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24:40:24 離散

女学生視点


 「ま、正直に言えばまだ彼がジョーカーであると断言できるわけでもないわ。ただ、次に彼と出会った時、決して油断しては駄目よ」


 空気は非常に重くなっていた。

 わたしももちろんですが、特に忠邦さんと撫子さんは、とても落ち込んでいるように見えます。


 「あ、あの、そしたら皆さんの解除条件を確認していきましょう!」

 「……ふぅ。そうね、あまり不安なことを考えないで、目の前の事に集中した方がいいわね」

 「それじゃあ、言い出しっぺの私からで! えっと……」


 ――『Pillory』:ゲーム終了一時間前まで同階層に24時間滞在しない。


 「どうやら、わたしの首輪の解除条件は同じ階に一日いちゃいけないみたいです」

 「二十四時間以内に別階に行かなきゃいけないということね?」

 「はい、そうみたいです」

 「これなら、時間を気にして動けば大丈夫そうだね」

 「はい。それじゃあ、次にいきますよー」


 ――『R Hand』:三十分間右手を使用しない。※例:持つ、支える、殴る、叩くなど。


 「えっと、右手を三十分間動かしちゃいけないそうです」

 「自分の意志で動かすのいけないのかい?」

 「えっと、例には持ったり触ったりしちゃいけないなどが書いてあるので、受動的にもダメなのかもしれません」

 「なずな、右手は常に力を抜いておきなさい」

 「わかりました。……それじゃあ次の人は、撫子さんお願いできますか?」

 「はい」


 撫子さんは律儀に立ち上がると、自分の端末に指を走らせて、確認していきます。


 「っ……えっと、わたくしのは『ジョーカーの端末の破壊』って……書かれてます」


 ジョーカーの端末の破壊って、それは萩原さんが持ってる端末を壊すってこと!?


 「いや、そしたらジョーカーを持っている人がクリアできなくなるじゃないか!」

 「そうでもありません」


 目を見開いて忠邦さんが言うと、碧さんは冷静な表情で答えます。


 「ジョーカーの端末の破壊であれば、その持ち主の装置を最悪首輪だけでも外せば、壊しても大丈夫です」

 「あ……確かに言われてみれば。そうしたらジョーカーの人は死にませんね」

 「ええ。本当によかったわ。最悪、殺害なんて書かれてたらどうしようもない」

 「っ!?」

 「どうしたんですか、撫子さん?」


 なんかいま、表情が強張ったような。


 「いえ、何でもないです。ただあまり殺すとか、そういうのは……」

 「……そうね。ごめんなさい」

 「だがそうなると、ジョーカー――可能性としては、啓一君を探す必要がある、というわけか」

 「いや、でもそれって可能性ですよね?」

 「そうだね。だけど、僕は啓一君とはもう一度合流して、どうして嘘を吐いたのか聞きたいんだ。そういった意味では、彼がジョーカーを持っているかもしれないからとかそういったことは、どうでもいいんだ」

 「正直に言ってそれはお奨めできません」

 「「「え?」」」


 碧さんと修治さんを除いた、わたしたちの声から同じ言葉が飛び出す。

 どういうことだろうか?

 それは、撫子さんと忠邦さんも同様の様だ。


 「はっきり言えば、危険です」

 「どういうことだい?」

 「そうですね、――」


 ――ウィーーン


 「なんだ、この音は?」


 それは、突然聴こえた。


 「アレを見ろ!」

 「なに、あれ!?」


 修治さんが叫んで指さす先に、それはあった。

 それは、ゲームなんかで出てくる銃に視えた。

 確かゲームだと、人を感知して勝手に撃つかそういうもの。

 それに似たのが、壁から二つせりでてくる。


 「っ! まずい、皆逃げて!」

 「えっ?」


 いきなり何を言われたのかわからなかった。

 銃口が動き、わたしたちのいる方を捉える。

 碧さんが言ったように、逃げなければいけない気がした。


 ――ガチャ

 ――バララララララララ!!!


 「きゃぁあああああああああああ!!」

 「い、いきなりなんなんだ!?」

 「落ち着いて、背を低くして、近くの扉から逃げるの! 走って! なずな、あなたは後ろの扉から逃げるの、あたしも近くの扉から脱出したらすぐに合流するからっ!」


 何が起きているのかさっぱりわからない。

 でも、ここから逃げ出せないとわたしたちは死んじゃう!

 逃げないと!


 「きゃっ!」

 「なずな!?」


 腰が抜けて、上手く動けない。

 どうしよう、このままじゃ、死んじゃ……そんな、嫌!


 「くっ!」


 ――バララララララララ!!


 「え?」

 「ぎ、ぐっ、くふっ、にげ……ろ」

 「きゃぁ!?」


 腰が抜けたと思って、撃たれると思って、もうだめだと思って、そしたら目の前に影が射して、かと思えばいきなり押されて、最後に視界に映っていたのは、わたしを助けてくれたんだと思う、真っ赤に染まって瞳の色が濁っていく、修治さんの姿だった。



・Pillory――首枷。ここでは首の装置の名称となっている。

・壁から現れた銃――無人で弾丸を放ち、センサーを用いることで人を感知し目標を殺す。

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