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00:38:21 嫌われ者

三人称視点


 一人歩く男がいる。

 表情は忌々しげに、不満が多くあると言った顔つき。

 男は嫌われ者だった。

 成人を過ぎて二十と齢。そこそこいい年になった彼は、一度でも女性が隣を歩いたということは無かった。少々老け顔だからと言って、働いていた女性たちは皆嫌厭し、男が話しかけると時に嫌そうな顔をして、時に露骨に避けていた。

 そのせいで、周りの同僚である男たちも彼に見向きなどしなかった。

 日々の仕事に加え、会社内でのストレス。それは男に酒を余すだけ与え、金で得た女との一時の快楽を得させ、信じられるものがお金となっていた。

 そんな時、新聞の一つもとっていない、チラシ程度しか入っていないはずのポストに一通の手紙が入っていたことから始まる。

 内容は一つ。


 ――『金を得るチャンスをやろう』


 たった一言の、ワープロで打ちだされた便箋。

 無論、男はただの悪戯だと言って、無視をした。

 そして次の日、仕事場に男が来ることは無かった。


 「目を覚ましたらこれだ! なんなんだココは!?」


 そして、今に至る。

 いつの間にか入っていた液晶接触型携帯端末のブザーによって起こされ、理由わけもわからず、周りに人はおらず、周囲はコンクリートの壁と床と天井。

 そんな床の上で寝ていたせいで、所々身体が痛い。

 最初は誘拐だと思った。だが思い至った瞬間、既に親、親戚、近しい身分の者などおらず、誘拐されたことで身代金を払ってくれるような者のいない自分を攫ったところで一つのメリットなどない。むしろ無駄骨と云うやつで労力を得たというデメリットしかない。

 そして次に思い至ったのは、自分が目を覚ます前の出来事。

 よく覚えていた。

 わざわざ蝋で封をした、丁寧な封書。それでありながら、中身の文章はたった一行のふざけた物。その一行にこう書いてあったではないか。『金を得るチャンスをやろう』と。

 半信半疑であった。あの時の悪戯だと信じていた時よりも、悪戯ではないのではないかと思い始めている。

 それは、あの情景思い出し、この状況を推測し、現状信じられるものがそれ以外に無くなってきたからこそ思えることであった。

 そしてその想像を、一つの情報を得ることで確信へと変える。

 ポケットの中の端末が振動し、男は訝しみながらも取り出す。

 電源は最初から入っており、そこには5つの英語で書かれた項目があった。そのうちの、『Rule』。その項目が点滅し、吹き出しからは『Touch!』と表示されている。

 特に考えることは無く、吹き出しの文字に従って男は触れると、液晶の画面が変わった。

 全員の端末に共通して入っている3つのルール。そして、それぞれの端末にランダムで入れられているさらに3つのルール。その3つのルールに目を通した瞬間、男は立ち上がった。

 驚愕の顔でありながら、瞳の奥に笑みを浮かべて。


 「やってやる、そうだ、生き残ればいいんだ。そう、おれだけが生き残ればいいんだ。他の者など、関係ない!」


 自分に言い聞かせ、強く端末を握りしめながら男は歩き出す。

 もとより人を信じる方が馬鹿らしい。信じられるのは金だけだ。扱われる道具だけだ。そう、他人のことなど、どうでもいい。

 まずはアレを探すべきだろう。でなければ、いくら男であっても汚れてしまう。

 そう思い至り、血走った目で通路を曲がった。

 彼が見た3つのルール。


 ・7:『このゲームで97時間生存した者は勝者となり、50億円を山分けする』


 ・11:『装置の解除には、解除条件の入力されているチップをインストールした後、条件を満たすことで解除できる』


 ・12:『この空間内において、己の良心が許す限りは何を行おうと構わない』


 それは、あたかも狙ったかのように、男にとっては都合のいいものばかり。

 男にとってはそのルールが己の全てであり、それ以外のことなど、全て何処かへいった。

 金、金、金。

 ただ、そこに書かれていた賞金だけが、男を動かす原料となって。

 嘘か真なのかを考えず、盲目的に。

 だからこそ、未だに薄く光る端末から、怪しい笑みを浮かべたモノが映っていたことなど、気づくはずもの無かった。



開示ルール

・1:『貴方の両手足、首には特殊な装置が仕掛けられている。これに負荷を与え、尚忠告を無視した場合、首に装着されている装置が爆発する』


・2:『制限時間は97時間。残り時間は端末の最初の画面に表示されている』


・3:『ルールは全部で12存在する。上記に加えて、端末ごとにランダムで3つ加えられている』


・4:『この装置にはそれぞれ制限時間が設けられており、右足:49:00:00、左手:37:00:00、右手:25:00:00、左足:13:00:00、首:01:00:00。までに装置を解除できなければ、両手足には神経性の毒による四肢の自由の拘束。首の装置は爆発する』


・5:『開始から2時間の戦闘を禁じる。もし正当防衛以外の戦闘を行った場合、首の装置を爆発させる』


・7:『このゲームで97時間生存した者は勝者となり、50億円を山分けする』


・8:『ジョーカーが存在する。これは1~13の数字全てに偽装が可能。偽装しているときはその番号のルールを確認することが出来る。ジョーカーは一度番号を変えると六時間の間番号を変更できない。なお、この端末によっての装置の解除は最初の持ち主の身に適応される』


・9:『端末にはそれぞれ、A、2、3、4、5、6、7、8、9、10、J、Q、K、の数字が画面に記載されている』


・11:『装置の解除には、解除条件の入力されているチップをインストールした後、条件を満たすことで解除できる』


・12:『この空間内において、己の良心が許す限りは何を行おうと構わない』



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