59:23:50 裏切り
ロリ視点
「そっちはど~?」
「あー、うん、それなりだね~」
――ガサゴソ ガサゴソ
部屋にある木箱を開き、中をのぞき、ため息を吐く。
どれもこれも空っぽであり、埃被って明らかに外れとしか思えないのまである。
疲れる。
単純作業というのは、肉体的にというよりも、精神的に疲れる。
開けては落胆開けては落胆。期待を持つ方が、その分外れの時に落差が酷い。
よって、基本的に期待はしていない。それでも、人間的な本能なのか、何か未知のものを確認するときは、どうしても期待というものを持ってしまう。それゆえに、落ち込んでしまうわけだ。
「無さすぎでじゃない、いくらなんでも」
「そおっすねー」
グチグチと文句仕方らせず、それに対しては気の抜けた返事。
暖簾に腕押しというものか。なんというか、軽すぎる。本当にそこらへんの『若者』だ。
「こっちは終わりかな。どう、なんか見つかった?」
「そうっすねー、こんなもの、見つけました♪」
――ガチャリ
「なっ!?」
「あ、これニセモンじゃないっすよ? きちんとした、拳銃」
「それで、どうするつもり? 殺すの?」
「いやいやそんな。でもさー、やっぱこういうの持つとさ、人間一度は無理矢理ってやつがやってみたいんだよね~。ほら、リアルでやるとさ、警察沙汰じゃん?」
「で、こんな治外法権感たっぷりなばしょなら出来るって?」
「そいうこと! しかもさ、皆期待してると思うんだよね、これって見られてるわけじゃん? ってことはさ、見てる側としちゃあやっぱり濡れ場は多い方がいいと思うんだよね。なんつの、こういった場所独特のさ」
つまり、楽重は襲いたいのだ。犯したいのだ。
反吐は出ない。普通、強い力を持てば人間は調子づく。この子と同じように。
基本的に力を持っている人間が隠す必要などはない。持てるものを最大限に誇示し、ひけらかす。
有り体に言うなら、そういった輩は『底が浅い』どこまで行っても。どれだけ優れていても。常に自分のギリギリを出し続けているのだから、少しでも負荷が掛かればすぐにダメになる。
まぁ、そんなどうでもいいことはいいか。
今は、銃を突きつけられている以上どうしようもない。
「襲う?」
「もちろん」
銃を突き付けられたままで、床へと押し付けられ、覆いかぶされる。
顔は近くに存在して、瞳の模様までよく見える。
「いやさ、やっぱなりアレでも女を抱くっていうのは気持ちいんだよね。でもさ、あんときオレとしちゃあやっぱ悔しいわけだよ」
ま、男のプライドとして、支配欲があるのは当然よね。
「だからさ、これはある意味リベンジなんだよ。でも、そうそう普通にやってたらやっぱアンタの方がうえになっちまう。だから、そこはアンタの表情を恐怖に染めたい。怖がる表情が見たい」
「泣けって?」
「うん、ほら」
――ゴリッ
「っ」
額に銃口を押し付けられる。
この男の指がどれだけ軽いかわからないけど、反抗的に行動するのは得策じゃない。
下手な動きをしたら誤って撃たれる可能性もある。
「なっとくできた? というわけで、こっからオレ主導でいこうと思うから」
「そう、ね。そうできれば、いいわね」
「ん? 状況わかってる?」
「ええ、わかってるわ」
「ふーん、その態度でねぇ……」
やっぱ気に食わないか。いいわ。それでいい。ええ。十分にこちらに集中しなさい。
そうすれば――
「その通りよ。だって貴方、警戒心なさすぎだもの」
簡単に思うとおりになってくれるんだもの。
――シッ パタタッ
「え?」
生温かい液体が、顔に降りかかる。あまりいいものじゃない。
それに、驚いた顔して。何が起こったのか把握できてないの?
貴方の肘、真っ赤っかよ。
「うわ、うわぁああああ!!!」
――ガチャン!
「いてぇ!? いてぇ! なんで、なんでなんでなんでぇ!?」
「はぁ……」
痛くてそれどころじゃないのね。
ま、この銃は貰いましょう。
あらこれ、セーフティ外れてないじゃない。まったく、素人もいいところでしょ。
――パン! パン! パン! パン!
「うがぁあああああ!!! あああああああああああ!!! おえぇ、がはぁごほぉ!」
「汚いわね……」
手足に一発。
動けないように撃つ。
最初の痛みで悶える間に、出来る限りやっておいた方がこの子も失神しなくて済むでしょ。まぁ、知らないけど。
「痛い、痛い……」
「さっきまでの威勢はどうしたのよ? ほら、ねぇ?」
「た、助けてくれ……! お願いだ、助けてくれ!」
命乞いしても、どうせ出血多量で死ぬんだけど。
いいか、別段教える必要もないし。
「うーん、どーしようかしら?」
それよりも、こうやって粋がる奴が泣き叫ぶっていうのもいいわぁ。ぞくぞくする。
ふふ、それに死にかけだからかしら。本能に忠実でいい子ね。
「安心して」
「本当か?」
「ええ」
最後は気持ちよくして、楽にしてあげる。
「体を委ねて。そう、ええ。大人しくしててね。うん、いいのよ」
最後まで、主導権は私が握っていたいのよ。
だからそのお詫びとして、抱いてあげる。
「お休みなさい、楽重くん」
血だらけの四肢に構わず彼に跨る。
そして最後のひと時を終えて、私は彼の首を、ナイフで切り裂き、絶命させた。




