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00:10:33 ルール

主人公視点



 「三条さんは、制服を着てるってことは高校生?」

 「はい、そうです。萩原さんは……大学生の方ですか?」


 先ほど、落ちかけていた三条さんを助けてから、少しして。

 俺たちは歩いていた。

 目的地がある、というわけではないが、歩いていた方が誰かしらと遭遇するという可能性を考慮して歩いていた。もしかしたら、どこかに出口があるのかもしれないし、今の俺や三条さんのように連れて来られた人が他にもいるかもしれない。

 ただその分リスクも確かに存在し、攫った犯人に出くわす可能性もあれば、彼女が嵌っていた落とし穴や、他にもなにか罠があるかもしれない。


 「いや、俺は義務教育卒業と同時に社会に出た十九歳だよ。孤児院でね、あまり迷惑かけたくないから色々なバイトを掛け持ちしながらボロいアパートで独り暮らしさ」

 「あ、その、それは……申し訳ございません」

 「謝る必要は無いよ。そこまで苦じゃないし。それに、日頃力仕事系のバイトをしていたから、三条さんの事を助けられたんだしね。バイトをしていてよかったと思うよ」

 「本当に、あの時はありがとうございました!」


 三条さんは、勢いよく頭を九十度に振り下ろす。一拍遅れて、長く黒い髪が揺れる。

 参ったな。あまりお礼を言われることには慣れてない。こうも礼儀正しい子とういうのも今時珍しい。下の名前が撫子といったっけ。確かに、大和撫子というの言葉が似合いそうな子だ。

 おっと、それよりもこの空気をどうにかしよう。いつまでも頭を下げられたらこっちが困ってしまう。


 「そ、それよりもさ、三条さんはここに来た時にこういうのも持ってなかった?」

 「え?」


 ポケットをまさぐって、目当ての物を取り出して、三条さんに見えるようにする。

 頭を下げていた彼女はキョトンとした表情で面を上げて、俺の手に握っているもの視界に入れた。


 「あ、それならわたくし持っております。いつのまにやらポーチに紛れておりまして、誰かの物が間違って入ってしまったのではないかと心配していたんです」


 数秒の間をソレを見つめると、思い至ったように腰に提げているポーチに手を入れ、取り出した。

 それは、俺の手に持っている物と同じもの。

 電源を入れてないために真っ暗なままだが、同じ液晶接触型の携帯端末で間違いない。というより同じ型をしている。


 「それ、三条さんのものだからでいいはず。電源を入れられる?」

 「は、はい。わかりました」


 最近普及し始め、ほとんどの人はこの携帯を使っている。彼女もそのほとんどの人の範疇に漏れて無いようで、慣れた手つきで電源を入れると、再度俺に見えるように携帯を出した。

 画面には、俺の物と同じ事柄が書かれている。上から同じように英語で項目が書かれていた。


 「それじゃさ、そのルールの項目をタッチしてみて」

 「はい。……出ました」

 「落ち着いて欲しいんだけど、そのルールを黙読して欲しい」

 「わかりました。………………えっ!?」


 彼女の表情に、驚愕の色が映し出される。

 信じられないと、こんなことはありえないと。顔を見ただけでなんとなくわかる。多分、先ほどの俺も彼女と同じような表情をしていたはずだ。


 「ゲー……ム」

 「ゲーム?」

 「はい、これはゲームなんだそうです」

 「どういうこと? 俺のにはそんなことは書いてなかったけど」


 俺のルール部分には、一文字もゲームなんて単語は入っていなかった。それなのに、彼女のルールにはゲームという単語が入っていた。まさか……


 「ねぇ、三条さん。そのゲームって単語出てるところにさ、数字とか書かれてるはずなんだけど、何番って書かれてる?」

 「数字、ですか? 7って書いてあります」


 7なんて数字、俺のルール項目にはない。あの時も疑問に思ったけれど、抜けていた番号があった。そして、三条さんのルールの項目には7がある。つまり、それぞれの端末によってルールが散りばめられているのか。


 「聞きたいんだけど、三条さんのルールのところには何の数字がある?」

 「1番と2番と3番。あと、5番と7番と、11番があります」

 「良ければ、そのルールを教えてもらってもいいか? 俺の方にしかないルールもあるから、お互いに見せ合って」

 「は、はい。わかりました」


 三条さんに俺の端末を渡し、彼女からは彼女の端末を受け取り、ルールに目を通す。

 1~3までは共通ではあるが、次のルールは初めて見る。


 ・5:『開始から2時間の戦闘を禁じる。もし正当防衛以外の戦闘を行った場合、首の装置を爆発させる』


 ・7:『このゲームで97時間生存した者は勝者となり、50億円を山分けする』


 ・11:『装置の解除には、解除条件の入力されているチップをインストールした後、条件を満たすことで解除できる』


 ……ゲーム、か。

 それなら、なんとなくだが納得がいった。

 いま手にあるこの端末。そしてこの閉鎖的空間。俺と同じで攫われたという人。

 なによりも、つい先ほど彼女は確かにシャレにならない範疇で危機に陥っていた。

 ここまでの大がかりな事をして、ドッキリで終わるわけがない。

 このゲームを行っている奴らはどうやって監視してるのかはわからないが、出来るからこそゲームなどと銘打ったことを表記しているのだろう。そして、この反応を見て楽しんでいる。


 「ありがとう、三条さん。そうだ、メモ機能があるからそこにお互い足りてないルールを加えておこう」

 「そうですね」


 お互いに端末を返し、片方が自分の端末に載っていないルールをメモに記入する。

 俺はこの端末での文字打ちは得意じゃないから、悪戦苦闘した。

 これで、俺たちの知っているルールは9こ。残りは3つだが、全てのルールがわかるまでは油断は禁物だ。

 なにせこれは、俺たちの反応を笑って観ている奴らの手の平で行われている、ゲームなのだから。



開示ルール

・1:『貴方の両手足、首には特殊な装置が仕掛けられている。これに負荷を与え、尚忠告を無視した場合、首に装着されている装置が爆発する』


・2:『制限時間は97時間。残り時間は端末の最初の画面に表示されている』


・3:『ルールは全部で12存在する。上記に加えて、端末ごとにランダムで3つ加えられている』


・4:『この装置にはそれぞれ制限時間が設けられており、右足:49:00:00、左手:37:00:00、右手:25:00:00、左足:13:00:00、首:01:00:00。までに装置を解除できなければ、両手足には神経性の毒による四肢の自由の拘束。首の装置は爆発する』


・5:『開始から2時間の戦闘を禁じる。もし正当防衛以外の戦闘を行った場合、首の装置を爆発させる』


・7:『このゲームで97時間生存した者は勝者となり、50億円を山分けする』


・8:『ジョーカーが存在する。これは1~13の数字全てに偽装が可能。偽装しているときはその番号のルールを確認することが出来る。ジョーカーは一度番号を変えると六時間の間番号を変更できない。なお、この端末によっての装置の解除は最初の持ち主の身に適応される』


・9:『端末にはそれぞれ、A、2、3、4、5、6、7、8、9、10、J、Q、K、の数字が画面に記載されている』


・11:『装置の解除には、解除条件の入力されているチップをインストールした後、条件を満たすことで解除できる』



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