』と……そ、それはもしかして私は萩原さんのこ、子供を授かるということですか!? い、いえあの方は私の命の恩人です。いわば、あの方がいなければ私は既にここにはいないというわけです。ということは、私の命は萩原さんによって拾われたというわけです。そ、それはつまり、今の私は萩原さんの、しょ、所有物ということでして、そうであるならば、男性と女性の関係上男性は子孫を残すのですから、萩原さんの所有物である私は萩原さんの子供を授かるのはと、当然のぎぎぎ義務ということになるのですから、そうですそうなんですこれは当たり前の事なんですから大丈夫です。それでしたら、恋人という言葉もあながち間違っては……って、わ、私ったら何を考えているんでしょうか!? いえいえそもそも――)」


 うん、小さいというのもそうだけど凄い速い口調だからまったくわからない。

 これは触れない方がいいかな。耳まで真っ赤にしてるし、今刺激するととんでもないことが起こりそうな気がする。


 「た、忠邦さんはそういえば、娘さんと息子さんがいるんですよね?」

 「うん、そうだね」


 なので、三条さんが落ち着くまでの間、忠邦さんと他愛は無しでもするとしよう。


 「娘は高校二年生でね。まぁ親バカなの自覚しているつもりなんだけど、妻に似て綺麗なんだよ。ただまぁ、最近は気難しい年頃でね……周囲は彼氏を作り始めているから、時分も作るべきなのかと考えているようでね。僕としては、焦らずにしっかりとした男性と結ばれることを望んでいるんだが……。ああ、君のようにしっかりとした男性がやっぱり、父としては安心できるんだけどねぇ」

 「そんな、俺は将来性がないですよ。恥ずかしい話、義務教育終わると同時に社会人ですし、今だっていろいろなバイトをやって細々と一人暮らしているだけですから……」

 「そうなのかい? 全然そんなふうには視えないなぁ。それに、中学卒業から今までも一人で暮らしていけるというのは凄いことだよ」

 「いえいえ、そんな」

 「そうかい? 恥ずかしいなら、僕だって大学卒業するまでは親が入学金から食費まで何から何までやってくれていたんだ。おんぶにだっこさ。だからその分、働いて両親には恩を返しているつもりだし、妻や娘息子の為にも頑張ろうと思っているけどね」

 「凄いですね。息子さんは?」

 「ああ……なんというか、あの子もまた反抗期真っ盛りと云うやつでね、なんかよくわからないんだが、時折右目を抑えては『し、鎮まれオレの中の闇よ! くっ、まさかオレと同じ人間がこの近くに近づいているのか?』とか言っていて。心配なんだがなぁ」

 「あ、あはは。まぁ反抗期というのは時間が経てば治るでしょうし、忠邦さんは息子さんが行き過ぎないように見ていてあげればいいんじゃないですか?」

 「そうだね。親がとかく言っていては子供のためにもならないというのはわかるよ。……いやしかし、やっぱり啓一君はしっかりとした考えを持っているよ。それに、見知ったばかりの他人の話を親身になって聞いてくれるというのはうれしいものだ。どうだい啓一君、一度僕のむす――」



 ――バスンッ!


 「うわぁ!?」

 「きゃぁ!!」

 「はっはっはっはっは! 殺してやる殺してやる! 賞金はオレのもんだ。だれにも渡さねぇぞぉ! はっはー!」


 忠邦さんの言葉を打ち切ったのは、足元に当たり遠くへと弾き飛ばされた棒状の何かと、奇声のような笑いと、狂気に満ち、目を血走らせた男の言葉だった。



開示ルール

・1:『貴方の両手足、首には特殊な装置が仕掛けられている。これに負荷を与え、尚忠告を無視した場合、首に装着されている装置が爆発する』


・2:『制限時間は97時間。残り時間は端末の最初の画面に表示されている』


・3:『ルールは全部で12存在する。上記に加えて、端末ごとにランダムで3つ加えられている』


・4:『この装置にはそれぞれ制限時間が設けられており、右足:49:00:00、左手:37:00:00、右手:25:00:00、左足:13:00:00、首:01:00:00。までに装置を解除できなければ、両手足には神経性の毒による四肢の自由の拘束。首の装置は爆発する』


・5:『開始から2時間の戦闘を禁じる。もし正当防衛以外の戦闘を行った場合、首の装置を爆発させる』


・7:『このゲームで97時間生存した者は勝者となり、50億円を山分けする』


・8:『ジョーカーが存在する。これは1~13の数字全てに偽装が可能。偽装しているときはその番号のルールを確認することが出来る。ジョーカーは一度番号を変えると六時間の間番号を変更できない。なお、この端末によっての装置の解除は最初の持ち主の身に適応される』


・9:『端末にはそれぞれ、A、2、3、4、5、6、7、8、9、10、J、Q、K、の数字が画面に記載されている』


・11:『装置の解除には、解除条件の入力されているチップをインストールした後、条件を満たすことで解除できる』


・12:『この空間内において、己の良心が許す限りは何を行おうと構わない』


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